第一話・新生活
幽閉されていた塔で殺されかけた俺が、崩壊した塔を後にして一月余りが経過していた。
塔跡を発った俺は山中で山賊が根城にしていた洞窟を見つけ、襲ってきた山賊を返り討ちにして捕らわれていた貴族の令嬢を助けた。
しかし、その令嬢を救出に来た騎士達に化け物と思われて殺されかけ、命からがら逃げだす事になってしまった。
その後、山を下り森を抜けた俺は、顔を隠すために作った仮面を被り、街へと流れついた。
俺はその街、ローゼンハイム伯爵領の領都ローゼンハイムで新たな人生の出発を誓い、冒険者となって身を立てる事にした。
冒険者になってはや一月。
今、俺はローゼンハイムの街から南へ半日ほど行った所に広がる森の中にいた。
この森は俺が塔跡から街まで辿ってきた道のりの中ほどにあり、東に行けば山賊が根城にしていた洞窟に行く事も出来る。
もっとも、あの洞窟に再び赴く事など無いのだろうが……。
さらに、この森の南には山があり、その山を越えた先の森が塔のあった場所、ケーニヒスシュヴェールト侯爵領だった。
塔のあった森からもっと南に下ると、ケーニヒスシュヴェールト侯爵領の中でも二番目に大きな街があるらしい。
俺が幽閉されていた塔の周辺には、他に目ぼしい村落などはなかった。
その事から考えても、あの塔があった場所は、わざわざ塔を建てるために森を切り開いたものだったのだろう。
こう言っては何だが、人一人を幽閉するためだけにあんな塔を建てるには、相当の財力と権力が必要だ。
俺を殺しに来たおそらく騎士だろう男の言葉、一行の主人が自分を今の領主であると口にしていた事を踏まえるに、俺の出自は領主の家系、つまりはケーニヒスシュヴェールト侯爵家であると考えられた。
すると、自分を領主だと言っていたあの男は、もしかしなくとも俺の兄弟なのだろう。
その容姿で実の両親に忌み嫌われた挙句に、一度も会った覚えがない兄弟に命を狙われるなんてたまったものではない。
まぁ、俺がケーニヒスシュヴェールト侯爵家の者だと名乗り出た所で、身の証を立てる物は何もない。
下手にそんな事をすれば、貴族を騙る不届き者として殺されるのが落ちだ。
そう考えれば、今後もケーニヒスシュヴェールト侯爵領に近付く事はないだろう。
暇を持て余していた俺は、そんな益体も無い事をつらつらと考えていた。
「なんだかなぁ……」
俺がこの森で何をしているかというと、自分の実力の確認と鍛錬だった。
最初に街を出る前に冒険者ギルドに立ち寄った時には、一人で森に行く事は危ないと止められもした。
しかし、俺はこれから冒険者としてやっていく中で、いずれはパーティを組むとしても今の自分の実力をしっかりと把握しておきたかった。
それもあって、冒険者ギルドの職員には止められはしたが、俺は一人で森に入っていた。
人目のない森の中で、俺はドルツと行った武芸の試験の時に言われた魔闘法の鍛錬をしていたのだ。
その鍛錬の甲斐もあってか、特徴『武芸の才能』を持つおかげか、俺は魔闘法による身体強化を身に着けていた。
ただ、いまだ魔刃の習得には至ってはいない。
ドルツのアドバイス通りなら、俺はまだ武器を己の体の一部の様に上手く扱えていないという事だろう。
まぁ、その辺りの事は、おいおい慣れていくしかない。
俺は、森に入ると武芸や魔法の鍛錬と狩りに勤しんで二晩過ごす。
そうして森で過ごして狩った獲物を街へ持って帰り、冒険者ギルドへ顔を出す事を繰り返していた。
それを数度繰り返した今では、俺が一人で森に行くと言っても冒険者ギルドの職員に止められる事は無くなっている。
