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豚面転生~殺されかけた所から始まる異世界冒険譚~  作者: 剣原 龍介
第一章・冒険譚の始まり

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第十話・冒険者ギルド①

 俺は期待を胸に、意を決して冒険者ギルドの中に入っていった。

 出入り口の扉をくぐると、中にいた人達の視線が俺に集まる。

 周囲を見渡してみた。

 冒険者ギルドの建物は出入り口から入った所が大きなホールになっていて、奥にカウンターが設けてある。

 カウンターには数人の男女が立っている。

 皆似た様なデザインの服を着ている事から考えて、この冒険者ギルドの職員といった所だろう。

 広場の中央には背中合わせに長椅子ベンチが数台設置されている。

 カウンター右手には奥へと続く通路と階段、右手の壁には掲示板が掲げられていた。

 左手の方には足の高い丸テーブルが数卓置かれており、奥のカウンターでは初老の男性がグラスを磨いている。

 その男性の後ろの棚には、酒でも入っているのか色々な瓶や壺が並べられているのが見える。

 立ち食い形式の食事処か?

 テーブルを囲んで食事をしている冒険者達と目が合ってしまった。

 あまりジロジロと見ていては、変に絡まれるかもしれない。

 そう思った俺は、彼らから目を離すと奥のカウンターへと歩み寄った。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルド、ローゼンハイム支部へようこそ。本日はご依頼ですか?」


 カウンターに近付くと、受付嬢らしい女性が笑顔を浮かべて問いかけてきた。

 俺は軽く首を振って答えた。


「いいえ、今日は依頼ではありません。実は、冒険者になりたいと思って……」


 俺の答えに、受付嬢は軽く頷く。


「あぁ、冒険者登録をご希望でしたか。かしこまりました。……それでは、こちらの用紙に必要事項をご記入ください」


 受付嬢が差し出してきた紙を受け取る。

 俺が書類を見ていると、受付嬢が気遣う様に声をかけてくる。


「読み書きができないのでしたら、こちらで代読、代筆いたしましょうか?」

「いいえ、読み書きはできるから大丈夫です。ご心配なく。一体、コレに何を記入するのかと思って……」


 俺は、受付嬢の提案を丁重に断る。

 そうして俺は書類に目を落とす。

 用紙には、名前や性別、出身地、特技といったものの記入欄が設けられている。

 まぁ、特段隠す必要もない。

 名前や性別は正直に記すとして、特技はどうするか……。

 俺にはキャラクリエイト時に取得した特徴『武芸の才能』『魔法の才能』がある。

 魔法は初級ではあるが、爺婆から貰って読んだ本を基に修業をしたので、一通りの属性が使える。

 属性とは、魔法の効果を分類したもので、火、土、水、風、光、闇の六属性に大別される。

 俺が森で夜営をする時に火おこしで使ったのは初級の『着火イグニッション』の魔法だし、山賊の死体を埋葬するために使ったのも初級の魔法である『土操作コントロール・ソイル』だ。

 魔法を使うためには、使う魔法の術式を思い浮かべて構築し、そこに魔力を流し込む必要がある。

 難易度の高い魔法を使おうと思ったら、相応の教本を手に入れて術式の構成を勉強するか、腕の立つ師匠に弟子入りしてその術式の構成を習う必要がある。

 その辺りは要検討だな。

 一応、街に入る時に受けた『鑑定』でも、俺に魔法技能がある事は分かっているのだし、魔法が使える事は書いても良いだろう。

 後は何と書くか。

 武器屋で剣も手に入れたし、ここは書いておくべきか?

