プロローグ3
その声の主は小学生くらいのガキ女だった。
ガキ女は草原で大の字に倒れているあたしを、微笑みながら見下ろしている。
「なに見てんだクソガキ」
こいつのこの声、なんかイラっとする。
なんか前にも聞いたような……。
「わたしですよ。千鳥さん。神様です」
「神様? う~ん……あっ!」
あたしは体を起こした。
そうだ。教室で寝てたら神様に話しかけられて、10万円やるから頼みを聞いてくれって言われたんだった。
「お前が……神様? ほんとに?」
「ほんとですよ。神様のフレンティーユです。子供の姿でびっくりしましたか? えへへ……」
金髪に白いワンピースのガキは照れたように笑った。
そのガキにちょいちょいと手招きする。
「はい? なんですか?」
ガキがあたしの近くでしゃがむ。
ゴン!
「痛い! なんでぶつんですか……」
「お前のせいでここ最近全然寝れなかったんだぞ!」
あたしはガキの頭にゲンコツを食らわした。
なんだかようやくスッキリした気分だ。
「早く応えてくれればよかったんですよ」
ガキが頭を押さえて訴える。
なんだかよくわからない声になんて、気持ち悪くて応えられるか!
……まぁ、結果的には応えちまったけど。
「うるせえ! ま、あたしほど喧嘩が強い奴はいないからな。頼りたくなるのもわかるけどよ」
「いえ、千鳥さんを頼ったのはなんとなくです」
あたしはもう一度ガキに手招きした。
「はい? なんですか?」
ゴン!
……
「で、あたしに倒してほしい不良グループはどこにいんだ? ガキ」
その場にあぐらをかき、ガキに尋ねる。
「ガキじゃありません。フレンティーユです。あと、倒してほしいのは不良グループじゃなくて、わたしがチート転生させた人たちです」
「転生って輪廻転生とかの転生か? なんかオカルトだな。まあ、今更この状況で疑ったりはしねーけどよ。てかチートってなんだ?」
不良グループじゃないのがやや引っかかったが、倒すのには変わりない。
相手がかーちゃんでもない限り、誰であろうと勝てる。
「チート転生っていうのはですね、前世の記憶を持って来世を迎えることです」
「ふーん、ま、なんでもいいや」
金をもらえれば理由なんてなんでもいい。
要は喧嘩して勝てばいいんだろ。
「それでですね、チート転生者さん達は最能と転生特典っていうわたしが与えた特殊な能力を持ってまして……」
「説明はいいから、早くそいつのとこへ案内してくれよ。ほら、行こーぜ」
あたしは立ち上がって、てきとうな方向に進む。
喧嘩に予備知識なんていらねぇ。
必要なのはやるかかやらねーかっていう気持ちだけよ。
「えっ? まだ倒さなきゃいけない理由とか、彼らのもつ能力について……ってそっちじゃないですよー」
神様はトコトコとあたしを追いかけてきた。