第27話
ジルガンサー連邦国のミネルバ姫は、イルガントの第二王子に嫁ぐにあたり、
持参金として金塊と
船にいっぱいのオリエントの茶碗と茶、
そして船の重石がわりに大量の砂糖を持ち込んだと言われている。
しかしながら、後に放浪の王子と呼ばれた第二王子エドワードは
ミネルバのいる王宮にはおらず、
歓迎の晩餐会にも姿を表さず
愛妾とその娘を囲っている離宮から出なかった。
言葉も分からぬ異国の地に一人捨て置かれたミネルバは
王宮の与えられた私室からでず、婚儀の式典まで引きこもっているのであった。
『…という筋書のもと、私はここにいる。なので、大丈夫だ。』
婚礼前の男女がひとつ屋根の下はまずいんじゃないかというエディンの問いに、ミネルバは淡々と答えた。
『では、王宮の方には替え玉が?』
シッキムの問いに、ミネルバは頷いた。
『常より影武者を勤めてくれている背格好の似た者がいるのだ。』
『ミネルバ様がここにいるのをご存知なのは…』
『両陛下に皇太子殿下、貴殿方と、こちらの王家の懐刀の方々、あとは私の影武者と侍女だ。』
実は見守り爺隊は、偉いのだった。
『シッキム殿』
『はい。』
『わたしのことは、ミネと呼んでいただければ十分だ。
敬語もいらない。
…実は私はシッキム殿のことを存じ上げている。
腕の良い風の司だと、海では評判だ。
お会いできて実は感動しているんだ。』
シッキムは少し驚いたのか目を見開いた。
それから、少し恥ずかしそうにはにかんだ。
『ねぇ、ミネ、俺は?』
エディンもなんだか仲間はずれになったような気がして
ミネルバの軍服のすそを引っ張った。
『よく、存じ上げている。』
ミネルバは、暖かい眼差しでエディンを振り返った。
『ドラゴンを倒した冒険者の話は、港町でもさんざん吟われていたよ。』
『えー?』
『お気をつけ召されよ。いや、これからは私が気を付けよう。
イルガントの王子が姿ばかりの軟弱ものだと信じているものは、あまり多くないのだよ。とくに、ある階級にはね。』
エディンは絶句し、オリヴィエは自然体を装い目をそらした。




