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豚面転生~殺されかけた所から始まる異世界冒険譚~  作者: 剣原 龍介
第一章・冒険譚の始まり

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第五話・悲惨な出会い

 助け出されたはずの少女達は、牢屋の奥で震えてこちらを睨んでいる。

 先ほどから牢屋の隅に固まって、動こうともしない。

 俺は、怯える彼女達を放っておいて、手近な木箱の蓋を開ける。

 その中には、一杯に金貨銀貨、宝石が収められていた。

 それと牢屋の中で怯える少女達を見比べて、合点がいった。

 おそらく、この洞窟は山賊達の根城だったのだろう。

 さっき戦った男達の内、体格の良い大男はお頭と呼ばれていた。

 あの男がこの山賊達の親玉であの部屋はそのお頭の部屋、こちらの部屋が戦利品を収めておくための部屋というわけだろう。

 俺は、いまだに牢屋の奥で固まって怯えている少女達に声をかける。


「別に取って食ったりはしませんので、ご安心を……。俺……いや、私は部屋の外を片付けてきます。あなた方は、少し落ち着いてから出られると良いでしょう」


 このままでは埒が明かないな。

 そう思った俺は、彼女達に一声かけるとその場を後にして先ほどの部屋に戻る。

 よくよく部屋を見渡すと、この部屋に置かれているベッドは先ほど見た部屋の物より豪華だし、置いてあるテーブルと椅子も上等だ。

 俺は、三人の死体の内、ローブと瘦せぎすの男達の死体を引きずって洞窟の外へと出た。

 二人の遺体を適当な所に放り出し、一度さっきの部屋に引き返す。

 相変わらず、少女達は奥の牢屋に引き籠っているらしい。


(自分達から出てこない事にはどうしようもないか)


 俺は、残ったお頭の死体を引きずって再び洞窟の外に出た。

 洞窟の中は明かりが灯っていたから分からなかったが、もうすでに日が落ちて久しい。

 幸いにして、良く晴れた夜空は月明かりが明るく、洞窟の周囲の開けた場所で作業する分には不自由しなかった。


「さて、この惨状をどうするか……」


 風で流されて薄れているとはいえ、辺りにはまだ血の臭いが充満していた。

 死体をこのままにしておくのは不味い……。

 爺婆に貰って読んだ本の知識によれば、死体は放置しておくと不死者アンデッドになる事がままあるらしい。

 そうならないためには、最低限度の弔いが欠かせないのだとか……。

 弔うというと、火葬が一番に思い浮かんだ。

 しかし、この大量の死体を火葬にしてしまうには、かなりの規模の火力と時間が必要だ。

 それならいっその事、まとめて土葬にした方が良いだろう。

 俺は周囲を見渡すと、洞窟からさほど離れていない場所に穴を掘って埋める事にした。

 死体の数は、十数体。

 あまり遠い所にすると、死体の数も多いから手間もかかる。

 デカい穴でも掘って、まとめて葬るのが良いだろう。

 そうと決まれば、穴掘りだ。

 とは言っても、馬鹿正直に穴を掘ってやるつもりはない。

 ここは、爺婆から貰って読んだ魔法の本を参考にすべきだろう。

 俺は、本の内容を思い出す。

 その本の内容を読んで、日がな一日読書と体を鍛える他は魔法の練習に費やしてきたのだ。


「まぁ、実践するのは初めてなんだが……。さぁ、上手くいくかどうか」


 気を取り直して、集中する。

 大きな穴を掘るので、それなりに魔力も消耗するかもしれない。

 俺は静かに適した魔法の構成を練り上げ、気合を入れて手をかざす。

 すると、目の前の地面が大きく陥没してその脇の土が盛り上がり、大きく深い穴と土の山が出来た。

 さて、穴の方はこれでいいだろう。

 次は、そこら中に転がっている死体を穴の中に放り込む作業だ。

 俺は、死体を運びながらふと思う。

 身に着けているものも一緒に埋葬するのか……。

 いや、死体から身ぐるみを剝ぐというのは罰当たりか?

