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6

 透はチャイムの音が聞こえてきて、はっとして顔を上げる。壁に掛かった時計を見ると、針は十時四十五分を示していた。

 どうやら三十分近くも寝ていたようだ。

 透は慌てて解答用紙に目を配る。空欄は半分以上埋まっていた。一瞬ひやっとしたが、これなら問題ないだろうと胸をなでおろす。

 殺人計画を円滑に進めるには、学校のテストで高得点を取らないほうが良い筈だ。成績が優秀では自ら悪知恵が働くと露呈しているようなもの。追試験を免れるぎりぎりの点数を保っていれば、殺人を行った時、わざと低い点数を取るよりも、周囲から疑われにくいだろう。

 透は解答用紙を眺めて、歪な笑みを浮かべた。

 その様子を見ていたのか、

「おい山岸、何か良いことでもあったのかよ」

三年C組の教室の入り口付近から、わざわざ太田俊樹が窓際の席に座る透に声をかける。

「彼女でもできたのか?」

 太田の一言で、十数人の下卑た笑い声が教室中を満たした。何人かは声を押し殺して笑っていた。それらを見て、透は苛立ち、何か言い返そうかとも思ったが、名前も知らない若い教師の『静かにしろ』の一言で、教室は一斉に静まりかえったので、何とか感情を抑えることができた。

 危なかった。ここで何か揉め事を起こしていたら、俺が粗悪な生徒という印象を教師たちに抱かれてしまうところだった。あいつを殺して、万が一警察に俺が疑われた時の為にも、奴等は利用するだけの道具として見なければ。

 透は二度と同じ過ちを繰り返さないよう、シャープペンの芯を手の平の中心に自戒と称して突き刺した。

 もう元の道に戻るつもりはない。過ちは繰り返さない。警察の目を欺き、花圃と自分の未来の為にも、俺はあいつを野放しにしておく訳にはいかない。何が何でも。

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