第二話 出会い1
ウィルが帰った後、シッキムはしばらく放心していたが、
はっと我に返ると時計をみた。
深夜零時。
耳を澄ませばまだ、酒場の喧噪が聞こえる。
『どうしよ…。』
シッキムはぽつりと呟いた。
ウィルがシッキムを選んだ理由についてシッキムはいくつか思い当たる節があった。
まず第一の理由は、おそらくシッキムが外国人であることだろう。
シッキムの故郷であれば、白髪金目も、双子も、珍しくはあっても、差別の対象ではない。
混血の進んだ地方だから、外見の個性に対する許容範囲が広いのだ。
シッキムの故郷にさえ連れ込んでしまえば、どうとでもなる。
『そっか・・・・・・。連れて帰ればいいのか』
シッキムは、オルハンを眺めた。
故郷の民族衣装を着たオルハンを想像してみる。
『うん、いけるな。ああ、そうか。うん。そうしよう。』
シッキムは自分に確認するように頷くと、カバンからごそごそと大きな紙を出して
部屋の真ん中に置き、
『ウィンディ!』と声をかけた。
次の瞬間、紙の・・・・・・風の精霊を呼び出す魔法陣の上には、少年の形をとった生き物がいた。
『なに、このすがたー』
風の精霊、ウィンディーが不満そうに自分の腕やあしを見ながらくるくる回る。
『すまないな、ウィンディー。ちょっと、シャングリラまで行って、買い物してきて欲しいんだよ。』
『しゃんぐりら?超遠いじゃん!一晩かかるよ!』
『お前だから一晩でいって帰ってこれるんだよ。俺がいったら行きだけで三か月はかかる。』
『もー、たかくつくよ?』
『わかった、わかった。ちゃんとお礼はするから』
シッキムはウィンディーに故郷の通貨を持たせて送り出すと
ひと眠りすることにした。
○○○
シッキムが目を覚ました時、白っぽい猫が腹の上にのっていた。
テーブルの上には、シッキムの故郷で子供が着用している裾の長いブラウスとゆるいズボン
そして、やや大きめの帽子と、何枚かの多目的用の木綿の布が置かれていた。
『ありがとな』
ポフポフと腹の上の子猫をなでると、猫は寝たままニャーと鳴いた。
○○○
『・・・・・・。』
次にシッキムが目を覚ましたとき、目の前には例の子供がいて、じーっとシッキムの腹の上の子猫を見ていた。