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15.フェインの影響

 エルフの里を後にして馬車まで手配してもらった俺たちは冒険者ギルドへと向かっていた。これから冒険者ギルドで皆の協力を得るのだが……



「俺はうまくできるかな、ジーク」



 二人っきりということもあり、思わず弱音を吐いてしまう。すると彼はいつものように仮面越しに苦笑した気がする。



「大丈夫だって言ったろ。お前は元とはいえ、勇者なんだ。アニスみたろ、目を輝かしていたぞ。それだけ慕われているんだよ」

「でも、俺にはジークやアニスさんみたいなカリスマはないよ……勇者じゃなくなった俺なんて……痛い、なにすんの!?」



 そして、主人公でもない。だから不安が消えないのだと訴えたが……なぜか肩を殴られた。


「俺は怒っているんだよ」

「え、なんでさ……別に変なことは言っていないでしょ」

「尊敬している人間をけなされたんだ。怒って当たり前だろ。いい加減にしろよ。フェイン。謙虚なのは美徳だが、限度を過ぎれば嫌味だぞ。俺は知っているんだ。お前が勇者を騙るためにどれだけがんばっていたのを……エルフを救ったのだって、俺やヴァリスさん、アニスさんがいたからじゃない。お前が判断し、行動したから救えたんだよ」

「ジーク……」

「それにな……別に俺みたいにやる必要はないんだよ。お前はお前のやり方でやればいい。それでなんかあったら俺やヴァリスさんやアニスさんもフォローしてくれる。だから、少しは気を楽にしろっての」



 怒ったような拗ねているようなそんな言葉に少し心が軽くなる気がする。そして、俺はテレジアの事を思い出す。



「ふふふ」

「何がおかしんだ?俺はまじめに叱ってるんだぞ」

「いや、ごめん……テレジアにも同じことを言われててさ……やっぱり兄妹だなって思ったんだよ。なのに、僕はいっぱいっぱいでろくに言うことを聞かなかった。最低だよね」

「……」



 今思えば彼女はジークが死んでからずっと俺を心配してくれていたのだ。自分がつらいにもかかわらずだ。

 なのに俺は大丈夫だからって言い続けてろくに話をきくこともなかった。勇者という重荷から解放され、ジークがいることでようやく自分のことが考えられるくらいに余裕ができてきたのかもしれない。だけどさ……それは免罪符にならないだろう。



「今度さテレジアに会ったら色々と謝りたいと思うんだ。どうやったら機嫌をなおしてくれると思う」

「……っ、そうだな。あいつの大好物でもおごって延々と愚痴をきいてやれ、そうすればきっと機嫌を直すさ」

「そうだね……テレジアはさ、すっごい良い子になったんだよ。治癒だってとても上手になったし、誰にも優しくて……聖女っていえばテレジアっていうくらいにね。ジークにもみせてあげたいなぁ」



 なぜか、一瞬息をのんだ彼を見て、自分の言葉にちょっと反省する。

 守護者というのはあくまで一時的に他人の体を借りている状態だ。いつまではかわからないが、彼がここにいる時間はそう長くはないだろうし、結局別れるのならば、テレジアには会わせない方がいいかもしれない。懐かしさのあまりちょっと調子にのってしまったようだ。

 ジークも何も言わないで考え事をしているようだ。ちょっとしんみりとしながらも街へと向かうのだった。



「あ、フェインさん。エルフの里はどうでした?」

「ちょうどいい。急いで頼みたいことがあるんだ。これをエルフから預かってるから見てもらえるかな?」



 ジークに宿の手配をたのみ、冒険者ギルドにつくとちょうど顔見知りの受付嬢がいたので早速本題にはいる。



「え、これってエルフの長しか使えないっていう契約書ですよね……世界樹の枝で作られてて、嘘偽りを変えないっている伝説の……なんでこんなものを? 博物館でしかみたことないですよ!!」

「あはは、色々あってね」



 ヴァリスさんにこれがあった方が話が早いと渡されたけどそんなにすごいものだったんだ……

 ちなみに中身はエルフの里からの救援要請である。



「なるほど……エルフの里を奪取した彼らはついに『七大罪』と決戦をする覚悟ができたのですね。ギルド長と相談してきます。少しここで待っていてください」

「うん、お願い。冒険者の力が必要なんだ」



 慌てて奥に行く受付嬢を見送りながら、次を考える。これで一つ目はクリアした。次は冒険者がどれだけ集まるかである。

 正直七大罪の悪名は強敵だ。後ろに強力な冒険者がいれば皆も安心するのだが、どれだけ仲間を集めれるかは俺の名前にどれだけの信頼があるかがかかっているのだ。



「おお、わが生涯のライバル、フェインではないか、なんでこんなところにいる……?」

「ん? アッシュじゃないか。君こそ……まだ冒険者を続けていたのか?」



 振り向くと俺と同い年くらいの魔物の皮鎧をみにつけ、腰に禍々しい魔剣らしき立派な剣を腰につけた青年がいた。

 彼の名前はアッシュ。勇者をやっていた時にかかわりのある冒険者であり、ピンチを助けた相手である。



「ふ、何を言っている!? Aランクであり、この街最強の冒険者である我がやめるはずがないだろう!!」

「え、でも君は……」


 ゲーム本編ではジークの圧倒的な才能をみて心が折れて冒険者をやめていたはずだ。

 なのに、彼は今だ冒険者をやってつづけているどころかそのランクは原作よりもはるかに高いAランクとこの街最強になっているのだ。



「そんなことよりも、テレジアさんはどこだ? 貴様がいるなら彼女もいるはずだろう?」



 ゲームとは違う転換に驚きながらもそういえば彼はテレジアに好意をもっていたなと苦笑する。



「あはは、ちょっと今は別に行動しているんだ。いや、見放されたというべきかな……」

「何を馬鹿なことを言っている!! あれだけ貴様のことしか考えていない彼女がそんなことをするはずはないだろう。何がきっかけで喧嘩したかしらんがとりあえず謝っておけ。俺はてっきりフェインと結ばれて里帰りに来たのかと思ったのだがな……」

「いや、聖女と俺じゃつりあわないよ……昔から変な勘違いをしてるよね……」



 彼はどうやら俺とテレジアの関係を勘違いしているんだよね……まあ、それはともかくだ。



「ちょうどいい。アッシュはここを拠点にしているんだよね。一つ厄介な依頼があってさ、人を集めるのを手伝ってくれないかな?」

「ふっ、任せよ、このアッシュ、貸しは忘れるが、借りは何百倍にもして返す男だぞ」


 ちょっと大丈夫かなぁとおもいつつも協力者を得たのだった。本当にこの街最強かはわからないけど、現地の冒険者の協力はありがたいものだから……



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