 腰に剣を差していて、剣術が使えませんって事はないだろう。

 特段隠しておくような事でもないしな。

 少し迷った末に、俺は特技に剣術と記した。

 俺はさらさらとペンを走らせて各項目を埋めていく。

 書き終わった用紙を受付嬢に手渡す。


「はい、ご記入ありがとうございます。それではあちらで少々お待ちください」


 書類を受け取った受付嬢は、広間中央の長椅子を指し示す。

 

「分かりました。それではよろしくお願いします」


 俺の言葉に一礼した受付嬢は、手に持った書類と共にカウンターの奥へと消えていった。

 さて、冒険者証とやらはどれくらいで出来上がるのだろうか。

 俺は長椅子に腰掛けて一息つくと、周囲を観察しながら冒険者証の出来上がりを待った。

 ワクワクした気持ちを抱えながらしばらく待っていると、先程書類を受け取って奥へと消えた受付嬢が現れて俺の名を呼んだ。

 呼ばれた俺は、受付嬢の下へ行く。


「アイゼンさん、これから奥の訓練場で試験を受けていただきます。どうぞ、こちらへ」


 俺は、先導する受付嬢の指示に従ってその後についていく。

 受付嬢の後を追いながら、疑問に思ったことを聞いてみる。


「すみません。試験というのは何をするのですか?」


 すると、受付嬢はチラリと俺の方を振り返って答えてくれる。


「申請用紙に書かれた特技についての確認ですよ。冒険者の仕事は荒事が多いですから。冒険者登録の際に、武芸や魔法の心得があると偽って申請される方が少なからずいるんです。でも、冒険者のランク付けは実力主義ですから、実力の無い方が登録すると困るんですよ。実力不足で自分の命を失っても自己責任ですが、それが元でパーティを危険にさらす人っているんですよね。冒険者ギルドとしても、依頼の失敗は信用問題になりますし、そういう人のせいで有為な人材が失われる事は痛手ですから」


 俺は、案内する受付嬢が言う事に、なるほどと納得する。

 しかし、そうすると冒険者の成り手は随分と限られてくるのではないだろうかと疑問も生まれる。

 すると、受付嬢が俺の心を読んだかのように話を続ける。


「でも、安心してください。そういう実力不足の人達にもちゃんと道はあって、実力不足と判断された人でも仕事はありますよ。最初は街中で危険性の低い依頼しか受けられませんけど、そういう依頼を受けながら冒険者ギルドで戦闘訓練なんかを受ける事が出来るんです。まぁ、ある程度ですけどね。一通り訓練したら、危険度の低い地域での採取依頼なんかも受けられるようになります」


 そう言って受付嬢は扉の前まで来ると振り返った。


「こちらが、試験を行う修練場です。中に入ったら試験官役の方がいるので、その方の指示に従ってください」


 受付嬢が扉を開いて、俺を修練場の中へと誘う。

 俺は、受付嬢に礼を言いながら修練場の中に入っていった。

 その場所は、前世のイメージで言うと体育館くらいの広さで、地面の土がむき出しで天井も高い。

 修練場の中では、数人の男女が手に剣や槍などの武器を持って訓練に励んでいる所だった。

 修練場の中に入ってきた俺達を見つけた白髪の男性が、訓練している男女に休憩と声をかけながら近付いてくる。


「おぉ、そいつがさっき言っていた冒険者志望の変な仮面の大男か?」


 男性が、俺の後について修練場に入ってきた受付嬢に声をかける。

 その男性は、見事な白髪の長身でがっしりとした体格をした男だった。

 背の高さが俺と同じくらいだから、2メートルは超えているだろう。

 分厚い胸板とがっしりとした太い腕が、相当鍛えている事をうかがわせる。


「はい、ドルツさん。こちらの方が、冒険者登録をご希望のアルト・アイゼンさんです」

「そうか。ワシがお前さんの武芸の試験をするドルツ、ドルツ・ヘンダーソンだ。よろしくな」

「はい、アルト・アイゼンです。よろしくお願いします」


 相手の自己紹介に合わせて俺も名乗り返す。


「……ふむ、どうやら礼儀はできるようだし、体もそこそこ鍛えてあるみたいだな。しかし、体を鍛えておくのは、体が資本の冒険者なら当然の事だ。問題はどれくらい腕が立つかだな」


