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異世界チートブレイカー  作者: 九事キチ
プロローグ
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プロローグ1

 悪さをするチート転生者のせいで、平和な世界はめちゃくちゃだ!


「わたしが転生者に与えた能力で世界は大変なことになってしまいました……。もうわたしの手には負えません。――そうだ! 誰かに助けてもらいましょう!」


 こまった異界の神様は、別世界に住む15歳の少女に助けを求めた。


 ……


「ふぁ〜あ……」


 あたしは眠い目を擦りながら学校へと向かっていた。

 あんまりにも眠いからサボろうかとも思ったが、眠いから学校休むなんてかーちゃんが許してくれるはずがない。

 仮病という手もあるが、あたしは今まで一度も病気なんてしたことがないので、この手は無理。

 結局、休む理由が思いつかないまま家を出る時間になってしまい、しぶしぶ学校へ行くことにした。


 校門まで来ると、体育教師が立っているのが見えた。

 あたしはてきとーにあいさつをして通る。


「おはざっす」

「おはよう、神鳥。スカート短いぞ。直してこい」


 昨日も言われた。

 この高校は馬鹿高校だから教師もやる気がない。

 立場上、注意をしてくるだけだ。

 

 昨日と同じくてきとーに「ういっす」と言って、昇降口へ向かった。


 教室まで来ると、入り口のところで不良が3人たむろっていた。

 普段ならそれを避けて後ろの入り口から入るのだが、今日は眠くて機嫌が悪い。


「ちょっとどいてくれ」

「あぁ?」


 不良の一人がガンをつけてくる。

 めんどくせぇなぁと思いながら、あたしはそいつらがどくのを待つ。


「てめえ、誰に言ってんだコラ。女のくせによー」


 不良が立ち上がり、顔を近づけてきた。

 この高校は馬鹿だからこういう安っぽい不良が多い。

 いつもなら「悪かったな」と言って済ませるが、とにかく今日は機嫌が悪い。


 あたしは視線のやや上にあるださいリーゼントを乱暴に掴み、無理やり不良の顔を冷たい廊下に押し付けてやった。


「いででででで! なっ、なん――!」


 他の2人は廊下に押し付けられる仲間を唖然として見ている。

 騒ぎを聞いた野次馬共も、なんだなんだと集まってきた。


「あたしも女のくせにって思うぜ。女はおとなしくしてるべきだよな。でも今日は機嫌が悪いんだ。ここは我慢してどいてくれるか?」


 不良は手や足を使ってなんとか立とうとするが、ピクリとも動かない。

 仲間の2人が一瞬、助けに入ろうとする。しかし、あたしが睨みつけるとすぐに怯んでやめた。


「わ、わかった! ど、どくから離してくれ!」

「わかってくれてうれしいよ。ありがとう」

 

 そう言って不良の頭を離してやる。

 ようやく苦痛から解放された不良は、四つん這いでぜぇぜぇと荒い息をしながら、隣の教室へと入っていった。


「あれ、1組の神鳥さんでしょ?」


 一部始終を見ていた野次馬女共の声が聞こえる。


「うん。見た目も怖いけど、やっぱそういう人なんだね」


 ひそひそと鬱陶しい。

 なんで女ってのは人の悪口をでかい声で言うんだ。

 腹が立つ。


 さらに機嫌を悪くしながら、あたしは教室へと入った。



……



「ふぁ〜あ……」


 教室の窓から外を眺め、あくびをする。


 まじ眠い……。


 外は風が吹いて寒いが、教室にはストーブがあるので暖かい。

 しかし、その心地よい暖かさが余計に眠気を誘う。


 眠い、寝よう。


 朝のホームルームが終わり、もうすぐ授業が始まる。

 だがもう無理だ。眠くてしかたがない。

 あたしは机に突っ伏して寝ることにした。


「ニトリン、ニトリン」


 うるさい。寝させろ。


「ねえねえニトリン、ニートリーン、ニートリーン」

「うるせえー! 黙れ麻美!」

「あっ、ニトリン起きたー」


 前の席の、このどっかぬけてそうな女はあたしの友人、柴田麻美しばたあさみ

 あたしの名前が神鳥千鳥かんどりちどりで、苗字にも名前にも鳥って字があるせいか、こいつはあたしをニトリンと呼ぶ。

 家具屋みたいでダセェから止めろって言っても「えーなんでーかわいいよー」と言ってやめない。


「ガッコ終わったらあそこいこー。ほら、なんだっけ、ポテトとか食べるとこ」

「マッ○か?」

「そうそれー」


 週に3回は行ってるのに、なぜでてこないのか不思議だ。


「太るから嫌だよ。金もねーし」


 バイトもしてないし、こづかいも少ないので、万年、金が無い。

 麻美は結構こづかいをもらっているらしいので、おごってくれと言えば嫌な顔一つせずにおごってくれるが、同級生に何度もおごってもらうのはなんだかみっともない。


「一緒に太ろーよー」

「てめーだけ太れバカ」

「ひどーい、アハハ」


 無邪気に笑う麻美。

 麻美は放っておいて、あたしがもう一度寝ようとすると、今度は後ろの席から声をかけられた。


「あんた最近、授業中も寝てばっかじゃん。留年するよ」


 後ろの席のメガネ女はもう一人の友人、小島真理香こじままりか。麻美とは中学からの友達らしい。

 麻美と違って頭はいいが、志望校の入学試験で名前を書き忘れて、麻美の付き添いで受験したこの馬鹿高校に入学することになったドジだ。


「こんな馬鹿高校で留年なんかしねーし。てか最近、寝てるときに変な声がして寝れねんだよ」

「あんたそれ呪われてるんじゃ……」

「マジやめろよそういうの。……びびってはねーけどさ」


 いやいや幽霊とかやめろよ、こえーじゃん。


「あーニトリンこの前、喧嘩で30人ボコボコにしたって言ってたじゃん。その時の恨みでー」

「殺してねーよ!」


 あたしは速攻で麻美につっこみを入れる。

 あの時は喧嘩したことがすぐにばれて、かーちゃんにぶん殴られたんだよなぁ。あれは痛かった……。


 しばらくして始業のベルが鳴り、授業が始まった。


 あーだめだ、やっぱ眠い。寝る。


 あたしは机に突っ伏し、眠りに落ちた。


   ・

   ・

   ・


『……さん』


 うるせえ。


『千…さん』


 またあの声だ。

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