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1-1 火星の生活は……

はじめまして、氷炎の双剣です。


処女作品ですが最後まで書くつもりです。


よろしくお願いしますm(__)m


感想や批判、評価は大歓迎です。


もちろん質問も受け付けています。

 

 地球から遠く離れた星ーー火星。

 太陽系では地球の隣だが、最速でも1週間掛かる。

 もはや地球から目の届かない場所だった。





 -火星 採掘場-


 余り広くない採掘所に突然大きな声が響いた。


「ちんたらしてないで、さっさと歩け!!」


 大きな声を出した兵士は強い口調でイラつきを隠さずに言った。


 そんな中、8歳ぐらいの少女が転んでしまう。


 兵士はそれを見て、


「ああん? 急げって言ってのに、何這いつくばってんだ!!」


 兵士は少女を蹴り飛ばす。

 少女は壁におもっいきり叩きつけられた。

 その衝撃で口から胃の中の物を吐き出してしまう。


 兵士がもう一度殴ろうとすると、間に少年が入ってきた。

 少年は手を左右に広げ、叫んだ。


「止めろ!! 殴る必要は無いだろう!」


 兵士は間に入って来た少年を睨みながら言った。


「こちらは仕事なんだ。流れを潤滑にしようとしてるだけだが。ん? 何か文句が有るのか?」

「あんたは俺達を人扱いしてるのか!? あんたは俺達を物扱いしてるようにしか感じ無い!」


 兵士はふと周りを見渡す。

 周りには沢山の人が兵士を睨んでいた。


 兵士は今は分が悪いと思い、


「すみませんね、ちょっとやりすぎたかもしれませんね」


 と言ってそさくさと奥に引っ込んで行った。




 痛みが引いたのだろうか少女は少年にお礼を言った。


「お兄ちゃん、ありがとう」


 少年は照れ隠しで頭を掻きながら言った。


「別に良いってことよ。次は気をつけろよ」


 少女は花のような笑顔で頷き、手を振りながら列に戻って行った。


 その姿を見送る少年の目はどこか悲しそうだった。

 少年はふと見上げたが、空は見えない。汚い天井が見えるだけだ。


 汚い天井を見て思った。


 俺達は何でこんな事になってしまったのだろうかと。





-----


 2100年……最悪の年と呼ばれている年の事である。


 さっきの少年の名前はユーリ=エリクソンという。

 三年前、ユーリは家族と共に火星に行く準備をしていた。最低限の荷物を自分のリュックに入れる。


「ねえ、父さん。火星ってどんな所?」


 と興味津々に聞くユーリ10歳であった。


 父さんはユーリの頭を撫でながら言う。


「ユーリ、火星は希望の楽園さ。食べ物も沢山あるし、キレイな場所さ。仕事はちょっと辛いかもしれないけど、父さん頑張るからな」


 それを聞いて、ユーリは頷く。


 ユーリ達は低収入層だった。だが、不幸だった訳では無い。毎日が楽しく幸せだった。


 だが、最悪の年によって全て狂った。

 真っ先に食料が尽き、今日のご飯にも苦しむ事になった。


 そんな中、[火星に行こう]キャンペーンを見つける事になる。

 もはや、生きる為には応募するしかない。


 父さんは必死に応募した。

 もちろん向こうは通す気満々なので、すぐに合格通知が来た。


 家族単位という話だったが、遠くに行くのに家族で行く事はあり、別に不思議ではなかった。


 また、家族にも食料が出るという好条件はもはやトドメだったに違い無い。


 ユーリ達は直ぐに準備を開始し、そして準備の出来たユーリ達は迎えに来たトラックに乗って、空港に向かって行った。




-----


 そのトラックには自分と同じぐらいの女の子がいた。

 ユーリが女の子に向けた時、目が合った。

 ショートヘアーの赤い髪が印象的で目が大きく、可愛らしい少女だった。



 ユーリはしばらく無言のまま、見つめてしまった。

 すると、視線に気づいたのか赤い髪の少女は話掛けて来た。


「こんにちは。あなたも火星に行くの?」


 突然、話掛けられたユーリは固まっていると、父さんがニヤニヤしながらユーリを小突いて来る。


「おーい、ユーリ。聞かれてるぞ?」


 ユーリは我に返り、慌てて答えた。


「ぼ、僕はユーリ=エリクソン10歳です! よろしくお願いします!」


 その声は大きくトラック中に響いた。


 いきなり大声で自己紹介された少女は一瞬キョトンとして、直ぐに笑い始めた。

