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豚面転生~殺されかけた所から始まる異世界冒険譚~  作者: 剣原 龍介
第二章・駆け出し冒険者編

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第三話・新たな冒険者証

 翌朝。

 いつもの様に日の出とともに起きた俺は、いつもと違い柔らかなベッドの上で目を覚ました。

 ベッドから起きた俺は、鎧戸になっている部屋の窓を開けると朝の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだ。


「うん、良い朝だ」


 見上げれば朝焼けの空は美しく晴れ渡り、今日の俺の新たな門出を祝っているかのように思える。

 今日は、朝一で冒険者ギルドに立ち寄って新しい冒険者証を受け取る事になっている。

 それを受け取れば、俺も晴れて銀階級シルバークラスの仲間入りだ。

 新しい冒険者証を受け取った後はどうするか。

 今までは、街で一泊した後は再び森に出向いて修練と狩猟に明け暮れる日々だった。

 しかし、銀階級にランクアップするわけだし、活動の幅を広げても良いだろう。

 銀階級ともなれば、それまでとは違い冒険者としてどこかのパーティに入れてもらうもの簡単になる。

 この際、自分でパーティメンバーを募集してみても良いだろう。

 銅階級や鉄階級とは違い実力を保証されていると言っても良い銀階級ならば、どちらにしても悪い事はないはずだ。


「さて、まずは飯だな」


 俺は軽く伸びをして体を解すと、身支度を整えて手荷物をまとめる。

 階下に降りると、まだ朝早い時間だというのに宿屋の女将さんはしっかり起きて朝の支度をしている最中だった。


「やぁ、女将さん、おはよう!」

「おや、おはようさん!あぁ、朝食ならもう少しかかるから、それまでに顔でも洗ってすっきりしておいで!」


 てきぱきと朝の支度をしている女将さんの言葉に従い、女将さんの邪魔にならない様に宿の裏手に回って置いてあるタライに井戸の水を汲む。

 水を汲んだタライを抱えて井戸のそばの洗い場に移動したら、そばに立てかけてある衝立を立ててその裏で服を脱ぐ。

 魔法を使ってタライの水を程よく温めたら、『アイテムボックス』から取り出したタオルをお湯に浸して絞り、体の汗を拭う。

 体を拭いて顔を洗えば、全身がスッキリとして心地良い。

 残っていた眠気も一緒に払って気分も爽快になった所で、新しい服に着替えてタライの水を目の前の生け垣に捨てる。

 衝立を片付けてタライをもとの位置に戻して宿屋の中に戻ると、丁度良く女将さんが朝食を準備してくれていた。

 その手際の良さに感心しつつテーブルに着く。

 今日の朝食は、黒パンにハムとチーズ、ヨーグルト、野菜たっぷりのスープだった。

 そこに女将さんがもう一皿持って現れる。

 女将さんは手にした皿をテーブルに置くと俺の方を見て微笑んだ。


「お客さん、これから冒険者ギルドに新しい冒険者証を取りに行くんだったよね?階級がランクアップしたのだろ?こいつはお祝いだよ!精を付けて頑張ってきな!」


 テーブルに女将さんが置いた皿には、ホカホカと湯気を立てる出来立てのオムレツが乗っている。


「女将さん、これはどうもありがとう。美味しそうだな。いただきます!」


 俺は女将さんのごちそうしてくれたオムレツにナイフを入れる。

 オムレツを切れば、切り口から半熟のトロッとした玉子が流れ出す。

 アツアツのオムレツを口に放り込むと、玉子の濃厚な旨味が感じられて最高に美味い。

 朝から元気な胃腸は空腹でグゥッと音を立てて次の一口を催促してくる。

 俺は、たまらず次々と料理を平らげる。

 最後にはオムレツの皿に残った玉子の残りをパンで拭って、奇麗さっぱり料理を平らげて手を合わせる。


「ご馳走様でした!女将さん、すごく美味かったよ。奥の厨房にいる旦那さんにも、おいしい料理をご馳走様でしたって伝えといてくれ」


 俺が素直に美味かったと料理の感想を伝えると、女将さんは満面の笑みで頷いた。


「あいよ!その言葉を聞いたら、うちの旦那も喜ぶよ。さぁ、元気出して、仕事に行っちまいな!上手くやるんだよ!」

「あぁ、ありがとう。そのうちまた来るよ!」

