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豚面転生~殺されかけた所から始まる異世界冒険譚~  作者: 剣原 龍介
第二章・駆け出し冒険者編

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第六話・ゴブリンの巣穴討伐戦①

 時刻は夕方。

 俺は今、森の奥にいる。

 目の前には、ポッカリと口を開けた洞窟の入り口が見える。

 俺は、すぐ後ろで身を縮こませて様子をうかがうフローラに声をかけた。


「フローラさん、あれが例の洞窟なんですね?」


 俺の問い掛けに、フローラは黙り込んだままコクリと頷く。


「よし、それじゃぁ、最初に言った様に洞窟には俺一人で入る。もしも、俺が洞窟から戻らずにゴブリンが出てくるようだったら、その時は迷わずに村へ逃げるんだ。良いね?」


 確認のために俺がフローラに問いかけると、フローラは逡巡した後で俺を見つめて口を開く。


「あの、アルトさん。本当にお一人で行かれるんですか?……考え直しませんか?もしもの事があったら……」


 不安げなフローラに、俺は頭を振って答える。


「村を出る時に決めた事だろう?大丈夫さ。無茶はしない。それに、ここでゴブリンを討伐しておかなきゃならないのは、君も理解しているだろう?」


 俺は、なおも不安げな様子を隠せないフローラの頭をポンポンと軽く叩いて笑顔を見せる。

 とは言っても、仮面を被っているので見えるのは口元だけだが……。

 俺の言葉に頷いたフローラの様子を確認して、俺は潜んでいた藪からそっと動き出す。

 そうして、慎重に洞窟へと近付きながら、村での出来事を思い返していた。


「馬鹿野郎!何て事しやがった!アンタは銅階級カッパークラス冒険者だろ?」


 テーブルに拳を叩き付けて激昂した村長は、椅子を蹴立てて立ち上がると声を荒げた。

 村へと向かった俺達は、村に着くとその足で村長の家へと向かった。

 そうして、フローラがゴブリン討伐に出向いた先で起こった事の顛末を村長に報告したのだ。

 先代から代替わりしたばかりだというその村長は、口角泡を飛ばす勢いでフローラに怒鳴りつける。


「それがゴブリンの巣穴を突いて逃げ帰っただと?巣穴を襲われて刺激されたゴブリンが村を襲ったら、一体どう責任を取るつもりだ?取れないだろ?よくもそれで、この村に顔を出せたな!ゴブリンが襲ってくるとなったら、アンタのせいで、俺達は村を捨てなくちゃならんのだぞ?どうしてくれるんだ!」


 村長の怒鳴り声に身を竦ませて黙り込むフローラに代わって、俺が村長に執り成しを試みる。

 村長は見た目で言うならまだ中年といった風体で、こういう場面で怒りを抑えて冷静に対応するにはまだ若いという事なのだろう。


「村長、落ち着いてください。確かに彼女達はゴブリンを刺激してしまったかもしれません。ですが、仮にゴブリンが村を襲うとしても、今なら避難の準備をする余裕があるはずです」


 静かに告げる俺の言葉に、村長は一瞬俺をギッと睨んだものの、倒れた椅子を起こして座りなおす。


「アンタは良いだろうさ。所詮は他所から来たただの冒険者だ。この村の人間じゃない。いざとなれば何所へでも逃げられるんだからな。……だが、俺達農民はそうはいかんのだ。勝手に村を離れる様な事があれば、領主様に捕まって処罰、最悪見せしめに処刑される事だってあるんだ。それに、避難した所で、農民の俺達は耕す土地を失ったら生きていく事などできん」


 イライラとした様子でテーブルをコツコツと叩く村長の様子に、俯いて縮こまるフローラは小さく謝罪の言葉を口にする。


「本当に申し訳ありません……」


 しかし、その言葉が逆に村長の神経を逆なでしたようだった。


「あぁ、本当に迷惑だ!ヘマした冒険者が野垂れ死にしようが、俺達農民には関係ないがね!せめて、俺達とは関係のない所で死んでくれないか?人様に迷惑かけた挙句に、自分達は責任も取らずに勝手に死ぬなんざ、迷惑千万だ!」


 村長は、再びテーブルをドンッと叩くとフローラを怒鳴りつける。

 フローラは怯えた様に縮こまるばかりで、このままでは話が進展しそうにない。

 俺は、意を決して静かに尊重に話しかけた。


「村長、要はゴブリンの脅威が無くなれば良いんだろう?だったら、俺がゴブリン討伐を引き受ける。ゴブリンの巣穴を潰して、潜んでるゴブリンを全て討伐すれば問題はないはずだ」