さらに、一人で森に入って獲物を狩って戻ってこられる実力と、狩りによる食肉供給で冒険者ギルドに貢献している事を考慮された俺は、鉄階級5級から鉄階級1級までランクアップしていた。
そんな俺が狩りをする時に使っている武器は、実は剣ではなく弓矢だった。
俺は、キャラクリエイト時に取得した特徴として『武芸の才能』『魔法の才能』を持っている。
せっかくの特徴なのに、剣しか使わないのはもったいない。
そう考えた俺は、剣の他にも槍や斧、鎚といった武器の鍛錬も行っていた。
他にも冒険者ギルドで魔法の試験を担当してくれたフランに魔法についてのアドバイスももらった。
まぁ、ドルツと違ってフランには授業料として報酬を要求されたりしたが……。
そんな俺が修練している武器や魔法の中で、最も活躍している武器というのが、弓矢だった。
実は、山賊が根城にしていた洞窟で手に入れた武器の中に、かなり品質の良い強い弓があった。
その弓矢以外の武具のほとんどは、街に滞在している間に売り払って処分した。
俺はそうして残した弓矢を使って森の中で狩猟を行い、兎や鹿、猪、狐など多くの獲物を仕留めていた。
一度、大きな熊に遭遇した事もあるが、その時はこの森で修練に励んだ魔法を使って仕留めたものだ。
冒険者ギルドに持ち込んだ時にはちょっとした騒ぎにもなったのだが、そういう強力な獲物を仕留めたおかげで、冒険者としてのランクも上がったし俺自身のレベルも上がった。
実は、幾度目かの狩りを終えた所で俺のレベルが11になり、五度目となる『祝福の鐘』を使っていたのだ。
そんな今の俺のレベルは再び6まで上がっている。
「さて、こんな所かな?」
俺は、目の前の木に吊るされた巨大な猪の様子を見る。
その猪は目算で体長約1.8メートル、恐らく体重は240キログラム前後あるだろうか。
首を切られて逆さにぶら下げられたこの巨大な猪は、俺が武芸の鍛錬の一環として行う狩猟で狩った獲物だった。
今は、その狩りの獲物である巨大な猪の血抜きをしていた所だ。
猪の下の地面は掘り返されており、そこに血溜まりが出来ている。
俺は、目の前の猪の首から血が出なくなった事を確かめて、かざしていた手を下ろして魔法の使用を止める。
俺が使っていた魔法は、初級魔法の『血抜き』だ。
この魔法は、対象の血を抜き取る効果のある闇属性の魔法である。
人がその魔法の効果を聞くと、恐ろしい殺傷能力のある魔法というイメージを持つかもしれない。
しかし、実際の所は全く違う。
この魔法は生きている者には全く効果がない、死体にしか効果がない魔法だった。
要するに、狩りの獲物の血抜き処理をするためだけにあると言っても良い魔法なのだ。
こうしてしっかりと血抜きをした肉は評価が高く、冒険者ギルドに納品する時に高値で売れる。
俺は猪の血が溜まった穴に魔法で土を被せて埋め戻し、吊り下げていた猪を木から下ろして『アイテムボックス』に収納する。
『祝福の鐘』で何度もレベルダウンを繰り返している俺のステータスは、普通の人よりかなり高い。
その高いSTRを活かせば、この巨大な猪を木に吊り下げるのも木から降ろすもの楽勝だった。
「よし!今日はこの辺で終わりにして、拠点に戻って休むとしよう」
血抜きを終えた猪を『アイテムボックス』に収納した俺は、その足で森の外まで出る。
森を抜けた頃には日も暮れていて、早くも夜の帳が落ちようとしていた。
俺は、森の端にある開けた場所へとやってきた。
ここは、俺が何度も森に入る内に作った夜営の為の拠点の様な場所で、下草を払って夜営がやり易い様に整えた場所だ。
ここから少し歩いた所には小川も流れているので、水の心配もない絶好のロケーションだ。
