第31話 風の魔法使いと海賊姫
『これ、あなたが教えたのか』
ミネは、部屋にまるで壁紙のように張り付くボタニカルなイメージの魔方陣をみせた。
『…これは、オリヴィエが?』
シッキムは目を見張った。
『私にも見えるように可視化してくれたんだ。』
『はああ…。うちのこが天才すぎてどうしよう…』
『そうだな。ノックの音だけ聞こえるようにしてほしいんだが、
本人が自分にはできないけど、ぱーぱならできると思うといってた。できるかな。』
『はいはい、ここをこうしてちょちょいのちょい。』
『さすがだな。』
『いえいえ、ところでミネ。』
『なんだ。』
『ミネは女性なのですか?』
『オリヴィエにも同じことを聞かれた。』
『え、ほんとに!』
シッキムは嬉しそうだった。
『…まあ、いい。ところで、わたしは、とある北方の国の近くで難破したことがある。』
『え、なんの自慢ですか。もてそうだけど。』
『…船が壊れて救助されたことがある。』
『ああ。』
『そのときに、ちらりと小耳に挟んだ噂なんだが、
とある貴族に素晴らしい魔法の才能を持った子供が生まれたんだ。』
『はあ』
『子供は男の双子の片割れで、白髪に金の瞳だった。
そういう特徴の子供は、どこの民族にも生まれるが
たまたまその北国では、あまりよくない認識を持たれることが多かった。
だけども、その子の家のものは、なんとかその子が生きていける道をみつけようとした。
その子の祖父は、やはり天才的な魔術師で、国の中枢を担っていたんだが、その子に英才教育を施すために、引退したんだ。
息子に家と仕事を譲ってな。
国で必要とされる人材に育てば、害されることもないと思ったんだろう。
孫は優秀で、二年で祖父の知る全ての魔術を習得したそうだ。
その中には、国をひっくり返すカギとなる魔術もいくつか含まれていたらしい。
その後、その子の祖父はクーデターに巻き込まれ他界した。
その子の家は、新しい国王に再び忠誠を誓い、存続を許された。
しかし、魔術の一つが、その子の祖父の死とともに消滅した。
残念なことに、桁外れな魔力をくうその魔法を、その子の父親は継承したが、使えなかった。
そこで、目をつけられたのが、白い髪に金の瞳のその子供だ。
うまく利用できればよし。できないなら殺してしまえ。ってな。
前国王派にも現国王派にも狙われていたそうだ。』
『それはまた気の毒な。』
『先日、その子は父親と一緒に、事故でなくなったそうだ。
万が一、その子供が生きていることでもあったら、大変な争奪戦になるだろうな。』
『ちなみに、残された家族は?』
『ああ、双子の片割れと奥方は、奥方の実家に身を寄せているらしい。たしか、国でも有数の商家の、看板娘だったはずだから、不自由はしていないだろう。
子供も幸いにして魔術の才はないらしい。』
『ちらりと挟んだわりには、なんとも深刻な噂ばなしですね。』
『そうなんだ。
まあ、どこまでほんとかわからないけどな。
長話をしてすまなかったな。
話は変わるが、オリヴィエも結構な才能があるだろう。
体を鍛えさせた方がいいぞ。』
『うちのムスメもミネのようにムキムキに…?』
『そうだ。人間が、莫大な魔力を持ち続けるのは、大変なことなんだ。器がもろいと育たないぞ。』
『ミネも魔法を使うのですか?』
『私は使えない。筋肉は趣味だ。』
『趣味、筋肉…』
『…。』




