第二十一話 風の館七
ああ、そうか。
今日は夏至だ。
シッキムは、妖精達の浮かれように納得した。
夏至の日は妖精にとっては半期に一度のお祭りである。
しかも、人間の子供を招くのは久しぶりなのだろう。
シッキムも、ややヒく位の盛り上がりようである。
オリバーが怯えるのももっともなことだ。
シッキムは足下で固まっているオリバーをみた。
さあ、どうしたものか。
シッキムはようやく元通りになりつつあるモフモフの髭をなで、オリバーを見下ろした。
自分のそれとひどく似通った色合いの砂色の髪とつむじ。
うーん…
そのときである。
猫の鳴き声がした。
『にああああ』
足下には、いつの間にか半年くらいの白い子猫が居た。
シッキムの眷属の風の精霊。
ウィンディーである。
『あ!ウィンディー!』
とたんにオリバーの声が弾む。
『にああお。おりばー。』
『う、ウィンディー!?』
オリバーはウィンディーを抱き上げ、目の高さまで持ち上げた。
『おりばー、オリバー』
『すごい!ウィンディー!パーパ!ウィンディーが喋った!』
オリバーはウィンディーを抱き上げたままシッキムを見上げた。
『お…おう。』
シッキムは、やや興奮気味のオリバーに押されて頷いた。
オリバーの腕の中の子猫が、シッキムにパチリとウィンクをした。
『にあああお。オリバー!今日は妖精のお祭りの日なんだよ!』
ウィンディーは絶好調である。
『にああお。僕らは、森の妖精に招待されたのさ!』
『そうなの!?あのなんだか地鳴りみたいな声はお祭りなの?!』
『そうだよ。おりばー!信じて!子供は妖精を見れるんだ!』
『ほんとうに!?』
不安げに寄せられていたオリバーの眉間のしわがが一瞬で緩んだ。
ゴロゴロゴロゴロ…
ウィンディが喉をならす。
それをみてシッキムは、ウィンディごとオリバーを抱き上げた。
『にあああお。オリバー、僕が魔法をかけてあげる。目をとじて。』
オリバーは目を閉じた。
両目にそっと当てられる、ふにっとした小さな肉球。
次の瞬間、地鳴りは豊かで賑やかな、歌声に変わった。
『さあ、オリバー目を開けて!』
ウィンディーの声に目を開けると、そこには賑やかな色の服をまとった、たくさんの妖精が居た。
『こんにちは!』
『こんにちは!』
『こんにちは!』
オリバーの周りを、小さな羽を持った妖精達が光をまき散らしながらホバリングしていた。
『わぁお。こんにちは…』
目を丸くしてオリバーも挨拶をする。
『行こう!オリバー!パーティーだ!』
びょんっ
とオリバーの腕からすり抜けると、ウィンディーは地面に降りたった。
それに習い、オリバーも、シッキムに地面におろしてもらった。
シッキムは駆け出す一人と一匹を見送りながら、森に足を踏み入れた。
その瞬間に、わっと森の妖精達から歓声が上がった。
夏至の日は、まだまだ始まったばかりだった。