 第一、敵を迎撃するために出てきた輩だ。

 そんな時に、わざわざ高価な宝物を身に着けるとは考えにくい。

 次々と死体を穴に放り込みながら、一部の死体が腰にぶら下げていた小袋に気が付く。

 試しに小袋を開けてみたら、液体の入った瓶が入っていた。

 『鑑定』してみた所、その瓶の中身は体力や傷の回復に効く魔法のポーションだった。

 そういった小袋をぶら下げていた死体が何体かあったので、その小袋だけ回収しておく。

 こうして、死体を全て穴に放り込んだ所で、再び魔法を使う。

 今度は、穴の横に作っておいた土の山を死体の入った穴に入れていく。

 穴を埋めた所で、付近から手頃な大きさの石を持ってくる。

 その石を埋め立てた穴の前に立て、簡素ではあるが墓標の代わりにする。


「さてと、これで一応完成か。成仏してくれよ……」


 洞窟の中にあった酒を弔いとして墓石にかけ、手を合わせる。

 これで大丈夫かは分からないが、何もしないよりはマシだろう。

 それから、気になっていた事を確かめる事にした。

 俺が自分の名前を決めた時に開いたステータス画面のレベル表示を確認してみる。

 そこには『レベル:21』と表示されていた。

 これは、丁度良い。

 俺は『アイテムボックス』を開き、中から『祝福の鐘』を二個取り出す。

 それを使って、自分のレベルを1まで戻した。

 これで『祝福の鐘』を四つ使用した事になる。

 残りは五つだ。

 その時、使用して消えていく『祝福の鐘』を見て俺はある事に気が付いた。

 『アイテムボックス』からアイテムを取り出せるのなら、逆にアイテムを収納する事もできるんじゃないか!

 何でこんな簡単な事を見落としていたのか……。

 呆れてものも言えない。

 とりあえず、洞窟に着いた時に降ろしていた荷物を回収して『アイテムボックス』に収納してみる。

 やはり、問題なく収納できた。

 『アイテムボックス』に手を突っ込めば、中に何があるかも感覚的に理解できる。

 どれだけ収納できるかは分からないが、これで荷物の持ち運びは随分と楽になるだろう。

 今のうちに気が付いただけ良しとしよう。

 気持ちを切り替えた俺は、死体の処理、いや、遺体の埋葬が終わった所で、洞窟の中に戻る事にした。

 俺が洞窟の中の広場に戻ってきても、奥から少女達が出てきた様子はない。

 焚火の火が弱くなっていたので、広場の一角に積んであった薪を取ってきて焚火に放り込む。

 放り込んだ薪を弄って焚火を調整し終えた所で、焚火の横に置いてある大きな鍋に目をやる。

 鍋の中には、色々な具材の入ったスープが入っていた。

 せっかくだ。

 俺は、スープの入った大鍋を焚火にかけて温める。

 しばらく待って、鍋がグツグツと煮えてきた所で火から外す。

 そして、『アイテムボックス』から皿を取り出して、温まったスープを注いだ。

 ウン、食欲を誘う良い匂いだ。

 そっとスプーンですくって口に運ぶ。

 美味い。

 チクショウ、山賊の奴らめ、意外に良い物食ってるじゃないか。

 何となく悔しい気持ちになった俺は、一気にスープをかき込んだ。

 そうして食事をしている間も、洞窟の奥は静かだった。

 洞窟の奥にいる少女達を、どうするべきか。

 牢屋でのやり取りから、ドレスの少女は高貴な身分なのだろうと分かる。

 せっかく助けたんだし、ここで放り出すのは寝覚めが悪い。


「うん、まずは様子を見に行ってみるか」


 そうと決まれば、善は急げだ。

 早速、俺は洞窟の奥へと足を向ける。

 奥の部屋へと向かってみると、部屋は床が血を吸っていて空気が悪かった。

 さらに奥の部屋へと足を運ぶ。

 山賊のお宝と牢屋のあった部屋だ。

 高貴な身分の人物が入れられていた事を考えると、身代金でも取るつもりだったのだろうか。

 俺が部屋に入ってくると、ヒッという小さな悲鳴が上がる。


「お嬢様方、そろそろ気分も落ち着きましたか?いつまでもこんな所に居ては、気が滅入るでしょう?洞窟の入り口近くの広間に食事が用意してあります。いかがですか?」


 俺は、努めて優しい声を作りながら少女達に語り掛けた。


「近寄るな!化け物め!私達を捕らえてどうするつもりだ?」


 あまりの言い草に、俺は呆れてしまう。

 ふと、怒鳴りたくなる衝動が沸き上がるが、ここで俺が怒鳴っても良い事はない。

 冷静に、紳士的に行こう。

 少女達が閉じたのだろう牢屋の扉を開きながら、俺は落ち着いてゆっくりと語り掛ける。


「捕らえるも何も、捕まっていた貴方達を助けたのは私ではないですか。いつまでもそんな所に居ては、心に悪影響ですよ。温かい食事もありますから、そちらに行きませんか?」


