第33話 風の精霊とブロマンスの帝王
なんと切り出したらいいものか…
シッキムは髭をなでた。
オリバーが見せたのは
公爵家一子相伝の金糸魔法。
あれを人に見せてしまうと、
身元が割れてしまう可能性が高い。
しかし、オリバーはその事に気がついていない。
シッキムならば、もっとうまく使えると信じている。
一般に公開されている魔法の延長だと認識しているのだ。
どのように伝えれば、
傷つけずに、あの魔法を人前で使ってはいけないと理解させられるだろう。
ただでさえ、揺らいでいるオリバーの心の安定に、今は更なる揺さぶりをかけたくなかった。
『ねぇ、パーパ。』
オリバーは、金色の糸をいじくりながら、
シッキムを見上げた。
『なあに。オリバー。』
シッキムはオリバーの横にかがんだ。
『パーパに伝言、預かってた。』
『?』
『…もし、この金色のことを知っている人がいて、その人が花の香りのする夜明け色の瞳を持つ人だったら』
シッキムは、雲のように柔らかな色のまつげに縁取られたその夜明け色の瞳を、大きく見開いた。
『その人は、一番の親友なんだって。
そのことを、僕の子孫に、僕が金色を伝えていく人に、引き継げって。』
『…それ…』
『絶対に一人にしないって。』
揺さぶられたのはシッキムだった。
『最愛のウィルフからの伝言だと伝えろって、言われてた。』
オリバーは、手元の金色を、ウサギの形に変えた。
そして、よいしょ、と立ち上がると
シッキムの前に立った。
『ふりつけもあるの。みててね。
僕はあんまり表情が豊かじゃないらしいから、
巧くできるかわからないけど。』
オリバーはほっぺたをムニムニして眉毛のあたりもムニムニすると、
にっこり笑って、ウィンクした。
そして、揃えた指先にキスを落とすと
それをシッキムに投げた。
『届いた?』
呆然とするシッキムに首を傾げて問いかけた。
『と、どいた。』
『よかったー。結構練習させられたんだよ。
』
シッキムは、なんでか涙を流していた。
『あ、あとね。この金色のこと知ってるの
僕とパーパだけだから、ばれないと思うよ。』
『え。』
『すっごく、無駄に力を使うんだって。
人が一生に何回も使える魔法じゃないって言ってた。』
『でも。』
『ウィルフさんがその魔法を使ったのは
パーパとと僕に教えるときだけだよ。』
『た、たしかに。』
『なんかの理由があって伝わってるんだろうけどね…』




