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20.アンドラスの必殺技

 七大罪『傲慢のアンドラス』の必殺技は当たった相手の生命力を喰らいつくす魔法と魔力をたかめる魔剣のあわせ技である。

 その効果はまさに一撃必殺。主人公だろうがなんだろうが、当たれば即死亡という初見殺しである。

 ただ、彼はその傲慢な性格から七大罪以外の全てを見下しており、本当に追い詰められたときしかつかわないため俺はやつを挑発して倒したと思ったのに……



「何をしようとしているかわからないけど、そんなのさせないよ!!」



 アニスさんが矢を構えてアンドラスと対峙する姿が、かつてオークと命をおとしたジークと被って……

 アンドラスは氷の矢をその身に受けてわずかに動きがとまる……だけど、それだけだった。



「おい、フェイン!?」

「させるかぁぁぁぁ!!」



 激痛を感じながらも俺はアンドラスの一撃を受け止めようと剣を手に取って彼女たちの間に割り込んで……



「ばかがぁぁぁ!! かすめただけですべてを喰らう我が必殺技の前に無様な姿を晒すがいい!!」

「俺はもう二度と目の前で仲間を殺させない……そう誓ったんだ」



 その一撃を完全に受け流して攻撃を無効化する。そして、信じられないとばかりに目を見開いているアンドラスの魔剣を持つ腕を返す刃で斬り捨てる。

 自慢の体毛が燃え尽きたその腕は血をまき散らしながら宙を舞っていく。



「なんで……この技ははじめてのはず……」

「俺がなんでわざわざおまえと一騎打ちをしたと思う? お前の剣技に慣れるためだったんだよ。そうすれば見切りやすくなるからね」


 そう、奴が魔剣を使うことを想定して俺は今回の作戦を組んでいた。そのために俺はこいつと一騎打ちをして、剣術のレベルや癖などに対応できるようにしていたのである。

 正直言えば、もっとやりようはあったと思うし、主人公ならばもっと圧倒的な力で魔剣を封じたまま倒しただろう。

 だけど、主人公ではない俺に主人公補正はない。だからゲーム知識という武器で最悪を想定しながら戦うしかないのだ。



「ああ……くそ、俺様の夢が希望が……他の七大罪どもを見返すはずが……」



 悔しそうに宙をみつめる彼が見たのはだれだったのだろう。やがて彼の瞳からその生命力が消えていく。

 それと同時に、彼からはなれた指にはめられていた『復活の指輪」も砕け散った。ゲームではアンドラスは使っていなかったその指輪を誰がはめたんだ……そう考えていると激痛が走る。



「お前はまたそうやって自分を犠牲にしようと……」



 抱き着いてきたジークの仮面越しの泣きそうな声に俺は胸が痛くなる。だけど、彼は勘違いしている。



「ちがうよ、ジーク一か八かじゃない。俺は自分を犠牲にしようなんて思っていない。俺はもう、勇者じゃないからね……だから、俺なりのやり方で、かならずできると思ったからやったんだよ」

「どういうことだ?」



 俺はしっかりと仮面越しの彼に瞳を合わせて見つめる。テレジアと旅をしていた時やジークと合流した直後は心配させているという罪悪感があったから、ちゃんと見れなかったけど、いまならばはっきりと言える。



「俺には君やアニスさんみたいなすごい才能はない。だけど、今回みたいに俺は俺のやり方で影の英雄になれるって確信できたんだ。心配はかけたかもしれないけど、アンドラスの魔剣も必ず見切れるって確信してたから踏み出したんだよ」

「そうか……お前はようやく……」

「うん、自分の道が見えてきたよ。それもジークと……テレジアのおかげかな」



 ほほ笑むとなぜか彼は顔をうつむかせる。嗚咽が聞こえてくるのは気のせいだろうか……

 やっぱりかなり心配をかけていたんだろうな……



「ねえ、お姉ちゃん。この二人ってできてるの? 絵本で読んだボーイズラブってやつなの……♡」

「今とてもよいシーンだからだまってなさい」



 エッチなものを見るようなアニスの言葉となぜかにやにやとしているヴァリスさんに、はずかしくなったのかジークが慌てて離れる。



「別に男同士だからいいじゃないか」

「うるさい!! なんできづかないんですか、この人……そんなに私の胸って小さい……?」


 なにやらぶつぶつといっているジークを愛しく思いながらアンドラスの魔剣を回収する。

 これは悪用されたらまずいからね……あとは残党狩りだ。



★★★


「あーあ、やっぱり最弱のアンドラス君じゃあだめだったかぁ……あの指輪は貴重なものだったんだけどなぁ」



 遠くで激戦を見ていたフードをかぶった人影はあきれたようにつぶやく。そして、フェインたちが去ったのを確認しアンドラスの死体の前で手をかざす。



「我が名は原初のシン。大罪よ、我がもとに帰れ」



 するとアンドラスの体が輝きなにかが吸われていく。



「ふふ、ようやく一つ目か。それにしても神も余計なことをするなぁ……勇者候補が偶然死んだとおもったのにあんな狂人がいるなんて……。本来は存在しなかったぼくへの対抗策だったのかな?」



 にやりと笑いながら、フェインたちがさったあとを見つめる人影。そこにエルフと冒険者の混合パーティーがやってくる。


「この戦いが終わったら、エルフの里を案内してやろう、感謝せよ。人間」

「じゃあ、俺たちはとびっきりの娼館をおしえてやるよ、お前らそういうのには疎いんだろう? はまるぜ」


 そんな会話をしていた連中だが、フードの人影に気づくと警戒心をあらわにする。



「お前俺たちの仲間じゃないな? その死体をどうするつもりだ?」

「ん、ああ。別にもうこれには興味はないんだけど……でも、ちょうどいいや、新しい力を試させてもらおうかな……生命喰らい(ライフイーター)」


 全てを喰らいつくす魔力が放たれると共に絶叫がひびくのだった。





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