第一三話 午後の紅茶 1
『『わー・・・・・・』』
シッキムとオリバーは、お互いの姿を見て、唖然とした。
○○○
隊商と別れたその日、シッキムとオリバーは、アイスクリームなど食べながら、市内観光に興じていた。
ロンドニウムは大陸に近いという立地的メリットもあり、ミラとは比べ物にならない程栄えている。
珍しいもの、美味しいもの、何でもアリだ。
道という道ではストリート・アーティストたちが音楽を奏で、大道芸をし、魔法を披露した。
そんな、常時お祭り状態の街に興奮していた二人は、あっさりと捕まった。
エディンの『見守り爺隊』にである。
二人は麻袋につっこまれると、そのまま王宮に運ばれ、風呂に突っ込まれ、洗われ
身なりを整えられて、そして今、再会を果たした。
で、冒頭に戻る。
○○○
『お・・・・・・』
声をもらしたシッキムに、オリバーはダッシュで駆け寄った。
『パーパっ!!オリヴィエ、怖かったー!!』
シッキムも、反射的に膝をついて両手を広げ、がしっとオリバーを抱きとめた。
『オリヴィエ・・・・・・?』
オリバーの耳元で疑問を呈する。
『認識阻害の魔法です。父はこの魔法で15まで女湯に入りこむことが出来たと自慢していました。』
オリバーが素早く囁いた。
本来の口調なのだろう。
大人びた言葉の方が操りやすいようだ。
『成程。』
オリバーは、シッキムと同色のクリーム色の髪に、空色のカチューシャをつけて、同じく空色のドレスを着ていた。
まるでお人形さんのような・・・・・・美少女ぶりであった。
『しかしまあ・・・・・・別嬪さんだな。』
『パーパこそ!』
ちなみにシッキムもピカピカに現われ、あろうことかひげまで剃り落され、髪も整えられていた。
『誰だか一瞬わかんなかったよ!若返ったね!』
そう、綺麗にされたシッキムは、やたらと童顔の、丸い瞳をした、小ざっぱりした青年だったのだ。
シッキムはオリバーを抱き上げると、不安げに周囲を見渡した。
そこには、大きなテーブルがあり、そばに控えていたメイドに、席に着くように促された。
『ええと・・・・ここはいったいどこなんでしょうか、ね。』
シッキムは話しかけるが、メイドは答えてくれない。
とはいえ、シッキムもだいたい検討はついていた。
爺隊にさらわれたということは、ここはイルガント王国の王家にゆかりのある場所なのだ。
『我が家にようこそ!』
そう、今しがたあらわれた、白タイツのかぼちゃパンツ野郎の実家なのだ。
『うっわー。タイツだ。きもっ!』
『不敬罪で殺されるぞ。・・・・・・かぼちゃパンツもきもいな。』
『二人ともなにヒソヒソ話してるんだい?』
エディン・・・・・・エドワードはまるでバレエダンサーのようなステップで二人に近づいてきた。
『『ひいー』』
シッキムとオリバーはたまらず小さく悲鳴を上げた。
エディンは相変わらず、ガチムチのイケメンで、キラキラしい笑顔ではあったが。
エディンはおびえる二人に少し悲しそうな顔をすると、声を落として囁いた。
『誘拐まがいな真似をして申し訳なかった。ただ、やはり、君らはうちと関わりをつくっておいた方がいい。大丈夫だよ、俺は。裏切ったりしない。』
シッキムとオリバーは、改めて、エディンを見上げた。
そして、シッキムは、口を開いた。
『・・・・・・なあ。エディン』
『うん?』
『かぼちゃパンツと白タイツが気持ち悪いから、寄らないでくれないか。
あと、俺の肩とか背中とか触ろうとしているその手をひっこめてくれ。』
『・・・・・・わかった。』
エディンは手持無沙汰な手をそろそろとひっこめると、自分の席に着いた。
『なあ、これから何が始まるんだ。』
シッキムは、エディンが十分離れたの・・・といっても隣の席だが・・・を確認してから話しかけた。
『アフタヌーンティーさ。』
『アフタヌーンティー・・・・・・。』
『君らは女王陛下のお茶会に招かれたんだ。』