時詠 第2話
またお会いしましたね。
私の名前は『時詠』
変な能力を持った、たま~に来るお客さんで妖しい仕事をしながらのんびりと暮らしている、変な少女です。
…年ですか? 女性に年齢を聞くのはマナー違反ですよ?
さて、今回のお客さんは…
「てめえが人を過去に連れて行けるってガキか?」
「…礼儀のなってないお客さんね。言ってることは正しいけど。
それで、貴方は何がお望みなのでしょうか?」
「オレのことを絶対にばらさないか?」
「勿論。お客様の個人情報なんて戻りたい時間を知りたいだけだから、聞き流しちゃうわよ。
第一、過去に戻ったらそんな情報、意味無くなるんだし」
「…オレは10年前にテメェと同じ位の女を拳銃で殺しちまって、警察に指名手配をされているんだ。
もうそろそろ逃げられる場所もなくなってきちまった所に、テメェの噂を聞いてな。
過去に戻れるんなら、女を殺す前に戻れればオレが犯罪を犯してないことになって、追われることもなくなる!
出来るのか出来ねえのか、どっちだ!?」
「私にとってはとっても簡単なことよ。
でも、噂で聞かなかった? 何の対価もなしに時をさかのぼることなんてできないことを」
「…噂じゃあ場所以外は何も聞いてねぇ。その対価ってなんだ?
金か? オレが持ってるものなら何でも出すぜ」
「お金なんて価値のないものはいらないし、誰だって持っているものよ。
対価は、さかのぼりたい時間の3倍の寿命。1年前に戻りたかったら3年分の寿命を・貴方の場合は10年だから30年分ね。
もちろん過去にさかのぼっても寿命は延びないし、もし残りの寿命が足りなかったら、戻った瞬間に死ぬことになるわ。
その点はあしからず…」
「…へっ…面白れえじゃねえか。命を賭けた大博打ってことか。
いいぜ。どうせ警察に捕まりゃあ無期か死刑なんだ。30年で買えるんなら払ってやるぜ。
おまけに過去のキズがチャラになるなら安いもんだ」
「じゃあ、契約成立ね。あぁ、後ひとつだけ条件があるから。
過去に遡れるのは一生に1度だけ・2度はない。
2度目のない、1度だけのチャンスをどうつかうかは貴方次第…」
「1度した過ちは2度と繰りかえさねえよ。つーか、この世界じゃあ1度のミスで終わりの世界なんだ。
それがやり直せるのならこれほどありがたいことなんてないぜ」
「へぇ…そんな物騒な世界で生きてたんだ。
ま、人の人生に口出しする気もないし。
じゃあ、すぐにでも行くかしら?」
「おう! こんな未来とはさっさとおさらばだ!」
「じゃあ、その扉をくぐりなさい。
その扉の先は10年前・貴方が殺したと言った女性がまだ生きている時間につなげてあるわ。
…いってらっしゃい…新しい人生を…」
「じゃあな」
犯罪者ってのは、いつになっても変わらないわね。
とはいえ、いつも美味しいお仕事をくれるから、お得意様だけど。
え? 一生に1回だけだから得意様になるはずないって? いえいえ、「犯罪者」がお得意様なんですよ。
…おや? 次のお客さんなんていないはずなのにノックが…
「すいません。ちょっといいですか?」
「はーい。どちらさまでしょう?」
「警察のものなんですが、とある凶悪犯がこの部屋に入ったという情報がありまして。
捜査にご協力いただけませんでしょうか?」
「そうなんですか?
…では、ちょっと私物を片付けたいので一度ドアを閉めて10秒ほどしたら入ってください」
「10秒?? え、ええ。では」
そして扉が閉まる………さて、もう扉は開かないわね。
どうして10秒待たせたのかって?
簡単なことよ。
さっきのお客様は、戻った世界の未来の今日・この時間に、この部屋に文句を言いに来るはずでしょうから。
そして今来た警察の人も、扉を閉めた所でお客様の世界に移動して、部屋に入って鉢合わせ・ってね。
文句を言いに来る理由? さぁ…
ただ、お客様を10年前の「拳銃を発砲した瞬間」の過去に戻してあげただけだけど…
拳銃の弾が発射された瞬間は、その女性は生きているわけだし…お客様のお望みは叶えたんだけど。
何か間違ってるかしら?
ええ、時詠さんは全然良い人じゃありませんよ~
某qbさんのように「都合のいいこと」しか言いませんし聞きません。
…短編で投稿した作品って、どうやったら連載に出来るんだろう?
まさか続きを翌日に書くなんて夢にも思ってなかった orz