 トラック中も少女と同じように笑いだす。


 ユーリはそれを見て、拗ねてしまった。

 少女はそれに気づき、ユーリに謝った。


「ユーリ君だっけ? 笑ってごめんね。余りにもユーリ君が可笑しかったから」


 ユーリはさっきの慌ててように穴があったら隠れたいほど恥ずかしかった。


「あ、そういえば私の名前言ってなかったね。私の名前はサラだよ。よろしくね」


 サラは可愛らしい笑顔で自己紹介した。

 ユーリはまだ赤い顔のまま言った。


「ぼ、僕も火星に行くよ。サラも?」


 サラは頷いた。


「うん、家族で行くんだ♪ 宇宙楽しみ! 宇宙って無重力なんでしょ? それにお星様がいっぱい見れるんだよね?」


 サラはずいっとユーリの顔の前まで近づいた。

 サラの顔が目の前に来てユーリは頭が真っ白になった。


 ユーリは必死に頷く事しか出来なかった……




 -----


 -地球 宇宙空港-


 ユーリ達が空港に着いた時には空港内は人で埋め尽くされていた。人酔いしそうなぐらいである。

 だが、みなの顔は活き活きとしていた。

 そして宇宙船乗り込みの時、ユーリはサラに別れを告げていた。


「ユーリ君、一旦お別れだね」

「うん」


 ユーリはとても残念そうにしていた。

 それに気づいたサラは出来るだけ笑顔で言った。


「大丈夫♪ また会えるから♪」


 ユーリは力無く再び頷いた。


 サラは手を振って離れて行く……


「またね♪ ユーリ君♪」


 ユーリも手を振りながら、見送る。


「サラ、また会おうねー!」


 サラは宇宙船の中に消えて行った。



 サラを見送り終わったユーリはしょぼくれてると、頭を撫でられた。見上げると父さんだった。


「ユーリ、また会えるさ。心配するなって」

「うん!」


 ユーリ達も宇宙船に入って行った……






 ------


 -宇宙船内-


 宇宙船内はそんなに広くはなかった。一人分の座席はエコノミークラスぐらいだろうか。座席は全席満席だった。

 だが、これから毎日三食出るのであったから不満はない。



 ユーリ達は座席に着き、大人しくしていると放送が入った。


「当機はこれから火星に向かいます。予定は1週間を予定してます。お困りの際は近くの乗務員まで」


 近くには乗務員といえども、ガタイのいい男達しかいなかった。

 やはり、旅行では無いからスチュワーデスとかいないのだろうかとユーリは思った。


 もちろん、地球連合国としては監視の意味で兵士を潜入させているだけだが。




 多くの宇宙船が宇宙に上がった。

 周りを見ても宇宙船だらけ。数えきれないほどであった。

 一面が宇宙船で埋まる。


 ユーリはそれを見て、喜んだ。


「父さん! スゴいよ! まるで、宇宙人が攻めて来るみたいだよ!」

「ああ、スゴいな。これだけの宇宙船が一気に上がったのは初めてだろう」


 その時、下から上がって来る大きな船が見えた。

 多数の砲門を兼ね備え、大きさは宇宙船の比では無い。


「父さん! 大きい船だね! 地球連合軍の船かな?」

「そうみたいだな。軍が護衛してくれるらしい」


 地球連合軍は宇宙船の監視に戦艦3、護衛艦8を派遣していた。


 護衛にしては大規模過ぎる大艦隊であった。

 護衛の名目は海賊やテロ対策と言っていたが、こんな艦隊に刃向かう者などいるわけも無い。ゲリラならやりようがあるが、見晴らしのいい場所で挑むのは馬鹿らしい。


 という訳で宇宙船には大艦隊が護衛に着いたわけだが、連合軍の真意に気づく者はほんの一部だった。


 だが、ここで声を上げても誰も耳を貸してくれない。むしろ、追い出されるだけだろう。


 ユーリはもちろん気づくはずもなかった。


 ただユーリは宇宙船の無重力を、軍艦を、窓から見える星を楽しんでいた。





------


 -火星 宇宙空港-


 船内に放送が響いた。


「ご搭乗のお客様様にお知らせします。火星に到着いたしました」 


 ぞろぞろと宇宙船から人が降りて行く。

 もちろんユーリ達も含まれていた。

 あっという間に空港付近は人で埋め尽くされた。


 そして、降ろし終わると直ぐに宇宙船や艦隊は発進し始めた。


 ユーリは艦隊に向かって叫ぶ。


「守ってくれて、ありがとうー!」

 

 艦隊が見えなくなるまで手を振り続けた。



 しばらくするとトラックが沢山やって来た。


 迎えだろうか?