小川から手頃な大きさの石を集めて簡単な竈も作ってあるので、火を起こすのも煮炊きをするのも楽だった。
いつもの夜営場所へとやってきた俺は、小川から汲んできた澄んだ川の水と今日の狩りで獲った兎、森で採った山菜を使って簡単な料理を作る事にした。
血抜きした兎を捌いて切り分け、剥がした皮に塩を刷り込んでおく。
この皮は、冒険者ギルドに持ち込むと買い取ってくれる。
肉を取った後の骨や食べない内臓は、少し離れた場所に魔法で深い穴を掘って埋めておく。
捌いた兎肉の一部を鍋に放り込んで山菜と一緒に煮込み、灰汁が出てきた所で掬って捨てる。
そこに街で手に入れておいた塩や香辛料を使ってスープの味を調える。
煮込みに使わなかった肉も、塩と香辛料を刷り込んでから串に刺して竈の火で炙る。
鍋がグツグツと煮える頃には、肉串にも丁度良く火が通って食べ頃になっていた。
俺は、『アイテムボックス』からパンを取り出した。
このパンは日持ちがする焼き締めた黒パンではない。
街を出る前に、わざわざパン屋で焼きたてを買った白パンだ。
焼いてから時間が経っても、『アイテムボックス』の効果で焼きたての香りを失ってはいない。
焼きたてパン特有の香ばしい小麦の香りが鼻腔をくすぐる。
「さぁて、それじゃぁ、いただきます!」
出来立ての料理を前にして、その日の糧となった兎に感謝を込めて手を合わせる。
それからスープを一匙スプーンで掬って口に入れれば、極上の旨味が口一杯に広がる。
肉串も程よく火が通っていて、焦がした表面の脂の香ばしさに食欲がそそられる。
肉を齧りパンを頬張りスープで流し込む。
俺は、そこに街で手に入れたワインを合わせる。
もちろん、危険の多い野外であまり多くを飲む事はできない。
あくまで料理に花を添える一助として嗜む程度だ。
そうしてしばらく飲み食いしていれば、自然と腹も膨れてくる。
「はぁ、喰った喰った!」
今日の夕飯も大満足の出来だった。
この生活を始めた当初は、まだまだ夜営の手際も悪かった。
特徴『前世知識』のおかげで、俺には前世のキャンプや野外活動の知識があった。
しかし、それをこの世界で使いこなそうと思えば、実践による経験が必要だった。
料理にしても鍋を焦がしたり肉が生焼けだったりしたが、今では手慣れたものでそれなりに満足できるものが食べられるようになっている。
もっとも、街の食堂や酒場で食べる腕の確かな料理人の作る料理には遠く及ばないが……。
この一月ばかりの俺の生活はというと、二泊三日で森に赴いて修練と狩猟に明け暮れ、街へ戻っても一泊するだけだ。
ずっと自分の実力の確認と修練の為にと街と森を往復してばかりいた。
久しぶりに、街でゆっくりするのも良いだろう。
それに、そろそろ冒険者らしい仕事を受けても良い頃合いだ。
そこまで考えて、俺はひとまず今日の寝床を整える。
実際にどう行動するかは街に帰ってから考えよう。
俺が冒険者として活動するにしても、仕事をするならパーティを組む必要があるだろう。
明日街へ帰った所で、都合良く仲間になる相手がいるとは限らない。
その辺りは根気良く取り組む必要があるだろう。
「はぁ、寝よ寝よ……」
俺は、枯葉を集めた寝床に毛布を敷いて、その上から外套に包まって眠りについた。
しかし、こうして野外で外套に包まって眠ろうとすると、流石に柔らかいベッドが恋しくなる。
やはり、街に戻ったらしばらく宿を取ってゆっくりしても良いかもしれない。
そんな事を思いながら、俺は眠りにつくのだった。
「あぁ、良く寝た……とは言い難いか」
翌朝、日の出とともに目を覚ました俺は、寝床を片付けて竈に火を起こす。
寝心地良く眠れる様にといくら枯葉を集めて寝床を作っていても、そこはやはり野外だ。
