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16-7 過去の記憶

明けましておめでとうございます。


年末年始はリアルの方で充実した日々を過ごさせて頂きました。なので今回は2話の投稿となります。

 

 そこから俺らは車で移動し、何故か人気のない山奥に進んでいく。運転はもちろんライルだが。


 やたらと荒い運転で誰もいない道を自由気ままに進んでいく。普通車でドリフトとか初めて体験した……


 そしてライル製ジェットコースターが止まったのは道がそこで途切れていたからだ。車を降りると道なき道を踏み分けていくライル。デカイ図体してるのに案外早い。


 訓練で慣れた俺は付いていくとその先には遺跡のような古びた建物があった。人気はなくシダやツタが好き放題に生い茂り、誰かが管理している様子は全くない。


 未発見の遺跡なのだろうか?


 だがただの山奥にあるだけで今まで見つからないというのも可笑しい。そんな疑問を他所にライルはどんどん先に進んでいく。


 そして立ち止まったライルの目の前には大きな扉が立ち塞がっていた。その大きさは縦に5m、横に3mくらいだろうか。2階相当の扉の高さに圧巻させられる。

 扉を触ってみると金属で出来ていてひんやりと冷たく、何かの絵が彫られてるらしく凹凸を感じる。


 じっくり扉を見ているとふと違和感を感じ、よく見ると錆びが一切なかった。最近出来た物だろうか。だが周りの石組みで出来た柱は今では逆に難しい技術になり、最近作られた物ではないと証明している。


 それにしても扉は錆びが一切無い。もちろん錆び防止の加工は出来るが、かなり時間が経てば少しは錆びる部分も必ず出て来るはずだ。この扉だけが時間の流れを受けてない気がして、背筋を寒気が走る。


 そんな俺を優しく見守っていたライルがもう良いか? と聞いてきたので頷く。


 ライルが扉に触れると取っ手がないのに勝手に扉がこちらに開き出す。


 昼間なのにここは木漏れ日しかなく、扉の先は完全に闇であった。奥行きも床があるのかすら分からない。


「あの、この中を進むのですか?」


 と不安げに聞くとライルは笑って頷く。


「そうだ。それもここからは一人だ。俺は入ることは出来ない」


 入る事が出来ない? 何故だ?


 扉を開けることが出来たライルならばここから入ることも出来そうだが、頑なに同行することを拒んだ。


 仕方なく俺一人で行くことに。端末の画面の光を灯り代わりにすると床があるのが見える。


 恐る恐る足を踏み出すとしっかりとした固い石の感触が返ってくる。どうやら歩いても崩れるとかは無さそうだ。


 俺が外から完全に中に入ると扉は閉まりだす。思わずライルを見るが強く頷くので俺は信じて背中を向けた。


 扉が閉まると何故か端末が消え、完全に真っ暗になる。何度も電源ボタンを入れるが全く入る気配がない。何も音もせず、寸先の見えない暗闇に取り残された恐怖は俺の鼓動をものすごく早める。


 落ち着け、落ち着け……と思うが頭の片隅では怖い怖いと言っているもう1人の自分が居る。


 心の内で終わりの見えない激しい攻防が続く中、急に灯りが付いていく。それは電気ではなく壁につけられたロウソクの火の灯りだった。


 火が勝手に付くという摩訶不思議な仕掛けに驚いているといきなり低い声が響いて俺の心臓が飛び上がる。


「……愚かな人間よ。何しに来た」


 それは奥の開けた場所の中央にある祭壇のような場所から聞こえていた。独りだと思っていた所に聞こえた声は誰だろうと少し安心した。


 そして祭壇の前に進むと返事をする。


「……選ばれし者の力が手に入ると聞いた。俺に与えてくれ」


 すると複数の笑い声が狭い室内に響く。


「ワッハッハッハッ。それを言ったのはあのネジが外れた男だな?」


 ネジが外れた男が誰か分からないが、この事を教えてくれたのはライルだ。確かに不思議な人ではあるが。


 答えにくい質問に戸惑っていると次は女性らしき声が代わりに答える。


「……その顔だとやっぱりライルね。まあでも久しぶりの推薦訪問者ですし受け入れましょう」


 推薦? 推薦じゃないとどうなるのだろうか?