「ハハハッ、期待しないで待ってるよ!」


 満足のいく朝食を食べられた俺は、女将さんとの軽妙なやり取りにも満足感を覚えながら朝食分のお代を置いて宿屋を後にした。

 宿を出た俺は、ゆっくりと朝の商人通りの喧騒を楽しみながら冒険者ギルドへと向かった。

 俺が通りを歩いていると、俺の顔を見た人がギョッとした顔で振り返る。

 仮面をした俺の顔が不審者の様に見えるのは仕方がない。

 むしろ、通報されないだけまだマシかもしれない。

 そう思いながら通りを歩いていると、威勢の良い屋台のおじさんが声をかけてきた。


「よぅ!仮面の兄ちゃんっ!どうだい?一つ買ていかないか?」

「いや、すまない。今は腹が一杯でね。気が向いたら、今度寄らせてもらうよ!」


 見れば、ここの屋台は朝食用の粥の様なものを取り扱っているようだ。

 隣の屋台の兄さんが、屋台のおじさんに良くあんな怪しいヤツに声をかけるなと言っていた。

 余計なお世話だ。

 こっちは自分の風体が怪しいヤツだと十分に知っている。

 しかし、素顔を晒せば化け物呼ばわりで石持て追われる身であることも知っていた。

 失敗したかなぁ……。

 しかし、キャラクリエイト時にCP不足だったんだよなぁ。

 やっぱりこの外見の他に、犠牲にできると思える不利な特徴が思いつかなかったのだから仕方がないか。

 こうして顔を仮面で隠していれば、皆は俺が化け物顔で騒がれるよりはまだマシな対応をしてくれる。

 冒険者として実績を積んでいる最中だし、このまま実績を積み上げていけば、仮面の一つや二つの怪しい特徴も誰もとやかく言わないだろう。

 そんな事を考えている内に、俺の足は冒険者ギルドへとたどり着いていた。


「さぁ、いよいよ新しい冒険者証を入手か……。とは言え、まだ銀階級だしな。聞いた話じゃ、銀階級や金階級ゴールドクラスはそれほど珍しい存在じゃないらしいし……。周りから一目置かれる様な出来る冒険者になるのはもう少し先かな?」


 俺は、期待に胸を膨らませながら冒険者ギルドの扉を開いた。

 冒険者ギルドの中ん入ると、既に中は人込みでいっぱいだった。

 冒険者ギルドに入って右手の掲示板の方を見てみると、朝一で掲示板に張り出される依頼から他の冒険者に少しでも先んじてより稼ぎの良い依頼を獲得するために、掲示板の前には多くの冒険者が群がっている。

 左手のバーカウンターの方では、掲示板から依頼を持ってくる仲間を待つ冒険者やパーティメンバーを募集する冒険者達が集まっており、そちらも掲示板の前とはまた違った賑やかさを放っていた。

 俺が冒険者ギルドの中へ入ると、その中から幾つか好奇の視線が向けられているのも感じる。

 俺はそれらの視線は無視して奥のカウンターに向かうと、受付カウンターに立つ受付嬢と挨拶を交わす。


「おはようございます、冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「おはよう、鉄階級アイアンクラス1級のアルト・アイゼンだ。新しい冒険者証を受け取りに来た。朝一で冒険者ギルドまで取りに来いと、ギルド長に言われているんだが?」


 俺が受付嬢に声をかけると、受付嬢は笑顔を浮かべて頷いた。


「はい、かしこまりました。お話は伺っております。上長に報告して新しい冒険者証をご用意いたしますので、このまま少々お待ちください」


 分かったと俺が頷いて返すと、受付嬢は一礼してカウンターの奥に引っ込んでいった。

 そのまましばらくカウンターの前でボウッと突っ立って受付嬢が戻ってくるのを待つ。

 俺がカウンターの前でボウッと時間を過ごしている間にも、隣では次々と冒険者達が依頼の書かれた紙を手にカウンターで依頼受諾の手続きを進めていた。

 その様子を眺めながら、俺は色々な依頼があるものなのだなと感心する。

 珍しい薬草の採取依頼であったり様々な魔物モンスターの討伐依頼であったり、そうかと思えば迷子の猫探しであったりゴミ拾い、下水道掃除などといった依頼もあるようだ。

 そういった多種多様な依頼を受ける冒険者達の方も多種多様で、立派な鎧兜の戦士ファイターや如何にも凄腕といった風体の野伏レンジャー、怪しい装飾のローブをまとった魔法使いマジックキャスターといった冒険者としての貫禄を漂わせる者達がいるかと思えば、使い古した様なボロボロの一目で安物と分かる様な装備をした一団がいたりする。

