第30話 プチプリンスと海賊姫
『みねねーさまは、女性なの?』
『そっくりそのままお返しするよ、オリヴィエちゃん。』
お昼寝が終わったオリヴィエは、早速ミネの部屋に遊びに来ていた。
『オリヴィエ、ねーさまにいいもの、もってきたんだー。』
オリヴィエは手のひらで何かをころころ転がした。
『だんごむしか?』
『ちがうよ!』
『そうか。』
『むし、きらい?』
『ああ、船に何ヵ月ものっているとな、いたるところに』
『あ、そのはなし、きかなくていーや。』
『そうか。』
『ねーさま、こーしたら、見える?』
オリヴィエの手のひらには何か金色の糸屑がまるまったようなものがのっていた。
『こうするとね』
オリヴィエは毛玉を絨毯に転がした。
毛玉はオリヴィエの手から離れた途端に、ほどけ広がり、一枚の魔方陣となり、床を覆い、壁を覆い、天井を覆った。
『防音効果があるんだ。』
『すごいな。』
『さ、ねーさま。思いの丈をぶちまけていいよ‼』
『酒のみたい、タバコ吸いたい、博打うちたい。』
『うわー…なんか、もうちょっとないの。
ねーさまはさ、エディンさまのこと好きでしょ!?
オリヴィエとパーパがお昼ねしてる間ふたりきりだったんでしょ?』
『私はドラッグはやってないよ。』
『そう?オリヴィエ、ねーさまのこと知ってるよ?』
『もう、毒抜きは済んでるよ。』
『ねーさまは、なんでオリヴィエを鍛えてくれるっていったの?』
『オリヴィエは体格のわりに、手足がしっかりしてるから、大きくなると思った。』
『…ほんと?』
『あと、魔法使いは器が頑丈じゃないと、力を支えられないんだ。きいたこと、ないか?』
『しらない。』
『うちの国の魔法使いは皆すごい筋肉してるぞ。
筋肉を見せあう大会があるくらいだ。』
『へぇ…』
『シッキムどののご息女ならば、さぞ優秀な魔女になるだろうからな。
頑強な器を用意しないと。』
『むきむきになるのかー。むきむき…』