 しかし、俺の努力もむなしく、少女達から帰ってきたのは拒絶の言葉だった。


「イヤ!来ないで!誰かぁ!誰か、助けて!」

「近寄るな!この化け物!」

「この!汚らわしい化け物め!欲望に任せて私達を嬲るつもりか?」

「お嬢様は、私達が命に代えてもお守りいたします!」


 ポロポロと涙を流して震えるドレスの少女と、彼女を守る様に立ち塞がり悲壮な覚悟を固めた決死の表情を浮かべる三人の少女。

 その様子を見た俺は、諦めのため息を吐く。

 これは言葉で言ってもどうにもならなさそうだ。

 そう判断した俺は、いったん少女達の扱いは棚上げして、部屋にある木箱に注目する。

 『アイテムボックス』の効果があれば、この山賊の財宝を持ち出す事も容易だ。

 俺は、『アイテムボックス』が木箱を吸い込むイメージで、手を木箱に触れ意識を集中した。

 すると、目の前の木箱が跡形もなく消え去った。

 『アイテムボックス』を開いて手を入れ、中身を確認する。

 思った通り、木箱が『アイテムボックス』の中に収納されている。

 上々の成果にほくそ笑んだ俺は、上機嫌で残りの木箱を『アイテムボックス』に収納していく。

 それなりの量があるので、後で時間のある時にでも細かく確認してみよう。

 そんな事を思っていると、目の前で木箱が次々と消えていく様を見た少女達が騒ぎ始める。


「木箱が消えた!」

「この化け物め!一体何をした?」

「私達も木箱の様に消してしまうつもりか?」

「そんな事はさせません!お嬢様は私達がお守りするのです!」


 少女達の声に俺が振り返ると、途端に少女達はヒッと悲鳴を上げて恐怖に顔を歪ませ身を竦める。

 いい加減、この反応にも慣れてしまう。

 俺は、牢屋の奥で縮こまる少女達の反応を放っておいて、広間へと戻る。

 と言っても、見捨てるわけではない。

 俺は、少女達の様子とこの洞窟の状況から、彼女達が疲労と恐怖、空腹のために冷静な判断が出来ないのだろうと判断していた。

 俺は、焚火のそばに置いてある食器の山から四人分の皿と匙を手に取ると、大鍋からまだ温かいスープを皿に注いでいく。

 続いて、広間にある毛布を四人分、『アイテムボックス』に収納する。

 それから、奥の部屋まで戻る。

 牢屋の中は相変わらずだ。

 まぁ、こんな短時間で態度が変わるはずもないか。

 牢屋の鉄柵に近寄ると、少女達が怯えた様に牢屋の端に身を寄せ合う。

 俺はその様子を務めて無視して、『アイテムボックス』から取り出したスープの入った四人分の皿と毛布を扉の横に置く。

 そして顔を上げると、怯える少女達に静かに語り掛けた。


「温かい食事と毛布です。そこから出るのが怖いとしても、食事を取って一休みしてください。体を休めれば心も休まるでしょう。夜は冷えますから、この毛布を利用してください。気休めかもしれませんが、何もないよりはマシでしょう」