 人混みを包囲するように止まると、中から兵士がぞろぞろと降りてきた。


 そして、横一列に並ぶと


「構え!」


 の声と同時に銃をこちらに向けた。


 この瞬間、ユーリ達は何が起こっているのか理解出来なかった。いや、理解出来る訳が無いだろう。


 今まで守ってくれた連合軍がこちらに銃を向けるという事を理解出来るだろうか? 国民である彼らに銃を向ける事は有り得ないだろう。


 彼らはむしろ、この現状を理解したくないかもしれない。

 理解してしまったら続いて想像してしまうのは地獄なのだから……


 張り詰めた雰囲気のまま、拡声器を持った兵士が前に一歩出る。

 

「我々は今から貴様らを人としては扱わん。貴様らは家畜以下だ! 従わない者は殺す! 以上だ!」


 それを聞いて群集は騒ぎ出す。

 何が起こってるんだ!? 何故銃を向けるのだ!? 楽園はどうなる!? 等々、悲鳴混じりで聞こえる。


 騒然としている中、勇気の有る者は前に出て叫ぶ。


「それは人権に反している。我々を人と見なさないならば我々は即刻立ち去り、裁判を起こす!」


 それを聞いた兵士達は馬鹿にしたように笑いだす。


 兵士達に笑われた者は怒り出す。


「何が可笑しい!?」


 兵士達は馬鹿にしたような顔をした。


「我々がわざわざ地球に送ると思うか? 地球に声が届かなければ意味がないぞ?」


 それを聞いた男は慌てて電話を取り出す。

 だが、もちろん圏外だ。


 火星に基地局など有るわけも無い。


 兵士達は笑いを噛みしめながら言った。 


「繋がるわけないだろ……ククク……一応衛星電話は繋がるが……渡すわけないだろ?」


 そう言われて、男は手からスルリと抜けるように電話を手から取り落とした。


 電話は地面を叩いて、乾いた虚しい音を出した。




 絶望な雰囲気が辺りに出て来た頃、一人の男が前に飛び出した。

 そして大きな声で叫んだ。


「ならば、奪えば良いだろう! 我々は誰にも屈しない! 我々で自由を勝ち取ろう! 俺達の人数は圧倒的だ! 俺に続け!」


 その言葉と同時に若者や男達が兵士に襲いかかり始めた。

 最初はあんまりいなかったが、一人、また一人と前に足が動き始めた。

 そして何時もの間にか、ものすごい数が襲いかかろうとしていた。


 その中にはユーリの父さんも含まれていた。

 父さんは踏み出す前にユーリに向かって言った。


「ユーリ。父さんも戦いに行く! 母さんの事は頼んだぞ!」

「父さん! 僕も!」

「ダメだ! ユーリ! もし俺に何かがあったら誰が母さんを守るんだ!?」


 そう言われたユーリは返す言葉が見つからない。

 ユーリは覚悟を決め、父さんに言った。


「父さん。後は僕に任せて!」


 それを聞いた父さんは安心して頷き、走って兵士に向かって行った。




 -----


 目の前にはものすごい数の暴徒と化した大量の群集がいる。

 だが兵士達は冷静だった。それはこの事態が想定内だからである。


 隊長らしき人が叫んだ。


「上からは殺してはいけないとは言われておらん! 家畜共に誰が飼い主か教えてやれ! 撃てーー!!」


 掛け声と共に銃が一斉に火を噴いた。

 銃弾が群集に向かって行く……

 そして次々と倒れていく群集達……




 そしてガチンッという弾切れの音が聞こえた時には、死体の山が出来ていた。


 そして一面、血の海である。ユーリの父親も血の海の中である。

 もはや、兵士に向かって行く人は誰も残っていなかった。

 いや、正確には兵士に向かって行く勇気を持った者が。

 思い知ったのである。このまま突撃しても死ぬだけだと。


 ユーリは呆然とした。さっきまでしゃべっていた父さんが死んだなんて……理解出来なかった。


 いや、したくなかった。


 その時、後ろから悲鳴が聞こえた。


 叫んだのは母さんだった。


「あなた……あなたー!!」


 母さんは叫びながら、父さんに向かって行った。



 だが兵士は見逃すはずも無く引き金を引き、母さんは父さんにたどり着く前に一つの発砲音が聞こえた時、既に崩れ落ちていた。


 ユーリはこの状景を見ても声はもちろん涙すら出なかった。


 もはや10歳の頭では許容量を超えていた。いや、大人ですら無理だろう。


 当たり前だろう。

 一分も経たない間に両親を目の前で殺されたのだから。




 この場には兵士達の装填音と遺族の悲鳴だけが響きわたった……



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一話が短くて、更新が早いのは

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