雨風を凌げる家の中できちんとしたベッドで眠るのとでは寝心地が違う。
寝床にするのに使った枯葉を竈の火の焚き付けに使いながら、そんな事を思う。
昨夜の夕飯で作ったスープの残りとパンで軽い朝食を済ませた俺は、いつも通り街へと帰る事にした。
「さぁ、ここから半日は歩き通しだな」
特に問題が無ければ、昼飯は街中で食べる事が出来るだろう。
スープを平らげた俺は、小川で鍋と食器を洗って夜営場所を片付けると、街へと向けて歩き出した。
夜営場所である森の途切れた辺りから街まで続く平原をひた歩く。
半日も歩けば、特に問題なく街を囲む外壁が望める。
街の南にある大門に近付けば、開かれた門の脇に守衛が二人立っているのが目に入る。
「こんにちわ!今日もお疲れ様です!」
俺は、無造作に南の大門に近付いて二人の守衛に声をかける。
「おぅ!アルトじゃないか!もうそろそろ来る頃だと思ってたぜ?」
守衛の一人が気軽に返事を返してくる。
ここの守衛とはこの一月の間に顔なじみになっていた。
それはそうだろう。
普段から仮面を被る男という特徴ある人物が、こうして定期的にこの南の大門を通るのだ。
これで守衛に覚えられない方がどうかしている。
「しっかし、いつ見ても狩猟の帰りとは思えないな。普通のヤツなら、狩りの獲物を担いでヒィヒィ言ってるもんだぜ?」
「ハハハッ、そりゃぁ、この袋のおかげだな」
「いいねぇ、うらやましいぜ!その背負い袋が一つありゃぁ、旅の苦労もかなり楽になるんだろうな!」
彼は、俺が魔法の鞄を持っていると思っているのだ。
正体は俺の『アイテムボックス』なのだが、それを明かすわけにはいかないので今背負っている背負い袋を魔法の鞄だと説明している。
そういう事もあって、俺の見た目は森に狩猟に出かけていたとは思えないほど軽装だった。
しかし、このやり取りも慣れたものだ。
守衛の男と街に入るための定型的な手続きのやり取りを行い、入市税として銅貨五枚を支払う。
「はいよ、ご苦労さん。入っていいぞ。……また明日には森に行くのかい?」
入市税を払って門をくぐろうとした俺の背後から、守衛の男が話しかけてくる。
「どうかな?森での狩りでそれなりに稼いでいるからな。今回は、しばらく街でゆっくり骨休めをするつもりだよ。それじゃぁ!」
守衛の男の問い掛けに軽く答えた俺は、大通りを抜けてその足で冒険者ギルドへと向かった。
俺は、通りの屋台で買ったサンドイッチと果実水で軽く昼食を取りながら冒険者ギルドへ続く通りを歩く。
そうして南の大門からしばらくの距離を歩いていくと、やがて冒険者ギルドの建物が見えてきた。
冒険者ギルドへ着くと表の玄関ではなく、裏手にある引き取り所へと直接向かう。
俺が引き取り所の受付に顔を出すと、受付カウンターで暇を持て余していたギルド職員と目が合った。
「ジャックの親父さん、こんにちわ。狩りの獲物を引き取ってもらいたいんだけど、良いかな?」
「おぅ!アルトの小僧じゃないか。なんだ?また狩りの獲物を持ってきたのか?」
受付カウンターに陣取るこの人は、ジャック・ジャクソン。
冒険者ギルドの職員で、この引き取り所の所長だ。
冒険者の間では、『ジャックの親父さん』と呼ばれて親しまれている。
「またデカい獲物でも狩ったのか?だったら、奥の解体場に直接降ろしてくれよ。こないだの熊みてぇな騒ぎは御免だからな!」
「分かってるよ、ジャックの親父さん。今日は、かなりデカい猪があるんだ。期待してくれて良いぜ?」
俺が引き取り所の奥に入っていくと、ジャックの親父さんも興味を引かれたのか俺の後についてくる。