 見た目も様々で、荒事に長けた強面といった風貌の厳つい男がいるかと思えば、どこかのお嬢様かと思える様な可憐な風貌の少女もいる。


「アルトさん、お待たせいたしました」


 俺がそんな風に冒険者の様子を観察していると、カウンターの奥から戻ってきた受付嬢が俺に声をかけてきた。


「こちらが、アルトさんの新しい冒険者証になります。古い冒険者証はこちらで破棄いたしますから、お預かりいたしますね」


 受付嬢が銀色に輝く冒険者証を差し出してくる。

 俺は、鉄製の冒険者証を首から外すと受付嬢に手渡した。

 代わりに受け取った銀製の新しい冒険者証を首から下げる。

 この銀の冒険者証には名前と10級という等級の他に三つの印が刻まれている。

 そのうち二つは、戦士を意味する剣の印と魔法使いを意味する杖の印だ。

 三つ目に、新たな印として弓の形をした印が刻まれている。

 この弓の印が、野伏の資格を現しているのだろう。


「これで俺も銀階級の仲間入りか」


 俺が銀製の冒険者証を手でもてあそんでいると、受付嬢が真面目な顔で注意してくる。


「アルトさん、その冒険者証はご自身の身分を示す大切な物ですから、失くさない様に注意してくださいね。銀階級になりたての冒険者が一番危ないんです。銀階級の冒険者証は純銀製で貴金属としての値打ちがありますから、よく盗難にあう事案があるんです」

「そうなのか?銀階級となれば冒険者ギルドに認められた腕前だろ?冒険者相手に盗みを働くとか、リスクしかないと思うんだが……」


 俺が意外そうな顔をして問い掛けると、受付嬢は苦笑して首を振った。


「銀階級は確かに冒険者ギルドが一定の腕前を認めた証ですが、実力という意味ではそれほど高い階級ではありませんよ?まぁ、冒険者ギルドが実力を認めるくらいにはベテランの方達が多いのも事実ですけど……」


 俺は、言い淀む受付嬢に目線で続きを促す。


「まぁ、アルトさんは落ち着いた方だし大丈夫だと思いますけど……。たまにいるんですよ、銀階級に上がって舞い上がる人が。それで浮かれるだけなら良いんですけど、浮かれて飲み食いした挙句に酔いつぶれて、せっかく手に入れた冒険者証と有り金全部盗まれて無一文になる人がいるんです」


 そう言って、受付嬢は俺の胸元の冒険者証を指差す。


「冒険者ギルドでは冒険者証の初回発行ではお金を取りません。ですが、再発行には冒険者証の材料費や加工費を徴収します。ですが、そんな人が再発行に必要なお金を持っている事なんかまず無いですから、せっかくランクアップしたのにそういう事情で木階級ウッドクラスからやり直しになる人がいるんですよ」


 受付嬢の言葉を聞いた俺は、浮かんだ疑問を受付嬢に問いかける。


「だけど、銀階級まで上がった実力があれば、またランクアップするのはそんなん難しくないんじゃないか?」


 俺の疑問に、受付嬢は頷いて答える。


「はい、実力的にはそうですね。でも、せっかく手に入れた冒険者証を失くす事は冒険者ギルドから見れば信用の喪失です。その方の次のランクアップの評価に響きますよ。それに、銀階級に上がるには、ただ仕事をこなすだけではなくて、相応の功績が必要ですから……。もう一度、失った信用を覆して銀階級へランクアップするだけの功績を上げる必要があります。そこで挫折して鉄階級のままという人も少なくありませんから」