 俺の言葉を聞いた村長は、フローラを睨み付けていた視線を俺に移して鼻で笑う。


「フン!ゴブリンの巣の討伐をするだと?馬鹿も休み休み言え!アンタ、銀階級シルバークラス冒険者だろ?知っているぞ?冒険者ギルドの基準じゃぁ、ゴブリンの巣の討伐は金階級ゴールドクラス以上の仕事だろ?銀階級のアンタに出来るわけがない!」


 俺の発言に冷ややかな視線を向ける村長に対して、俺は言葉を続けた。


「よく知っているな。まぁ、それもそうか。確か、この村の依頼じゃなかったかな?ゴブリンの巣の討伐依頼が冒険者ギルドにあったはずだ」


 俺は確信を持って言う。

 俺が冒険者ギルドにいた時にそういう話があったのだ。

 ただ、金階級以上の冒険者にとっては、ゴブリンの巣の討伐依頼は割に合わない依頼として請け負う者がなかなかいないという話だった。


「そっちこそ、よく知っているじゃないか、アンタ。あぁ、確かに冒険者ギルドに依頼した。かれこれ半年は前だ。だけど、冒険者ギルドは報酬が低いとか難癖付けて誰も依頼を請け負おうとしない。だから、せめて村周辺に出没するゴブリンの討伐だけでもって事で依頼したんだ」


 村長はフローラを睨み付ける。


「それが、ゴブリンの巣を刺激しただって?俺達が、ゴブリンの巣に怯えながら刺激しない様に注意していたってのに、台無しにしてくれて!ゴブリンの群れに襲われたら、この村の力じゃ抗いようがない」


 頭を抱える村長を見て、フローラは申し訳なさそうに頭を下げて縮こまる。

 俺はフローラの肩をポンポンと優しく叩くと、村長に声をかける。


「村長、仮に村がゴブリンの標的になるとしても、機先を制してこちらから攻撃すれば、ゴブリンの村への襲撃を遅らせる事だって出来るはずだ。そうして時間を稼いでいる間に避難するなり、領主様に救援を求めるなり、冒険者ギルドにもう一度討伐依頼をするなりすれば良い」


 俺の言葉に、村長は――ついでに話を聞いているフローラも――怪訝な表情を浮かべる。


「それに、俺がゴブリンの巣を討伐できれば、高い依頼料を冒険者ギルドに払わなくて済むだろう?失敗しても時間稼ぎは出来るんだからな」


 村長は、俺の言葉を吟味する様に腕を組んで黙り込む。

 しばらくして、顔を上げた村長は口を開いた。


「アンタが嘘を吐いていたら、どうする?ゴブリンを討伐に行くと嘘を言って、そのまま村から逃げ出さないとも限らん」


 村長の言葉に、俺は首を振る。


「その気があったなら、そもそも村になんて来ないさ。出来ない事を言うつもりもない。それに、同じ冒険者として、同業者が悪し様に言われているのを見て黙っているわけにはいかないさ。冒険者の評判が悪くなれば、俺の仕事にだって差し障りがあるかもしれないからな」


 俺は、村長の厳しい視線を正面から受け止める。

 視線をぶつけ合って黙り込む俺と村長の様子に、フローラが不安気にその顔を見比べる。

 やがて、村長は盛大に溜息をついて口を開いた。


「はぁ……、村人は、明日の昼までには避難の準備を終えて村を出る。ローゼンハイムの街まで救援を要請するつもりだ。それまでに何とか出来るというのなら好きにすれば良い」


