1-5 憑き纏うモノ エピローグ
エピローグです。
事件から、数日が経った日の夕方。
オカルト研究会の部室に、琢磨は改めて足を運んでいた。
幸いにも腹の傷は大したことはなく、激しい運動を一週間は控えれば、特に問題はないとその日に退院できた。
部室のドアをノックする。コンコン。
一瞬の間を置いて、扉の向こうから小さな声がした。
「……入っていい」
部屋の中は相変わらず薄暗く、どこか独特の雰囲気が漂っている。使い込まれた机、本棚に並ぶ怪しげな本、そして壁にはオカルト関連の資料や心霊写真が貼られていた。
椅子に座っているのは、黒髪のロングヘアを持つ瞳子。彼女は琢磨をじっと見つめていた。
「……元気?」
「元気ですよ」
「…………そう」
言葉少なげに返事をする。
「それで、どうする……?」
「どうする、とは?」
「入部」
「そういえば俺、体験入部でしたね。もちろん入りますよ」
琢磨は軽く笑って答える。
「…………聞きたいことがある」
「はい、なんでしょう」
「まだ、オカルトは好き?」
「もちろん。UMAを見るまでは死ねませんから」
冗談めかして答える琢磨の返答に、迷いはなかった。
「……ようこそ、オカルト研究会へ」
瞳子は静かに言った。
「不束者ですが」
軽く頭を下げる。
「そういえば、あれから夜野さんは大丈夫ですか?」
「あの後、連絡があった。体調は回復したって」
「それなら良かったです」
琢磨はホッと息をつく。
「……佐藤翔の霊も、もう現れていないんですよね?」
瞳子は静かに頷いた。
「ええ」
瞳子は琢磨の目を見つめた。
「この世には、多くのオカルトがある。私たちは、それを調査し、必要なら解決する」
瞳子の目が、琢磨を見つめた。
「……これからも、よろしく」
「こちらこそ」
こうして、琢磨は正式にオカルト研究会の一員となった。
山田琢磨と神崎瞳子のオカルト日々は、まだ始まったばかり。
憑き纏うモノ 完結です。良ければご感想などお待ちしております。