 受付嬢の真剣な表情に、俺はなるほどとうなずく。

 確かに、俺も金色狐を狩るという功績を上げたからランクアップできたわけだしな。

 何の功績もなく再び銀階級にランクアップする事はできないわけか。

 鉄は冒険者証を盗んでまで欲しい素材ではないかもしれないが、それが銀以上となれば話は変わる。

 これは身辺に注意が必要かもしれないな。


「ありがとう。貴重な忠告に感謝するよ」


 俺は、親身なアドバイスをくれた受付嬢に感謝の意を告げる。

 すると受付嬢はこれも仕事ですからと笑っていた。

 俺は、新しい冒険者証に手を触れると、受付嬢に再度礼を言う。

 これからどうするか。

 階級も上がった事だし、掲示板を見て仕事を探すか、先に一緒に仕事をする仲間を探してみるか……。

 冒険者ギルドの受付カウンターから冒険者ギルドの中を見回して状況を確認する。

 俺が受付嬢から新しい冒険者証を受け取って話をしている間に結構な人数の冒険者が仕事を請け負っていたようで、既に冒険者ギルドにいた人達はその数を大分減らしていた。


「よぉし!俺達の新しい冒険に出発だぁ!」


 そんな時、冒険者ギルドの広間の真ん中で威勢良く叫び声をあげて拳を突き上げる若い男がいた。

 周りには彼の仲間だろう五人の若者がいて、男の叫び声に集まった他の冒険者たちの視線に恥ずかしそうにしている。


「ちょっと、浮かれないでよ!銅階級カッパークラスとしての初仕事なんだから、油断してないでしっかりやるわよ!」


 叫び声を上げた男をそばにいた若い女が窘める。

 男の方は、上下しっかりした革鎧に腰に剣を下げた戦士風の格好をしている。

 女の方は、男より動きやすそうな軽装の革鎧に手足に丈夫そうな手甲と足甲だった。

 おそらく武闘家とかそういった類なのだろう。

 他にも同じく軽装の革鎧を付けた男で、こちらは腰に小剣を帯剣している。

 また、もう一人軽装の革鎧を身に着けた女がいて、こちらは弓を背負っている。

 さらに、体の線がくっきり出る身軽な服装に身長より長い杖を持った女。

 足元まで隠れる白い法衣の様なものを着て、少し短い杖を持った小柄な女。

 男二人に女四人の六人組だった。


「心配いらないさ!今までも俺達五人で仕事をこなしてきただろ?それに、ゴブリン程度の魔物の一匹や二匹くらい軽いもんさ!俺は、村を出る前にゴブリンを一人で倒した事だってあるしな!」


 随分威勢の良いパーティだな。

 特に男の方は一行のリーダー格っぽいけど、周囲の冒険者の目が集まっているのに自信満々だ。

 俺がその自信ある態度に感心していると、受付嬢がため息をついて隣の同僚に話しかけた。


「ねぇ、貴方、あの人達が受けた依頼ってどういう内容なの?」

「あっ、はい、彼らが受けた依頼ですか?……えぇっと、あった。こちらです」


 受付嬢は隣の同僚から依頼内容が書かれた紙を受け取ると、その内容を確かめていった。

 書類に目を通し終えたお受付嬢は顔を上げると、隣で不安げに様子を窺う同僚に声をかける。


「この依頼だけど、内容はしっかり伝えたの?」

「はい、この街の南西にある村の周辺に出没するようになったゴブリンの討伐依頼です。数は確認されているだけで二、三体。今は村外れの畑が荒らされる程度の被害ですけど、これ以上被害が広がる前に討伐をお願いしたいという内容です」


 受付嬢の二人のやり取りに興味を引かれた俺は、受付嬢に声をかけた。


「どうしたんだ?何か困った事でもあるのか?」


 俺が声をかけると、その受付嬢は首を振って書類を同僚に返す。

 そして、俺の方に振り返って微笑みを浮かべた。


「いえ、大した事ではないんです、アルトさん。依頼内容も請負資格も、どちらも銅階級向けで間違いありませんし……。ただ、ゴブリン退治って結構扱いが難しい依頼なんですよね。今回の依頼は村周辺に出没するゴブリンの退治が目的ですから、問題ないと思います」


