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豚面転生~殺されかけた所から始まる異世界冒険譚~  作者: 剣原 龍介
第一章・冒険譚の始まり

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第九話・冒険者ギルドへ向かう道すがら

 店の料理に舌鼓を打ち、大いに酒を飲んだ俺は、その日は気分良く寝る事が出来た。

 翌朝、久しぶりにベッドでゆっくりと寝たためか、それとも強かに酒を飲んだからか、俺はいつもより少し遅くに目が覚めた。

 俺は、生あくびを噛み殺しながら荷物を手に一階の酒場へと降りて行った。


「おや?おはようさん!昨夜はよく眠れたかい?」


 一階の酒場に顔を出すと、女将さんが酒場の掃除をしている所だった。

 俺は、女将さんに朝の挨拶を返すとカウンター席に腰掛ける。

 すると、すぐに女将さんが朝食を支度してくれた。


「さぁ、コイツでも食って元気を出しな!」


 朝食は、ハムとチーズを使ったオープンサンドイッチだった。

 これに、酸っぱいキャベツザワークラウトと果実水を付けて銅貨五枚。

 俺は支払いを済ませて料理に手を合わせる。


「いただきます」


 熟成したハムとチーズの濃厚な味わいがたまらない。

 キャベツの酸味も、オープンサンドイッチの味を引き立てる良い仕事をしてくれている。

 さっぱりとした果実水を飲めば、口の中もすっきりだ。


「おっ?いい食べっぷりだね!少しは元気が出たかい?」


 女将さんの問いに、俺は大きく頷く。


「あぁ、朝からこんな美味い飯が食えて大満足だ」


 俺は、朝から満足のいく料理を食べた事で気分が上がる。

 自然と笑顔にもなるというものだ。


「そいつは良かった。アンタ、これから冒険者ギルドに行くんだろ?幸運を祈ってるよ」


 女将さんの激励を受けた俺は、意気揚々と荷物を背負うと宿を後にする。


「じゃぁ、行ってくるとするよ、女将さん。美味い飯をありがとう。もしかしたら、また来るかもしれないけど、その時はよろしく!」


 女将さんの返事に手を上げて返した俺は、宿を出ると早速歩き出した。

 昨日聞いた冒険者ギルドの場所は、ここより大分下町寄りの所になる。

 今日は冒険者ギルドに行く事が目的だが、特に急ぎの用という事でもないので、商人街や職人街の店をのぞきながら行っても良いだろう。

 そう考えた俺は、商人通りから分かれている脇道の一つに入っていく。

 一つ隣の通りに出ると、先程までいた商人通りとはその雰囲気が変わる。

 あちらは大通り沿いに店を構える大店や街道を行き交う商人相手の宿屋などがメインだったが、こちらはより生活感のある雑貨、日用品という雰囲気だ。

 今の俺には、どれもすぐに必要になるものではない。

 適当に通りを歩き、店を覗いて冷やかしながらぶらつく。

 店に入る度に、店員がギョッとした表情を浮かべてこちらを警戒してくる。

 店によっては、俺が単なる冷やかし客だと分かるとあからさまにいやな顔を浮かべて追い払おうとする店もあった。

 まぁ、仕方がない。

 お店だってボランティアじゃないのだ。

 金にならない客への対応が悪くなるのはどこでも当然の事だろう。

 さらに言えば、俺の見た目の事もある。

 仮面で顔を隠すような相手に対して、お店が警戒するのは当たり前だった。

 そんな中で、俺は一軒の古着屋を見つける。

 俺が今着ている服は、山賊の根城にしていた洞窟から持ってきたものだ。

 たまたま状態が良くて体格に合う服が有った為に着ているのだが、数があるわけではない。

 他にも服はあるが、体格的にちょっとサイズが小さい上に、あまり状態が良いとも言えない。

 俺は、丁度良い機会だと思い、着替えの服を買うために古着屋に寄ってみる事にした。