 話は終わりだとばかりに村長は席を立った。

 俺も席を立ち、フローラを促して村長の家を出た。

 前を歩く俺に向けて、後を追いかけてフローラが問いかけてくる。


「アルトさん、あんな事を言って大丈夫なんですか?」

「あんな事というのは?」


 村長の家から離れた所で振り返った俺は、問いかけてきたフローラに逆に問い返していた。


「ゴブリンの巣穴の討伐の事です!巣穴の討伐は金階級以上の仕事じゃないんですか?」


 フローラは、俺が銀階級であるのにゴブリンの巣穴の討伐を言い出した事に不安を抱いたのだろう。

 もちろん、俺だって無為無策で言いだしたわけじゃない。

 一般的な金階級冒険者の実力と今の俺の実力を秤にかけて考えた、俺なりに十分勝算のある提案なのだ。

 俺は、不安気に俺の顔を覗き込むフローラを安心させようと努めて明るく振る舞う。


「何、心配はいらないさ。俺だって、無謀な挑戦をする気はないんだ。フローラはゴブリンの巣穴が何所に有るか教えてくれるだけで良い。後は、俺が自分で何とかする」


 俺の言葉に驚いた様な表情を浮かべたフローラは、一転して真剣な表情を作ると首を振った。


「そんな……。元はと言えば、私達がしでかした事です。アルトさんに責任を全て押し付けるわけにはいきません。私も行きます!」


 初めは俺一人でゴブリンの巣穴の討伐に行くつもりであったのだが、必死な様子で俺に詰め寄るフローラの鬼気迫る勢いに押されて、俺は結局フローラの同行を許す事になったのだった。

