23.再会
「フェインどの、ジーク殿……エルフの里を救ってくださりありがとうございました」
エルフの里での宴会も終わり、俺たちは冒険者ギルドへ今回の依頼の報告をするべく旅立つことにした。
だが、来た時とは大きく違うことがいくつもある。一つは……
「それで……本当にヴァリスを連れて行くということでよいのですね」
「はい、俺たちにはヴァリスさんの力が必要なんです」
「ああ、俺たちの仲間は彼女じゃないと務まらない。それにこいつはお姉さん系が好きみたいだからな。結婚相手としても完璧だろ?」
「ヴァリスさんの親の目の前で、そういういじりはやめようよ……」
彼女と二人っきりのときについ本音を吐いてしまったことをはいてしまったことを思い出して恥ずかしくなる。
そんな俺たちのやりとりを見て、エルフの長もなにかを勘違いしたのか、にやりと笑う。
「あの子はかっこつけるところがありますが、努力家でよい子です。よろしくお願いします」
「何恥ずかしいことを言っているの。私はアニスとは違って心配させるようなことはしていなかったでしょ」
エルフの長と話していると使い古された革袋と弓矢をみにつけ、旅支度を終えたヴァリスがやってくる。
その姿を見てエルフの長は少し寂しそうに笑う。
「何を言っている。子供が旅をするんだ。心配しない親がいるはずがないだろう?」
「……」
予想外の言葉だったのか、大きく目を見開いてかたまったヴァリスの手を握ってエルフの長は言う。
「おまえさんは昔から手がかからんかったこともあり、確かにアニスのことばかり見ていたかもしれない。だが、お前のことも同じくらい大事におもっているにきまっているだろう? だから、必ず帰ってこい。そして、里のみんなに外のことをはなしてやってくれ」
「……それはどうかしらね。だって、私たちは影の英雄をめざしているの。エルフの里にいてもうわさ話がきこえてくるくらい活躍してみせるわ。改めてはなすことなんてきっとないわよ」
「そうか……楽しみにしているぞ」
その二人のやり取りを見ると俺も故郷でのやり取りを思い出す。近すぎて親の本心を素直に受け取るのは難しいのだ。エルフの長もきっとヴァリスはきづかなかったけど、アニスさんと同じくらい大切に思ってくれていたのだ。
母も俺が勇者になったときにおめでとうと言ってくれたけど、影ではテレジアに頼むと言っていたことなんて知らなかったように……
「ジーク……俺も色々とおちついたら、ちょっと実家に帰ってみるよ」
「ああ、そうした方がいい。絶対喜ぶぜ」
ジークが嬉しそうに笑ったのもきっと気のせいではないだろう。そして、ヴァリスさんとエルフの長の話を見守ってから馬車へと乗りこんだ。
馬車の中は自分たちのほかは一つの冒険者グループと、フードをかぶって眠っているのか、顔をうつむかさせている人影くらいだ。
「思ったよりかすくないんだね……」
「なんかエルフの里がめずらしいからって結構な数の冒険者が残ったらしいわよ。。よその人間なんてめったに来ないからって食堂のエルナさんが気合をいれていたわ」
「まあ、普段はエルフの里なんていけないからな。珍しい素材もあるし、冒険者たちの血が騒いでいるんだろうよ」
確かに俺はゲームでどんなものかしっていたけど、初めて来る人からしたらよい刺激だろう。
「そういえばアニスさんに会わなかったけど、どうしたんだろう?」
「俺たちが選ばなかったから気を悪くさせてしまったかもしれないな……」
だとしたら、本当に申し訳ないことをしたと思う。だけど、俺もジークも二人で話し合った結果なのだ。
そんなふうに責任を感じていると、ヴァリスはなぜかくすりとわらう。
「大丈夫よ。あの子は私みたいにきっかけをまったりはしないわ。チャンスを勝手につかむタイプなのよ」
なぜか、楽しそうな表情でフードをかぶっている乗客を見つめながらそういうのを俺とジークが不思議そうにおもうことしかできなかった。
「ええーー アンドラスを倒したって本当なんですかぁ!!」
冒険者ギルドに戻った俺たちに受付嬢の驚きの声をが響く。その証拠にとエルフの長からもらった書面を出すと彼女は再度驚きの声をあげた。
「ほんとうだぁぁぁぁぁぁ!! すごい、すごいですよ!! やっぱりフェインさんの方が本当の勇者なんじゃないですか!!」
「いや、それは言い過ぎだって。だって、シグルトたちだって活躍しているでしょ」
「え、フェインさん聞いていないんですか? あの人たちはファフニールの残党に倒されて行方不明ですよ」
「え?」
「な?」
受付嬢の言葉に俺とジークが驚きの声をあげる。だって、シグルトだって主人公候補なのだ。それに剣の腕前は本物だった。確かに俺がメインでたたかっていたから実戦経験は本編よりも少なかったかもしれないけど、テレジアがいれば負けるはずはないのだ。
「なにかの間違いじゃ……」
「間違いじゃねえよ、お前のせいだ、フェイン!!」
それは地の底からあふれ出るような怨嗟の声だった。振り向くとそこにいたのはずいぶんとぼろぼろになったシグルトたち三人だったのだ。
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