 ドルツと名乗った男は、厳つい顔に似合わない笑顔を浮かべるとバシバシと俺の肩を叩いてくる。


「よし!早速、試験してみるか!あっちに訓練用の武器があるから、それを使え!まさか、真剣で試験をするわけにもいかんしな!」


 ドルツが、俺の腰の剣を見ながら言う。

 俺は、ドルツに言われて訓練用の武器が置いてある所に向かう。

 そこには剣や槍の他に斧や戦鎚、弓といった武器が並んでいる。

 俺は並べられた武器の中から少し長めの刀身をした長剣ロングソードを一本手に取る。

 訓練用というだけあって、きちんと刃引きされた物だ。

 ドルツも俺と同じような剣を得物に選んでいる。

 俺もドルツも得物を手にして、修練場の広場の真ん中に移動する。


「さて、試験といっても、そう難しいモンじゃない。ワシとやり合って一本取ればお前さんの勝ち、見事合格だ。何か質問はあるか?」

「アンタに勝てないと、不合格で冒険者にはなれないって事か?」

「いいや、それなりに戦えるって事を見せてくれれば良い。相応の腕前があれば、評価は下がるが、まぁ、合格にしない事もない。もっとも、実力不足なら、ここで他の新入りと一緒に訓練だがな」


 ドルツはニヤリと笑って剣を構える。

 その言葉に、俺もニヤリと笑うと剣を構えた。


「なら、遠慮無くいかせてもらう」

「おぅ、掛かってきな!」


 ドルツの構えはどっしりとしていて、一目で相応の実力者だと感じた。

 しかし、こうしてずっとにらみ合っているわけにもいかない。

 俺は、意を決してドルツの間合いに踏み込むと手にした剣を振るう。

 上段から切りかかれば、ドルツは余裕の表情でそれを受け止める。

 続けて中段、下段と剣を翻して切りかかるが、ドルツの構えは崩れない。

 下段切りを受け止めたドルツの剣が跳ね上がり、俺の首を狙う。

 上体を反らしてドルツの剣をかわすと、ドルツは振り上げた剣を切り返して今度は上段から打ち込んでくる。

 一歩下がった俺は、下から剣を振り上げてドルツの剣を受け止める。


「おぅおぅ、やるじゃないか」


 ドルツは、鍔迫り合いになった俺の剣を上から押し込もうと力をかけてくる。

 しかし、俺は押し込まれるどころか、逆に圧し掛かってくるドルツの剣を押し返していた。

 剣を合わせたから分かるが、ステータスで言えば俺の方が上だ。


「負けるな、教官!」

「いいぞ、新人!」

「やっちまえ、新人!」

「そのまま押し込め!」

「教官なんかボコボコにしちまえぇ!」


 周囲で俺とドルツの立ち合いを見学している訓練生達が歓声を上げる。


「教官殿は、随分と皆に慕われているな」

「ハハハッ、違いない!」


 鍔迫り合いのまま睨み合い、俺とドルツは軽口を叩き合う。

 俺が一気に剣を押し込むと、ドルツは流れに逆らわずに飛び退って剣を構えなおす。

 次の瞬間、ドルツは雄叫びを上げて切り込んできた。

 上下左右から怒涛の如く激しい連撃が俺を襲う。

 焦ればミスを生む。

 俺は、下がりながらその攻撃を冷静に受け流していった。

 幾度目かの剣戟を受け切った俺は、返す刀でドルツに切り返す。

 ドルツが後ろに下がって俺の剣を避けた瞬間、ゾワリとした不気味な感覚を覚えた俺はとっさに頭を下げる。

 次の瞬間、俺の頭の上を何かが切り裂く。


「ほおぅ、今のは頭に一発決めるつもりだったんだが、お前さん、良く避けたな」


 見れば、ドルツの剣から赤黒い光が迸って消える。

 この感覚は魔力か?


