18.VS獣人
「ははは!! 下等なエルフと人間に我ら獣人の力を見せてやれ!!」
「「うおおおおおお!! 皆殺しだぁぁぁ!!」」
「俺たちの作戦がばれてたのか?」
完全なる待ち伏せを喰らい驚いている俺たちに獣人たちが襲い掛かって来る。接近戦が得意なのは俺であり、大ピンチなのだろう。
だけど……
「落ち着けよ、フェイン」
「大丈夫だよ。エルサールのことがあったからね。これくらいは想定内だ!! 俺がこいつらの相手はする!! みんなはサポートを頼む」
「悪いけど、あなたにだけかっこつけさせないわよ!! アニス!!」
「任せてお姉ちゃん!! こんなやつらただ動くだけの的だよ!!」
俺が獣人たちに斬りかかると追撃とばかりにヴァリスさんがレイピアをふるって牽制する。
そして、やつらがビビッて、少しの隙ができれば十分とばかりに後ろから魔力矢が飛んできては人狼たちを射抜いていく。
それでもアンドラスまで襲ってきたら危なかっただろう、だけど、そうはならないということを俺は知っていた。
そう、 俺は想定外の事には弱い……だから、想定しておけばいいのだ。エルサールの時から思ったが相手には未来予知か、俺と同じゲーム知識をもつやつがいる。ならば……それを前提に警戒しておけばいい。
ゲームと同様に奇襲すれば、その奇襲場所に敵が待ち伏せしているとそうていすればいいだけである。
「は!! お前ら何をやってるんだ? まさか俺様の手を煩わせるつもりじゃないだろうなぁ」
「「ひっ!!」」
不快そうに残った二匹の部下を睨んでいるアンドラスを見て、確信する。こいつはやはりゲームと同じ傲慢なやつだ。
俺たちのような雑魚一人で倒せると思っているから部下の手助けなんてしないのだ。ならば勝機は十分にある。
「俺をなめてもらっちゃこまる!! ファフニールを倒した勇者フェインだ。お前ら獣人なんて敵じゃないんだよ!!」
「お前がファフニールを殺しただと?」
挑発するように恐怖にゆがめながらきりかかってくる獣人たちを切り捨てるとそのまま返り血のしたたる剣をアンドラスにつきつける。
「ああ、なかなか手ごわかったよ。だけど、お前は敵じゃなさそうだね、ファフニールは言ってたよ。七大罪最弱はアンドラスだってさ」
「な……貴様ぁぁぁぁぁ!! 俺様を侮辱したな!! 俺様は雑魚に馬鹿にされるのが何よりも嫌いなんだよ!!」
俺の言葉にアンドラスが顔を真っ赤にして憎悪にも満ちた瞳でにらみつけてくる。予想通りだ。あとはもっと相手を怒らせて俺の望んだ戦い方に誘導しないと……
震える自分の心を必死にふるわせて、鏡で必死に練習した不敵な笑みを浮かべる。
「はは、ならどっちが雑魚か決めようじゃないか、みんなは手を出さないで!! 一騎打ちでこいつは仕留める!!」
「ちょっと……相手は七大罪なのよ?」
「……フェインにはなにか考えがあるはずだ。そうだよな?」
「強い敵と……いいなぁ」
ヴァリスさんを制止してくれるジークに感謝しながら大丈夫だとうなづく。
正直なところアンドラスが七大罪で最弱なのは事実だ。だけど、それは七大罪の中でも弱いというだけであって、強敵なのは間違いがなく、一騎打ちで勝てるかもわからない。
だけど、今のあいつには一撃必殺の魔剣まで持ち出している。あれを俺以外がくらったらやばいのだ。
そして、可能ならば魔剣は使わせたくないのが理想。ゆえにさらに煽るために人狼の持っていた剣を拾って構える。
「随分と立派な剣を持っているようじゃないか。最弱君。俺はハンデとしてお前の部下の持っていた剣で戦うよ。これで対等だろ」
「くだらんことを!! まぐれでファフニールを倒したからって図に乗るなよ!!」
アンドラスは死んだ部下の剣を持っているうでを踏みつけるとぐしゃりという嫌な音と共に血しぶきが待って剣を拾う。
「身の程知らずが!! 貴様ごときこの剣で十分だ。四肢を切り刻んで目の前でそこのエルフ共が傷つくさまをみせてやろう!!」
すさまじい速さで、アンドラスがきりかかってくるのをかろうじで止めると手がしびれる。
人間を超えた身体能力から繰り出される一撃は早く鋭い……だけど、俺は負けるわけにはいかないのだ。勇者じゃないけれど、仲間を守ることくらいは絶対やって見せる。
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