 そうして森の奥を目指して森に踏み込んだ俺は、道中でフローラからゴブリンの巣穴の位置や周辺の地理、洞窟に入った時の内部の様子などをフローラから聞き取っていった。

 とは言え、所詮は野伏レンジャーでもないフローラの記憶では、大した情報にはならなかった。

 森の中で迷わずにゴブリンの巣穴に到達できただけでも上出来だろうと、俺は思う。

 とにかく、こうしてゴブリンの巣穴を無事に発見できた俺は、フローラを洞窟の入り口に残して洞窟に踏み入ろうとしているわけだ。

 事前に、フローラにはもし外からゴブリンが洞窟にやってきたら逃げる様に言い含めている。

 もちろん、フローラがその指示をどこまで守るかは定かではない。

 だが、ゴブリンの生態を考えるならば、洞窟の外で待つフローラに危険が及ぶ心配はあまりないだろうと俺は考えている。

 ゴブリンは昼間に活動しないわけではないが、その生態は夜行性に近い。

 さらに、ゴブリンは昼間の強い光を嫌う傾向がある。

 だから、洞窟の様に暗い場所を好んで住み着くのだ。

 例外となるのは、群れの中での序列争いに負けて群れを追われたゴブリンくらいだ。

 おそらく、今まで村周辺に出没していたゴブリンも、そういう群れを追われた個体なのだろう。

 村周辺でゴブリンの被害が出ていたのに、ゴブリンの群れに襲われていないのがその証拠だ。

 そうであれば、洞窟を根城にしているゴブリンが昼日中に洞窟の外に出て活動している可能性は、かなり低いと言える。

 もっとも、その事に気が付いていない様子のフローラは、俺が万一の場合は逃げろと言うと悲痛な表情を浮かべていた。

 とは言え、いつまでもフローラに構っているわけにもいかない。

 森の中、洞窟を前にして一人で待ち続けるのは心細いだろうが、それが彼女の選んだ道なのだ。

 その点は、もはや俺がどうこう言える話ではない。


「さて、いよいよゴブリンの巣穴攻略に挑むとしますか」


 洞窟の入り口まで歩み寄った俺は、そっと洞窟の内部の様子を窺う。

 洞窟の壁面には、自然な岩肌のものの他に明らかに掘った跡がうかがえるものもある。

 どうやらこの洞窟の内部は、自然に出来たものというより人工的に掘り広げられたものの様だ。

 広さは、俺が背を屈めて入らなくても済みそうな程度には広い。

 洞窟の暗闇は奥深くへ続いており、入り口からではその内部をうかがい知る事も出来ない。

 俺は、洞窟内部での戦いに備えて腰に差していた小剣ショートソードと腰に吊るしていた小楯バックラーを手に取る。

 少し洞窟に踏み入ると、その奥にかすかな光が見える。

 ゴブリンが自分達のために用意している灯りだろう。

 しかし、灯りというにはあまりにも心許無い光だ。

 とは言え、夜目の利くゴブリンにとってはそれで十分に違いない。

 だが、人間である俺に暗闇を見通す力はないのだ。


持続光コンティニュアルライト


 洞窟内部の暗がりを払うため、俺は初級の光属性魔法を使用する。

 顔に被った仮面に魔法の灯りを灯す。

 こうすれば、灯りを持つ為に手を塞がずに済んで両手が自由になる上に、仮面から照らされた灯りは俺の顔の動き、つまりは目線に合わせて自在に動かす事も出来る。

 洞窟に入った俺の視界を、魔法の灯りが照らし出してくれる。

 暗がりの中にこうして明かりが灯っていれば、中にいるゴブリンどもに気付かれる事になるが、それは仕方がないだろう。

 煌々と灯りを灯す事によるリスクより、暗闇を手探りで進むリスクの方が大きい。

 覚悟を決めて洞窟の更に奥へと進んでいくと、洞窟の奥からギャーギャーという複数の鳴き声が聞こえた。

 洞窟の奥にいるゴブリンが、俺の照らす灯りを見て侵入者である俺の存在に気が付いたのだろう。

 俺は、洞窟の奥からやってくるゴブリンの気配を感じて身構えた。


「ギャーギャー!」

「ギョゲゲッ!」

「ギョギャー!」


 洞窟の奥の暗がりから、数匹のゴブリンが飛び出してきた。

 俺は先陣を切って飛び掛かってきたゴブリンの鼻っ柱を手にした小楯で殴り飛ばし、後から続くゴブリンの首に小剣を叩き付けた。

 首を切られたゴブリンを蹴り飛ばし、その後ろのゴブリンに肉薄して胸に小剣を突き刺す。

 それから、最初に殴り飛ばしたゴブリンが体勢を整える前に止めを刺そうと小剣を構える。

 しかし、よく見ればそのゴブリンは首の骨が折れて既に息絶えていた。

 洞窟の奥からは、他にもこちらに向けて迫るゴブリンの鳴き声と足音が聞こえてくる。

 俺はゴブリンの死体を無視してさらに洞窟の奥に進む。

 少しも進まないうちに追加でゴブリンの群れが現れる。

 ゴブリンの体格は俺の三分の二程度でしかない。

 小柄なゴブリンとの戦いにおいて、狭い洞窟は俺にとっては不利である。

 自由に動き回れない環境で体格の小さなゴブリンにまとわりつかれては厄介だ。

 迫りくるゴブリンの群れに対して、俺は機先を制して突っ込むと先頭にいるゴブリンを殴り飛ばし、後に続くゴブリンを後ろに続くゴブリンめがけて蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされたゴブリンが後ろに続くゴブリンとぶつかり合って揉みくちゃになって体勢が崩れた所に素早く間合いを詰めて小剣を叩き付ける。

 揉み合って団子状に固まるゴブリンの頭に続け様に小剣を叩き込んで頭をかち割り、ゴブリン達が体勢を整える暇を与えずに小楯で殴り飛ばし、蹴り飛ばし、小剣で止めを刺していく。