「ちょっと、ドルツさん!いくら何でもやりすぎですよ!」


 俺とドルツの試合を見ていた受付嬢が悲鳴めいた声を上げる。

 一緒に観戦している訓練生達も動揺した様にざわついていた。


「今のは?」


 俺は、素直にドルツに問いかける。

 答えは返ってこないと思っていたが、意外にもドルツは簡単に教えてくれる。


「魔刃って言うんだ。魔力を武器に流して戦う方法さ。こいつを使える様になれれば、一流の戦士だな」


 へぇ、魔力を剣に流すのか。

 そんな戦い方があるとは知らなかった。

 これは色々応用できそうだが、練習もなしでいきなり試す気はない。

 この試験が終わったら、どこかで練習してみても良いだろう。

 俺が感嘆の声を上げると、ドルツは獰猛な笑みを浮かべる。


「自慢していいぜ?まさか、たかが試験で、この技を使うとは思ってなかったからな。その上、初見でしっかりと避けやがった」

「そりゃどうも……」


 戦う前から分かっていた事ではあるが、ドルツは相当な手練れだ。

 魔刃にしてもそうだが、実戦不足の俺とでは経験が違う。

 ステータスで勝るだけでは勝てない強さがあった。


「さぁ、どうした?怖じ気付いちまったか?」

「まさか!」


 ドルツの安っぽい挑発とも言えない言葉に、俺はニヤリと笑って見せる。

 一呼吸おいてから、俺はドルツに向けて一気に踏み込み剣を振るう。

 切り、突き、払い、受け、止め、避ける。

 攻守を入れ替えながら、俺とドルツは激しく剣を交える。

 初めは歓声を上げて囃し立てていた観衆も、事の成り行きを見守るように押し黙って観戦していた。

 幾度剣を交えただろうか。

 次第に俺もドルツも息が上がってくる。

 年の分だけドルツの方が厳しいかもしれない。

 もうすぐ決着がつく。

 そう感じた俺は、勢い込んで身構える。

 互いの剣と剣が激しくぶつかり合い火花を散らす。

 次の瞬間、ドルツの剣が消えた。

 いや、ドルツの手から剣がすっぽ抜けた?

 俺は一瞬その事に気を奪われる。

 その瞬間、ドルツは俺の手を掴み取って引き付けると共に一歩踏み込み、腰を落として俺を背負う。

 ドルツの腰が跳ね上がり、背負われた俺は大きく宙に舞う。

 背中から地面に叩き付けられて、俺は一瞬息が詰まる。

 顔を上げた時には、ドルツが俺の手から奪い取った剣を喉元に突き付けていた。


「あぁ、クソッ!参った!」


 俺が参ったと声を上げると、観衆から歓声とブーイングが起こる。

 ドルツがニヤリと笑って、倒れ込む俺に手を差し出してきた。


「中々良かったぞ、新入り。ようこそ、冒険者ギルドへ」

「まったく、手荒い歓迎だ」


 俺は、ドルツの差し出す手を素直に握り返して立ち上がる。


「まさか、あそこで投げ飛ばされるとは思ってなかったですよ」


 肩を落とす俺を見て、ドルツが肩を叩いてくる。


「まぁ、お前さんも良くやったが、年の功ってヤツだな。ワシ達は冒険者だ。お上品な騎士様になろうっていうんじゃない。剣での戦いに囚われすぎて良い事なんか一つもないさ。剣なんぞ戦うためのただの道具にすぎん。剣を道具の一つと割り切って、それを上手く使うのが優れた冒険者ってもんだ」

「なるほど、良い勉強になったよ」


 勉強になると素直に頷く俺の態度に、ドルツが豪快に笑う。


「ハッハッハッ、素直な事は良い事だな。だが、素直なだけでは海千山千の冒険者の間でやっていく事はできんから、気を付けるんだぞ!」


 俺とドルツが笑い合っていると、受付嬢が近付いてくる。


「見ていてハラハラしましたよ。ドルツさんがやりすぎるんじゃないかと……」

「おいおい、ワシだって一応ここの教官なんだぞ?加減くらいは分かってるとも」


 受付嬢が不満をぶつけると、ドルツは苦笑を浮かべる。

 そして、ドルツは俺の方を振り返って話を続ける。


「新入り、お前さんは筋が良い。お前さんなら、魔闘法も使えるようになるかもしれんな」

「魔闘法?」


 俺が疑問の声を上げると、ドルツは大きく頷く。


「魔力を用いる身体操作技法の事だ。魔力を体にまとって身体能力を高めて戦う技術だな。魔刃も魔闘法の応用技だ。もしも上のランクに上がりたかったら、魔闘法の技術も修練してみるんだな」