 店内に入ると、まず最初に古着が積まれた棚が目に入る。

 結構な種類がありそうだ。

 俺が店に入ると、奥のカウンターから女性の店員が声をかけてくる。


「……いらっしゃい!服がご入用で?それとも、古着の買い取りかい?」


 俺の顔を見て一瞬ギョッとした表情を浮かべたが、すぐに笑顔に切り替える。

 まぁ、初見の反応なんてそんなものだ。

 しかし、この店は古着の販売だけでなく買取もやっているのか。

 俺は、店員に言葉を返す。


「あぁ、服を買いに来たんだが、買取もやっているなら、丁度良い。売りたい服が有るから、ちょっと見てもらっても良いかい?」

「構わないよ。それじゃ、その売りたい服って言うのを見せてもらえるかい?」


 店員の言葉に頷いた俺は、カウンターに近付き、背負い袋を下ろす。

 床に置いた背負い袋に手を突っ込むと、店員に見えない様に『アイテムボックス』を開いた。

 そうして、『アイテムボックス』から取り出した服を、店員の示したカウンターの上に積み上げていく。


「あんたの背負い袋、一体いくら入っているんだい?」


 取り出した服の量に驚く店員に、俺は背負い袋を指差してもっともらしく説明をする。


「こいつが、魔法の袋マジックバックになってるんだ。見た目よりも結構物が入るんだよ」


 俺の説明に、店員はなるほどねと頷くと、俺がカウンターの上に出した服を一つ一つ手に取って確かめる。


「どれもこれも状態が悪いね。まぁ、買い取れないほどではないけど、大した値は付けられないよ?」

「荷物が邪魔になっててね。とっとと処分したいんだ。数があるんだし、ちょっとは色を付けてくれるとありがたいね」


 俺の言葉に、店員は苦笑を浮かべる。


「どいつも薄汚れているし、状態が悪いね。洗ったり手直ししたりする手間を考えたら、そんなに高くは買えないよ?」

「それで構わないよ。荷物が処分出来て、ついでに金にもなればあまり文句は言わないさ」


 しばらくして、服の査定を終えた店員から買い取り金額を聞いた俺は、一応値段交渉をした上で服を買い取ってもらった。

 いらない服を買い取ってもらったら、今度は俺の服を買う番だ。

 店員に声をかけ、適当な服を見繕う。

 少々値は張ったが、古着の中でも上等なものを数着購入する。

 買い物を終えた俺は、店員に礼を言って店を後にした。

 俺は、その後もいくつかの店を覗いてから、進路を変えて次は職人街へと足を運ぶ。

 職人街は、名前の通り職人の工房が軒を連ねる区画だった。

 こちらには、直接店頭販売している店はほとんどない。

 ここで作られた物の多くが、商人街の店舗に卸されているのだろう。

 ただ、職人街を歩いていると、武器や防具の制作工房がいくつか目についた。

 そちらは表が店舗になっていて、奥に工房があるようだ。

 俺は目についた武器屋の一つに入ってみる。


「何だぁ、見ない顔だな。……この店は初めてだな?」


 俺が店に入ると、厳つい顔をした年配の男性店員が声をかけてくる。

 俺の顔を見ても別段驚いた様子もない。


「あぁ、昨日この街に着いたばかりでね。これから冒険者ギルドに行くんだが、ついでにちょっと武器の一つでも見ておこうかと思って……」


 店内を見渡すと、棚には大小様々な武器が並べられている。

 店の隅には雑多に武器を放り込んだデカい樽もあった。

 店員は、俺の格好を足の先から頭の天辺までジロジロとみてくる。

 そして、小さくため息を吐くと問い掛けてきた。


「金はあるんだろうな?」

「無けりゃ、わざわざ店になんて来ないさ」

「フン!一丁前の口を叩くなぁ。それで、どんな得物が欲しいんだい?」


 俺は、店内を見渡しながら店員に答える。


「今使ってる剣は俺にはちょっと小さくてね。質もそんなに良いモンじゃないんだ。だから、ここらで買い替えておこうと思ってね」