 そんな疑問を俺の表情から読み取ったのか今度は老人のようなしゃがれた声が答えてくれる。


「ふぉふぉふぉ、まずここを利用したことのある関係者じゃ無ければ門は開けれないのだ。無理矢理こじ開けてもお主のすぐ後ろにある奈落の底。まあ無理じゃ」


 と笑いながら言っているが一方、俺は一歩間違えれば死ぬかもしれなかった事実に背筋が凍る。


 そんな俺に更に追い打ちをかけるような内容を告げる。


「そしてお主も何かしら試練を受けて貰わなければならん。ここを知ったからには死ぬか、力を手に入れて出るかの2択じゃ」


 と笑いながら告げてくる。それは俺の命がどうでも良いという価値観を持った者しか笑うことは出来ない。

 嫌悪感を感じるがまた自分も同じだったと思い出し、嫌気が差す。


「さぁどうする? 今死ぬか、試練を受けるか。どちらじゃ?」


 どちらの選択肢にも強い意図は感じられない。やはり心底どうでも良いのだろう。

 だが俺の気持ちは固まっていた。


「試練を受ける。さっさと案内しろ」


 コイツらが何者かは知らない。だが尊敬に値する奴らではないと感じ、そして苛立ちが思わず言葉に出てしまったがコイツらが特に気にすることもないようで異変はない。


「受けるのじゃな。ならば目の前の石を見ろ」


 目の前に置いてある胸ぐらいの高さの綺麗に切り出された長方形の石が輝きだし、上の面に文字や図が浮かび上がる。


「それは簡単な模式図じゃ。選ばれし者の力は7種類。7つの属性に分かれておる」


 中心の円から7つの方向へ線が延びてその先に属性のエフェクトが宙に現れる。

 まるでここ最近出来た機器のようだ。だがどう見てもここは最近出来たようには感じない。目の前で起きている事象、これが魔法なのか。


 内心の驚きを隠しながら続く話に耳を傾ける。


「お主はこれのどれか、またライルのように神器を手に入れるかじゃな」


 神器は分からないが神の武器というのなら大層な力になるだろう。


「どうでもいい。さっさとよこせ」


 説明する流れに嫌気が刺してさっさと話を進める。


「……年長者の話は聞く物だぞ小僧。まあ良いわい。これから死ぬのだからな」


 すると光っていた石が突如輝きを無くし、その後ろに扉が現れる。その扉は壁に付いて居らず、後ろには何も無いのが見て取れる。正に扉だけだ。


 古びた木製の扉のドアノブを手に取ってこちらに引くと、中は一面の花畑だった。土や草木の匂いが温かい風に乗って俺の鼻腔をくすぐり、これは本物なのかと錯覚させる。


 扉の向こう側に世界が広がっているなんて想像出来るだろうか。これは作り出された物だと思いたいが何度見ても本物にしか見えない。


 理解が追いつかないーーそれが怖いという感情に繋がるが理性を持って無理矢理踏み出す。


 すると柔らかな感触を足の裏で感じる。さっきのような固い石の感触ではなく、確かに土の感触だ。

 もはやこれらは映像ではなく、ここにあるものだと確信する。これを現実と受け入れて進むしかない。


 扉から離れると扉は消え去り、退路は断たれたようだ。でモンスターでも襲ってくるかと思ったがそんなことはなく、穏やかな花畑だけが残っていた。


 ふと彼方を見るが、見えるのは何処までも広がる花畑。特に進む目印のような建物や遺跡もない。

 なので気のおもむくままに歩き出す。


 人を殺したり、武器を整備したりと血の気の多い日々を過ごしてきた俺が久しぶりに見た穏やかな世界はとても眩しかった。暖かな日の光が鬱陶しく感じる。


 そのまま歩いて行くと何にも無いところでいきなり景色が変わり、アスファルトの地面に変わる。

 白線が引かれてるからここは道路で、後ろ見ても歩いてきたはずの花畑は何処にも無かった。


 状況が読み込めずに居ると後ろからエンジン音が聞こえる。どうやら俺は車道のど真ん中に立っていたので横に逸れると、暫くして車が通り過ぎていく。


 その車を何気なく見詰めてしまうーー何処かで見た事がある車だ。


 何処で見たのか、分からない。だがどうしても追い掛けたくなった。車の速度にはどうやっても間に合わない。でも走り出さずにいられなかった。


 ちょっと走ると遠くでさっきの車が止まっていた。何故止まっているのか、という疑問は直ぐに解消された。


 その車の先には何台もの車が道を塞ぐように止まっており、何人も出て来て銃をその車に向けていた。


 その車には大人らしき二人と後部座席に子供が一人。慌てている様子から一般人だ。


 相手が一般人ーーそれは穢れた俺でも見て見ぬ振りは出来なかった。


 全力で駆け出すが、その前に銃声が鳴り響く。俺に対して撃たれた物ではなく、その車に向けられた物だった。


 そして車のガラスに飛び散る血飛沫。それは中の人が撃たれた事を示していた。


「ーー交渉も無しかよ!!」


 一方的な殺人に怒りが込み上げ、足に力が入るが次に上がった女性の悲鳴に俺の足は完全に止まった。


 その悲鳴に聞き覚えがある。薄れていた記憶が鮮明になっていくーー


 ーー今撃たれたのは父親で、次に撃たれるのは母親。そして後部座席には怯えた表情を浮かべる俺が居た。


 ーーそうだ。これは俺の過去。何故これをもう1度見せているのか分からない。そしてこの時の俺は無力だった。だが今は違う。車も運転出来る、銃も扱える。


 ふと手元を見るといつの間にか銃を握っていた。不思議には思うがここは俺の記憶の中。俺の意思が尊重されるのかもしれない。


 銃を敵に構えて叫ぶ。


「もう俺は弱い俺じゃない!!」


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