「魔力を体にまとうって、魔法とは違うのか?」


 俺がドルツに問いかけると、背後から声がかかる。


「そりゃぁ、全然違うわよ。魔闘法ってのは、魔力を体内で使う技なの。逆に、魔法は魔力を体外に放出する技とも言えるわね」


 その声に俺が振り向くと、真っ赤な服に身を包んだ若い女性が立っていた。

 体の線が出る様なタイトなドレス風のデザインだ。

 特徴があるとすれば、その赤いドレスの上に革の上着ジャケットを着ている事だろう。

 切れ長の瞳のキリッとした顔立ちの美人だった。

 その女性を見たドルツが、女性の名を呼ぶ。


「よぅ!フランのお嬢ちゃんじゃないか!お前さんが、新入りの魔法の試験をやるのかい?」

「えぇ、そうよ。今、ギルドに人手がいないんだってさ。だから、面倒だけど私にお鉢が回ってきたってわけ。それとお嬢ちゃんはいい加減やめてちょうだい!」

「ハッハッハ、ワシからすればフランのお嬢ちゃんはいくつになってもお嬢ちゃんだよ」


 お嬢ちゃんといわれて嫌そうな顔を浮かべる女性に対して、ドルツは呵々と笑う。

 俺は、フランと呼ばれた女性に向き直ると、さっきの発言で気になった事を聞いてみる。


「すみません。さっき言っていた魔闘法と魔法の違いって言うのは?」


 フランと呼ばれた女性は、問いかける俺をジロリと睨み付ける。


「何?これがその新入り?ふ~ん、まぁ、良いわ。魔闘法って言うのはね、普段は体から自然に漏れ出る魔力を自分の体内で留めて循環させる事で身体能力を強化する技法なの。それに対して、魔法は魔力を放出して意志の力で世界に干渉して超常現象を起こす技術なのよ」


 そう言ったフランは、ドルツの方を指差す。


「魔法は外から観測する事が出来るから学問になったけど、魔闘法は魔力を体内に留めるから観測する事が出来なくって今でも職人技の域を出てないわ、ドルツさんみたいにね。まぁ、それがある程度の力量の魔法使いは多いのに、魔闘法の使い手が少ない理由ね」


 フランに指差されたドルツは、困ったように笑う。


「こらこら、フランのお嬢ちゃん、気軽に人を指差すもんじゃない」

「何よ、一々五月蠅いわね」


 ふくれっ面を浮かべるフランの話が一区切りついた所で、受付嬢が口を開く。


「フランさん、それでは、さっそく魔法の試験をお願いできますか?」

「ハァ、分かったわよ。……それじゃ、さっきからそこで私達の話を聞いているアンタ達!悪いけどアンタ達も、ちょっと手伝いなさい!」


 フランは、俺達が話しているのを遠目に見ていた訓練生達に声をかける。


「あっちに標的用の藁人形があるから、チャッチャとそいつを運んできて!」


 フランの言葉に文句を言う訓練生達だったが、フランは容赦なく一括する。


「一々うっさいわよ!修練場で訓練させてもらっておいて文句を言うな!魔法の実演が見れれば、アンタ達にも勉強になるでしょ?グチグチ言ってないでサッサと動きなさい!」


 訓練生達は、渋々とフランの言葉に従って標的となる藁人形を修練場の真ん中に設置していく。

 しばらくして、標的になる藁人形が並べられた。

 人形の大きさは2メートル無いくらいで、丁度人間サイズといった感じだ。


「さぁ、標的も用意できたことだし、さっそく試験を始めましょうか」


 フランは、標的用の藁人形と俺を見比べながら試験の開始を宣言する。

 こうして俺は、武芸の試験に続いて魔法の試験に挑むことになったのだった。

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