 俺は、背負い袋を床に置くと中から剣を一本取りだした。

 古着屋でやったのと同じ手だ。

 山賊の根城にしていた洞窟で手に入れた武器の中から比較的マシな一本を取り出して、店員に見せた。

 その中には、俺の体格に合う長さの剣が無かったのだ。

 俺が冒険者になる事を考えるなら、ちゃんとした武器が欲しい。

 この剣をどう評価するかで、ここで武器を買うかどうか決めようと思う。

 店員は、俺の差し出した剣を鞘から抜いて状態を確かめると、俺と剣とを交互に見比べた。


「確かに、コイツはあんまり上等な部類じゃねぇな。ウチじゃ、こんなもんはそこの樽行きだ」


 店員の目線の先には、店の隅に置いてあるデカい樽があった。

 中には雑多に武器が放り込んである。

 そうか、これでも山賊の根城にしていた洞窟に有った武器の中では上等な方だったんだが。


「まぁ、まともな品が欲しけりゃ、作ってやらん事もないがな。ただ、ウチは一見さんはお断りだ。それでも欲しいってんなら、店の中にあるやつで好きなものを選びな。売ってやらん事もない」


 そういわれた俺は、店内を見渡す。

 そうして、棚にかかっている一本の剣を指差した。


「あれが良いかな。長さなんか丁度良さそうだ」


 俺が剣を指差すと、店員が値段を告げてくる。

 金は有るかと聞かれたので、俺は問題ないと返した。


「そうか、金は有るのか。しかし、それだけじゃ売れねぇな。よし、店の奥に来な!試し切りなんかが出来るから、そこでお前さんの腕前を見せてもらおうじゃねぇか」


 棚から剣を取り上げた店員に促されて、店の奥についていく。

 店の奥に行くと中庭があり、さらにその奥が工房になっているようだ。

 今は工房の方からは作業の音は聞こえない。

 そこに、店員が試し切りに使うという巻き藁を持ってくる。

 中庭の中央に巻き藁を立てると、店員が手にしていた剣を俺に突き出してくる。


「さて、それじゃコイツであれを切ってみな」


 俺は、店員から剣を受け取って腰に差すと、ゆっくりと引き抜く。

 長めの刀身に同じく長めの柄、片手でも両手でも使える片手半剣バスタードソードと呼ばれるものだ。

 実は山賊との一件の後で、俺の技能に剣術が増えていた。

 山賊と戦った時に剣を振り回していたからだろう。

 今なら、あの時よりももっと上手く剣を使える気がする。

 両手に持って構え、巻き藁との間合いを測る。

 すると自然に剣の使い方が分かる。

 うん?

 俺は、構えた剣の刀身に違和感を感じる。

 まぁ、良い。

 これで切れって言われたんだから、やってみようじゃないか。

 俺は小さく息を吐いて踏み込むと、手にした剣を一気に振り下ろした。

 ドサリと音を立てて切れた巻き藁が地面に落ちる。

 ふむ、これがちゃんと剣術技能で剣を振る感覚か……。

 俺は軽く残心して息を整え、一歩下がって剣を納刀した。


「こんなもんでどうかな。良い線いってると思うけど?」


 すると、切れた巻き藁の状態を確認していた店員が笑い声をあげた。


「ハッハッハ、なかなか良い腕してんじゃないか。良いぜ!あんたに剣を売ろうじゃないか。ちょっと待ってな!」


 俺の切った巻き藁の何が良かったのか、店員は上機嫌で店の奥の工房に入っていく。

 しばらくして、店員は二振りの剣を手に戻ってきた。


「さぁ、ついて来な」


 そう言って店内に戻る店員の後に続いて、俺も表の店の方に戻る。

 店に戻ると、上機嫌な店員が店の棚を指差して笑う。


「この店の表に置いてある奴は、そこの安モンを入れた樽は別としても、全部見本で置いてる品でな。剣も刀身を磨いてそれっぽく見せてはあるが、刃を研ぎだしちゃいねぇ、言ってみれば鈍らの偽物よ!ところがお前さんはその鈍らで巻き藁を叩き切って見せた!ウチの品とは言え、鈍らで切ったとは思えねぇ見事な切り口だったぜ?」