 受付嬢の言い方が引っ掛かった俺は、その点を受付嬢に問いかけてみる。


「今回と違うと、扱いが変わるのか?」


 ゴブリンなんて、ゲームなんかだと冒険の序盤で戦う様な雑魚モンスターの定番だ。

 この世界でも、ゴブリンの評価は低い。

 駆け出し冒険者が相手をする様な脅威度の低い魔物だと、爺婆から貰って読んだ本にも書いてあったと記憶している。


「アルトさんも、ゴブリンは脅威度の低い魔物だと思う方ですか?」


 受付嬢の問い掛けに、俺は頷きを返す。

 すると、受付嬢の表情が曇る。


「確かに、人里に単独、あるいは数匹で出没する程度のゴブリンは脅威度が低いです。冒険者ギルドでの討伐報酬も安いですしね。ですが、巣を作って集団で活動するゴブリンはその脅威度が跳ね上がるんですよ。ですから、ゴブリンの巣の討伐は、金階級以上の冒険者が請け負う様な難易度の高い依頼になるんです」

「そうなのか……」


 その話には俺も驚いた。

 ゴブリン程度の弱い魔物の討伐だというのに、巣を作る規模になると一気に脅威度が上がるだなんて。

 驚きの表情を浮かべた俺を見て、受付嬢は話を続ける。


「ゴブリンの巣は脅威度が高くて、請負資格は金階級以上ですけど、討伐報酬はゴブリンの査定額なんですよね。その上、金階級の冒険者でも、巣を攻略しようとして犠牲が出る事が少なくありません。だから、冒険者の方々からすると危険度の割に報酬が低くて割に合わない不人気な仕事なんです。あの冒険者の方達も、大人しく村周辺に出没するゴブリンの討伐で済ませてくれれば良いですけど……」


 受付嬢の視線の先では、先ほどまで広間で気炎を上げていた若手冒険者パーティが出発していく所だった。

 冒険者ギルドの出入り口の扉を開いて外へと出ていった彼らの様子を見送り、受付嬢は溜息を吐いた。


「たまに調子に乗った若手が、ゴブリンの巣の討伐に挑んで帰らなかったりするんですよね。そういう事情を知らない村人が、村に来た冒険者に巣の討伐を追加で依頼する事もあるんです。冒険者ギルドでは、その場合は巣の討伐は請け負わずに冒険者ギルドに正式に依頼してもらう様に返答する事と指導しているんですよ?」


 受付嬢の言葉に、俺は頷きを返す。


「そうだったのか、分かったよ。俺もそういう事があったら気を付けよう。……しかし、そんなに違うもんなのかな?」


 俺がそう零すと、それを聞いた受付嬢は険しい表情を浮かべる。


「巣からはぐれる様なゴブリンは脅威度が低いですけど、巣を作るゴブリンの中には普通より強い個体や上位種がいる事がほとんどなんです。そういう個体になると武芸や魔法を駆使してくるのも珍しくないそうですよ。ですが、そんな個体の相手は、若手の駆け出し冒険者では荷が重い相手ですからね」


 受付嬢の説明を聞いた俺は納得して何度も頷く。

 そんな俺を見て、受付嬢が話題を変えてくる。


「所で、アルトさんは、また南の森に狩りに行かれるんですか?」

「いや、そろそろ南の森での狩りばかりでなくて、冒険者らしい仕事の一つでもしてみようかと思ってね。ここで仕事を探すか、先に仲間を探すか考えてる所だ」


 俺の返答に、受付嬢は笑顔を浮かべる。


「そうなんですね。狩りで食肉供給に貢献していただくのも大事な仕事ではあるんですが、銀階級の冒険者であれば、銅階級や鉄階級の若手冒険者と同じ様に狩りに精を出すのでなく、こちらの依頼を受ける事も検討していただけると助かります。仲間をお探しでしたら、あちらのバーをご利用ください。冒険者同士の情報交換や交流、パーティを組むためのメンバー募集なんかの目的で皆さんご利用していますから。バーテンダーの彼がその辺は詳しいですよ?」


 受付嬢は、俺から見て左手にあるバーを指差す。

 そちらのバーカウンターでは、バーテンダーの初老の紳士がグラスを磨きながら冒険者達の相手をしている。


「そうだな、アドバイスをありがとう。どんな依頼があるか見てみたいから、掲示板を見たその後で、そっちにも顔を出して見るよ」

「えぇ、そうなさってください」


 俺は、受付嬢に礼を言ってその場を離れる。

 そして、掲示されている依頼を見るために、広間にある掲示板まで歩みを進めるのだった。

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