 当然の如く、少女達からの返事はない。

 まぁ、拒絶の声を上げられないだけマシだとしておこう。

 俺は、言うべき事を言った後で、部屋を後にする。

 とりあえず、後は彼女達次第だ。

 そうして広間まで戻ってきた俺は、その足で食糧庫に向かう。

 ここには、それなりの量の食料が収められていた。

 せっかくだし、コイツは全部貰っておこう。

 次に、隣の武器庫に入る。

 ここには、色々な武具や木箱が置いてあるので、適当に手に取った剣を『鑑定』してみる。

 正直、それほど質の良い物ではなかった。

 それはそうだろう。

 こんな所に大業物の逸品なんかあったら、そっちの方が驚きだ。

 剣や槍、斧などこんなにあっても使うかどうかは分からないが、街に入る事が出来れば売り払って金にする事ができるかもしれない。

 他には、弓が数張と大量の矢がある。

 剣と違って、こちらは使い道があるな。

 森で狩りをする事があれば、弓は大いに役立つだろう。

 武器庫の中身も漏れなく『アイテムボックス』に収納していく。

 収納してから気が付いたが、ここの木箱には武具以外の物が入っている木箱が複数あった。

 その木箱には、様々な日用品や衣類の類が雑多に収められていた。

 まぁ、冷静に考えれば当然か。

 ベッドの置いてあった各部屋には、ろくに物が置いてなかった。

 となれば、日常で使うそういう物がまとめて置いてある場所があるはずなのだ。

 俺はその中から衣類を探して確認する。

 今着ている服は上等な仕立ての服ではあるのだが、塔を襲撃されて以降これまでの出来事で汗と泥、多少の返り血などで薄汚れている。

 いい加減、着替えたいと思っていたのだ。

 丁度良く、俺の体格に合う服があった。

 他の服と比べると少々上等な服だ。

 生地も実用性重視なのか厚みがあって丈夫そうだ。

 大きさからして、ここの山賊のお頭が使っていた物だろう。

 早速、服を着替える。

 本当は体の汚れを拭って清潔にしたい所だが、ここは我慢するしかない。

 部屋の中身を『アイテムボックス』に収納し服も着替え終えた俺は、広間に戻って焚火に当たる。

 ついでに、大鍋にまだまだ残っているスープを腹一杯にいただいた。

 ここまでたらふくに食べたのは久しぶり、……いや、この世界に転生してきてからは初めてだったか。

 大いに腹を満たした俺は、焚火に薪をくべてからその近くに毛布を敷く。

 牢屋の方にいる少女達に毛布を持って行った後だが、それでもまだまだ毛布は数がある。

 俺は、数枚の毛布を敷いてその上に横になるとちょっと贅沢な気分になり、満足を覚えながら眠りについた。



……

…………

………………



 パッと目が覚める。

 どうやら、昨日も良く寝たようだ。

 身を起こすと、広間の天井に空いた穴から日が差している事に気が付いた。

 朝かとも思ったが、天井から日が差している事から考えてもう昼近いのだろう。

 俺は、火の消えた焚火の跡から灰を避けて新しい薪を組んで火を点ける。

 昨日の大鍋の残りのスープを温めなおして食事を取り、食器の山から四人分の皿を取ってスープを注ぐ。

 少女達が、昨日の夜の内に寝ている俺を避けて外に出たとは考えにくい。

 四人の食事を用意し終えた俺は、その足で奥の牢屋がある部屋に向かう。

 部屋に入ると、思った通り少女達はまだ牢屋の中にいた。

 昨日と同じく牢屋の隅に固まっている。

 見れば、昨夜持ってきた皿は四つとも空になっている。

 食事を取ってくれたのだろう。

 昨日とは畳み方が違ったので、毛布も使ってくれたようだ。

 俺は、牢屋の中にいる少女達にゆっくりと優しく語り掛けた。


「遅くなってしまった様で申し訳ない。こちらに食事をお持ちしました。とは言っても、昨日のスープの残りで申し訳ないのですが、何も食べないよりはマシでしょう。どうぞ、温かい内にお召し上がりください」


 昨夜とは違って、少女達からはこちらを拒絶するような反応はない。

 代わりに、じっとこちらの様子を窺う様な雰囲気がある。

 まぁ、反応が悪いのは織り込み済みだ。

 今更、気にするような事でもない。

 俺は空になった四人分の皿を片付けると、代わりにスープの入った新しい皿を置く。

 もちろん、牢屋の中には入らない。

 そのまま静かに部屋を出る。

 広間まで戻って、俺はこれからどうするべきかを考える。

 正直言って、牢屋を出てこない彼女達を人里まで送り届けるのは不可能だ。

 何しろ、牢屋から出ないのだ。

 無理やり連れだすわけにもいかない。

 そんな事をして、ばらばらに森の中に入られたら保護のしようがない。

 もっとも、保護してやる義理もないわけだが……。


「さて、これからどうしたものか……」


 俺がボソリと呟くと、突然後ろからジャリッと地面を踏む音が聞こえた。

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