 あぁ、そういう事か。

 試し切りの前に感じた違和感の書体はそれか。


「こいつは記念だ。鞘の方はサービスしといてやる」


 そう言って、店員は表の店に置いていた鈍らの方ではなく、裏の工房から持ってきた一本を俺に差しだしてきた。


「どうもありがとう」


 そう言って、俺は店員に金を支払ってその剣を受け取る。

 そうして店を出ようとした所で、店員が声をかけてきた。


「そう言やぁ、アンタ、冒険者ギルドに行くんだったな。そんななりで冒険か?装備は大丈夫なのかい?いくら剣が良くたって、防具の一つも身に着けてなきゃ魔物モンスターの相手はできんぜ?何なら、隣の店に顔を出すと良い。ヘラルドの紹介と言やぁ、悪いようにはしねぇぞ?」

「そうかい?そいつはありがとう。それじゃぁ、そっちの店にも顔を出してみるよ」


 俺は礼を言って今度こそ店を出る。

 その後ろから店員の声が聞こえた。


「次に来た時には、俺が剣を打ってやるよっ!まぁ、それまで達者だったらだがな!」


 その言葉に、俺は少し驚いていた。

 あのおっさん、店員じゃなくてこの店の親方だったのか!

 まぁ、気に入られたようだし、次に剣を見繕う時にはまたこの店に来ても良いかもしれない。

 俺は、親方の忠告に従って隣の店に入ってみる事にした。

 隣の店は、こっちの武器屋と比べると間口が少し大きな店だ。


「すいません。ヘラルドの紹介といえば分かるって言われたんですが……」


 店に入ると、この店の店内には盾や鎧兜が並べられていた。

 あっちが武器屋なら、こっちは防具屋という事か。


「いらっしゃい。ヘラルドの親方の紹介かい?」


 店の奥から、背は低いががっしりした体格の女性が姿を現した。

 赤茶けたぼさぼさの髪を無造作に後ろでまとめており、先の少し尖った耳が見えている。

 おぉ、コイツはいわゆるドワーフってやつか?