 そうして十数体のゴブリンを仕留めていた所で、ゴブリン達の動きに変化が生じる。

 それまでこちらの侵攻を阻止しようとするかの様に迫りくるゴブリンの勢いが無くなったのだ。


「ギャギャギャッ!」

「ギギーッ!」


 俺と対峙していたゴブリン達が、耳障りな鳴き声を上げて洞窟の奥へと逃げ出す。

 俺はその後ろから追撃の剣を振るってさらに二匹のゴブリンを仕留めたものの、それ以外のゴブリンを取り逃がしてしまう。

 その様子に、俺は違和感を覚えた。

 そうだ。

 フローラから聞いた話を思い出す。

 フローラ達のパーティは洞窟の奥でゴブリンと戦っていて、逃げ出したゴブリンを追って奥へと進んだ所を後ろから襲われたという話だった。

 その話を聞いていた俺は、急いで追撃の為に逃げ出すゴブリンの後を追う事はせずに、その場に留まって耳を澄ませて様子を窺う。

 まだまだこの先に相当数のゴブリンが潜んでいるのだろう。

 洞窟の奥からはガヤガヤとした鳴き声が聞こえてくる。

 俺は慎重に洞窟の奥へ向けて歩みを進める。

 すると、すぐ先で洞窟がそのまま奥へ続く道と小さな枝道に分かれている場所に出る。

 枝道の先は曲がりくねっているのか、ここからでは奥を窺う事は出来ない。

 俺は、そっとしゃがんで地面を確認する。

 すると、奥に続く道への足跡とは別に枝道に入る真新しい足跡がある。

 おそらく、このまま奥へと進むと枝道に潜んでいるゴブリンが後ろから襲い掛かって侵入者を挟み撃ちにする戦術なのだろう。

 洞窟の奥からゴブリンが現れる雰囲気はない。

 間違いなく、この奥で俺が追ってくるのを待ち構えているに違いない。

 洞窟の奥のゴブリンが待ちに徹するならば、枝道に潜んでこちらを挟み撃ちにしようとしているゴブリンを先に始末するべきだろう。

 そう考えた俺は、枝道へと足を踏み入れる。

 枝道の先、角を曲がった所で挟み撃ちにしようと待機しているゴブリンと鉢合わせる可能性が高い。

 俺は意を決して曲がり角から飛び出す。


「ギョエッ?」

「ギャギャッ!」


 思った通りに、曲がり角の先に身を潜めるゴブリンを見つける。

 俺が枝道を通り過ぎた所を襲うつもりだったのだろう。

 予想外に枝道に姿を現したであろう俺を見たゴブリンが、呆然とした表情を浮かべているように見える。

 俺は、ゴブリンが状況を理解する前に棒立ちになった目の前のゴブリンを叩きのめし、後ろに控えるゴブリンの頭に小剣を叩き付ける。

 かち割った頭から血飛沫を上げるゴブリンを蹴り飛ばし、殴り倒したゴブリンに小剣を突き立てて止めをさす。

 蹴飛ばされたゴブリンに巻き込まれて転がるゴブリンに素早く近寄り、立ち上がる前にその首を小剣で切り落とす。

 枝道はそこで行き止まりになっており、ここに潜んでいたゴブリンは三匹だけの様だ。

 俺はその事を確認すると、枝道から元の道に戻って洞窟の奥を目指す。

 奥へと進んでいくと、所々に枝道や岩が突き出て暗がりになっている場所があった。

 その枝道や岩陰にはゴブリンが潜んでおり、俺が近付くと暗がりから不意を打とうとゴブリンが飛び出してきた。

 俺は、その都度襲ってくるゴブリンを叩き潰して始末しながら洞窟の奥に進んでいく。

 そうして戦っている途中でレベルアップした俺は、周囲にゴブリンがいないことを確認して『アイテムボックス』から取り出した『祝福の鐘』を使う。


「これで、この祝福の鐘も残り二つか。この調子なら、ここのゴブリンを全滅させる頃には使い切るかもしれないな」


 洞窟に入ってから使った『祝福の鐘』は二つ。

 ゴブリンはかなりの数がいるようで、俺がレベルアップを繰り返すための経験値稼ぎにももってこいだった。

 洞窟内を虱潰しにしながら、襲ってくるゴブリンを討伐していく。

 そうして洞窟の奥へと進んでいくと、少し開けた場所に出た。

 俺がその場所に踏み込むと、周囲を取り囲むようにゴブリンが待ち構えていた。

 ゴブリン達が威嚇なのかギャーギャーと甲高い鳴き声を上げる。

 いや、これは鳴き声なのか?

 ゴブリン達の様子からは、彼らが意思疎通している様子が感じられる。

 そうすると、このギャーギャーと五月蠅い鳴き声は、鳴き声ではなく彼らの言語なのかもしれない。

 まぁ、仮にそうだったとしても、理解する気もその必要も俺には無いのだが。

 俺は、周囲を取り囲むゴブリン達に注意を払いながら、その場所の状況を確認する。

 広さはそれまでの洞窟の通路と比較するとかなり広く、広場の奥には篝火らしき火が焚かれている。

 俺の入ってきた入り口を半円形に囲むゴブリンの群れの後ろに、篝火を背にして他のゴブリンより頭一つ背が高く冠の様なものを被ったゴブリンが一匹と、背丈が高く立派な体格でしっかりとした武装を身に着けたゴブリンが一匹立っている。

 その両脇には、ゴテゴテと装飾した被り物を被ったゴブリンが一匹と、ねじくれた杖を持ち襤褸をまとったゴブリンが一匹控えていた。

 その様子から、あれがこのゴブリンの群れを率いているのだろうと推察できる。

 そのゴブリンの一団を一瞥した俺は、奴らの背後で篝火が照らす物を見て仮面の奥で眉を顰める。

 灯りが灯されているその場所は、ただの篝火ではなかった。

 一段高く飾り立てられた祭壇の前に、串刺しにされて掲げられた三つの首。

 その周囲には、同じくバラバラにされて串刺しにした胴や手足が並べられている。

 禍々しくも悍ましいオブジェに、俺は吐き気を覚えた。

 人の尊厳を侮辱された気分だ。

 内心に怒りが沸き起こる。

 その時、ゴブリンの群れの後ろに立つ冠の様なものを被ったゴブリンが、剣を振り上げて雄叫びを上げた。


「ギュギャオォー!」


 只ならぬ雄叫びに身構えた俺に向かって、周囲を取り囲むゴブリンの群れが一斉に襲い掛かってきた。

 ここが正念場だ。

 俺は、手にした小剣を握りなおすと襲い来るゴブリンの群れを迎え撃つのだった。

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