引き取り所の奥で、ジャックの親父さんが引き取った獲物の解体処理をしている職員に声をかけて場所を確保してくれる。
俺は背負っていた背負い袋を下ろすと、ジャックの親父さんに言われた場所に狩りの獲物を取り出して並べていく。
「ほぅ、兎が五羽にその皮が一羽分、猪も二匹か。猪の方は、まぁまぁデカいじゃないか」
俺の並べた狩りの獲物を見ながら、ジャックの親父さんは感心したように呟く。
俺はその声に振り返ると、ニヤリと笑ってジャックの親父さんに告げる。
「まだまだ終わりじゃないよ。こいつを見てくれ」
そう言って、俺はとっておきの巨大猪を取り出す。
他二匹の猪は体長が1メートルを超える程度であることを考えると、体長1.8メートル余りのこの猪がどれほど大きいかが良く分かる。
「何だ?こいつは!デカいって言うレベルじゃぁねぇぞ?こんなデカさの猪は見た事がねぇ!アイゼンの小僧よぅ、お前さん、確か南の森に狩りに行ってるんだったな。もしかしたら、コイツはあの森でも一等デカい部類じゃないのか?」
「かもしれないな。俺もこのサイズの猪は他に見た事が無い」
ジャックの親父さんの問い掛けに、俺は頷きながら返事をする。
俺が背負い袋経由で『アイテムボックス』から取り出した巨大猪の威容に、周囲で作業をしていたギルド職員達もその手を止めて見物に集まってくる。
「おぅ、アルトよぅ!よくもまぁ、こんなデカブツを一人で仕留められたモンだな。もう、そんじょそこらの猟師じゃお前さんには敵わんな」
ジャックの親父さんは驚きながらも周囲に集まった職員に秤を持ってくるように言いつける。
狩りの獲物は、その種類と体重の重さで値段が付くからだ。
バタバタと動き始める職員達を目で追いながら、俺はジャックの親父さんに声をかける。
「所で、ジャックの親父さん、獲物はまだ他にもあるんだ。こいつなんだが……」
俺は、取り出した獲物をジャックの親父さんに見せる。
それはキラキラと金色に輝く毛皮を持った一匹の狐だった。
その狐を見た途端、ジャックの親父さんの顔色が変わりブルブルと震えだす。
「おいおい!コイツは金色狐じゃないか!」
ジャックの親父さんのあまりの驚きぶりに、俺は素直に疑問をぶつける。
「珍しいのか?」
「当たり前だ!金色狐と言やぁ、市場に数年に一匹出るかどうかの珍しい魔物だぞ!おぅい!誰か、ギルド長を呼んで来い!久々にどえらい獲物が入荷したってなぁ!」
俺の疑問に答えたジャックの親父さんは、口角泡を飛ばす勢いで手近な職員に命令を飛ばす。
怒鳴られた職員は、その命令に慌てた様に冒険者ギルドの建物の中に駆け込んでいった。
職員の後姿を見送ったジャックの親父さんが、俺に振り返って問いかけてくる。
「この近辺じゃ、もう見なくなったかと思っていたが……。まさか、お前さん、南の森だけじゃなく山の方にまで入っていったのか?」
ジャックの親父さんの問い掛けに、俺は首を振って答える。
「いいや、あの山は魔物の縄張りだって聞いているから、さすがに俺だってそんな奥までは入らないよ」
俺の返答に、ジャックの親父さんはそりゃそうかと頷く。
俺がジャックの親父さんと話をしていると、引き取り所で働く職員達が再び集まってきた。
「本当に金色狐か?」
「おう!マジモンだぜ!」
「スゲェ!俺、初めて見るよ!」
どうやら、この金色狐という魔物は相当に珍しい獲物らしい。
「こら!お前ら、珍しいモンを見たい気持ちは分からんでもないが、まだ仕事中だぞ!さっさと獲物の解体作業に戻らねぇか!」
ジャックの親父さんが野次馬と化した職員達を追い払う。
それからしばらくの間、引き取り所の中はこの金色狐という珍しい獲物に騒然とした様相を呈していたのだった。