 爺婆から貰って読んだ本で知ってはいたが、本物を目にするのは初めてだ。


「あっ、はい、そうです。親方に、この店に行くように言われて……」


 すると、俺の言葉を聞いた女性はにんまりと笑う。


「へぇ、ヘラルドの親方に気に入られるとは、なかなかやるねぇ。ウチに来たって事は、武器と一緒に鎧も新調するって寸法かい?」


 俺は、その言葉に頷く。

 今着ているのは丈夫な生地ではあるが、所詮はただの布の服でしかない。

 これから行く冒険者ギルドで冒険者になったとして、今後荒事になった時に今の服装のままではあまりにも心許無い。

 剣も新調したのだし、ここは防具も新調しておくべきだろう。


「アタイはジョアンナってんだ。この店の主で、裏の工房で防具を作ってる。まぁ、いわゆる親方ってやつさ。この街でやってくってんなら覚えときな」


 女性が手を出してきたので、俺はその手を握り返した。

 握手をすると、ジョアンナ親方が感心したような声を上げた。


「へぇ、結構鍛えてんね。良い感じだ。所で、どんな鎧がご入用だい?板金鎧プレートメイルなんかだと、しっかり体格に合わせなきゃならんから手間も金も掛かるよ?」


 俺は、少し考えてからニヤニヤと笑うジョアンナ親方に答えを返す。


「いや、俺は騎士ってわけじゃないし、冒険者なら大仰な鎧は必要ないかな。動きやすい方が好みに合う」


 俺の答えにジョアンナ親方は大きく頷く。


「まぁ、そうだね。これから冒険者としてやっていくってんなら、野外活動とかでも動きやすい鎧が良いっていうやつもいるね」


 俺は、ジョアンナ親方の言い方に引っ掛かる所があった。


「これから冒険者としてやっていくならって言うけど、どうしてこれからだって言うんだい?」


 俺の疑問に、ジョアンナ親方は呆気に取られたように口を開ける。


「はぁ?何言ってんだい!首から冒険者証も下げてないんだから、丸分かりさね!」


 あぁ、そうだったのか。

 冒険者はそんなものを持っているのか。

 これは、爺婆から貰って読んだ本には書いてなかったな。


「それで、これから冒険者になるって言うんなら、金は有るのかい?防具をちゃんと揃えようと思ったら、それなりの金がかかるよ?」


 ジョアンナ親方は、心配気に眉を寄せる。


「それなりにまとまった金は有るんだ。問題ないよ。それで、冒険に向いた動きやすいヤツが良いんだけど……」


「まっ、金があるんなら問題ないかね。すぐに入用かい?何なら採寸とかしてちゃんとした物を仕上げるけど?」

「時間がかかるんだろ?急ぎじゃないけど、これから冒険者になりに行くんだ。すぐに仕事を引き受ける事があるかもしれない」


 俺がそう返すと、ジョアンナ親方は少しばかり思案に暮れる。


「そういう事なら、無理に鎧を仕立てろとは言えないね。……分かったよ。ここに置いてあるのは一応見本なんだけど、丁度良いのがあれば売ってあげるよ」

「ありがとう」

「なぁに、ヘラルドの親方が認めたってんなら悪い腕じゃないんだろ?だったら、また稼いでからウチの店に来ると良いさ。その時は、ちゃんと鎧を注文しなよ?」


 俺が頷くと、ジョアンナ親方は朗らかに笑う。

 俺は、店に置いてある商品に目をやった。

 金属鎧に革鎧、兜や盾なんかも置いてある。

 俺は、店の端に置いてある厚手の革の上着ジャケットに目を留めた。


「こいつなんてどうかな?」


 それは厚手の革に要所要所を板金を打って補強した代物だった。


「あぁ、ソイツかい?……確かにソイツならガタイの良いアンタにも合うだろうね」

「ちょっと着てみても?」

「あぁ、構わないよ!」


 俺は身に着けていた外套を外すと、その革のジャケットを手に取って羽織る。

 うん、サイズも悪くない。

 肩や肘、胸元には鉄板と鋲で補強がしてあるし、板金鎧ほどの防御力はないかもしれないが何より動き易い。


「へぇ、サイズもなかなか悪くないみたいだねぇ」


 そばに寄ってきたジョアンナ親方が、ジャケットの裾を持ったり袖の具合を見たりしながら言う。


「うん、これならアンタにも問題なさそうだね。買うかい?」


 俺は迷う事無く頷く。


「はいよ、毎度!」


 ジョアンナ親方の提示してきた金額を払って革のジャケットを買う。

 いい買い物ができたと笑う俺を見て、ジョアンナ親方が苦笑を浮かべる。


「アンタ、物を買う時は注意しなよ?ヘラルドの親方の紹介だし、アタイだから良い様なもんだけど、他所で値段を聞く前に買うとか言っちゃぁ駄目だよ?でないとボッタクられちまうからね?」


 ジョアンナ親方の助言に、俺はアッと声を上げる。


「ハハハッ、今度からは気を付けな!」

「はい、勉強になります」

「素直なのは良い事だね。それじゃ、気を付けて冒険者になりな!」


 ジョアンナ親方にバンバンと背中を叩かれる。

 俺は笑う彼女に礼を言うと、店を後にした。

 それから、さらに職人街を歩いてみて回る。

 すると、職人街には意外と飲食店が多い事に気付いた。

 肉体労働の職人達の胃袋を満たすために、それだけの店が必要という事だろうか。


「どんな料理があるんだろうなぁ。う~ん、時間帯が悪かったか」


 どんな料理が食べられるのかに興味を引かれたが、あいにくと今は昼前でどこの飲食店も準備中だった。

 その事に残念な気分を覚えながら、俺は職人街を通り抜けて下町との境に出る。

 このまま下町に入れば、街の住民の住む住宅街に入る。

 とは言え、そちらに用はない。

 俺はそこから目的地の冒険者ギルドへ向けて通りを歩く。

 しばらく歩いていると、周囲より一回りも二回りも大きな建物が目に入る。

 建物に掲げられている看板を見れば、それが目的の冒険者ギルドだと分かった。

 冒険者ギルドの建物の前に立つと、その大きさが良く分かる。

 出入り口を見れば、数人の人の出入りが確認できた。

 出入りする人の多くが、剣や鎧を身に着けて武装している。

 あれが冒険者なのだろう。

 しかし、建物の大きさに対して、人の出入りが少ないように感じる。


「まぁ、ここでボウと突っ立って見ていても始まらないしな。とりあえず、ここが冒険者ギルドで間違いないんだから、さっそく中に入ってみよう」


 俺は、期待を胸に冒険者ギルドの扉を開いたのだった。

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