プロローグ2
『…鳥さん』
うるせえ。
『千鳥さん』
うるせえ黙れ。
『おかしいですねぇ。聞こえているはずなんですが……。あっ! もしかして』
頼むから寝かせてくれ……。
『ニトリンさんニトリンさん』
……。
『ニートリーンさんニートリーンさん』
「うるせえぇぇぇ! 黙れ!」
あまりのしつこさに堪忍袋の緒が切れたあたしは、その声に怒りをぶつける。
『ああ、よかった。やっと応えてくれた』
なんだかうれしそうだが、あたしはこの声のせいで最近はろくに寝れてない。
今ではこの声を聞くだけでイライラするようになった。
近くにいるんならぶん殴ってやる!
そう思ってあたりを見回すが、何も無い。
真っ暗だ。
教室じゃない。どこだここは?
というより、体がここにあるという感じがしない。
なんというか、意識だけがここにあるような……そんな感じだ。
もしかして死んだか?
教室で寝ながら死ぬなんてダセェ。
そんなことを考えていると、ふたたびあの声が聞こえてきた。
『こんにちは、神鳥千鳥さん。わたしの名前はフレンティーユ。美しい自然とそれなりの平和な世界『フレンティーユ』の神様です』
「はぁ?」
美しい自然とそれなりの平和な世界フレンティーユの神様? アフリカにある国の新興宗教かなにかか?
いや、アフリカは自然があるけどそんなに平和じゃねーだろ。
あたしは自分で自分につっこみを入れた。
もう混乱してわけわからん。
でも、神様ってことはやっぱりあたし死んだのか。
ここで命乞いでもすれば助かるかもしれない。
しかし、命乞いなんてみっともねー真似すんのはあたしのプライドが許さん。
ここは潔く覚悟を決めるぜ。
「天国でも地獄でも好きに連れてけ! 死人に口なしだ!」
喧嘩ばっかりしてたし、やっぱり地獄行きかなぁ……。
ま、地獄の鬼と喧嘩っても楽しそうだしいいか。
『えっ? 千鳥さんは死んでないですよ』
神様はあたしの死をきっぱりと否定した。
は? 死んでない? じゃあなんだよこの状況。ますますわけわからん。
『実は千鳥さんにお願いあってこうして話しかけています』
「お願い?」
神様があたしに?
毎年、初詣に行けとか言うんじゃないだろうな。嫌だぞめんどくせぇ。
「わたしの世界で悪さをするチート転生者さんを倒してほしいんです」
「……」
何言ってんだこいつ? チート? テンセイ? 意味わからん。
チートテンセイっていう不良グループと喧嘩しろってことか?
喧嘩すると、かーちゃんにめちゃくちゃ怒られるんだよなぁ……。
……うん、断ろう。めんどいし。
「嫌だ。めんどい。かーちゃん怖い」
『お願いします! お礼にいいもの差し上げますから……』
神様がくれるいいものってなんだ? 説教か? ふざけんな。あっ、説教は坊主か。
『1人倒すごとに10万円あげます』
「マジで! やるやる! 金ほしーし」
金くれんなら話は別だ。喜んでやってやるぜ!
小遣いに困っていたあたしはかーちゃんに殴られてもやる価値があると判断し、快諾。
すでにやる気十分だ。
『本当ですか! ありがとうございます! ではさっそく行きますね』
「おう! ん? なんだ? どこかに飛んで行くような感覚が……」
……
目を開けると一面の青空があたしの視界に飛び込む。
太陽がまぶしい……。
「千鳥さん」
誰かがあたしの名前を呼んだ。
この声は……。