ことのは
とある水曜日。
あの子が長期休みの前に「かの人」に言い放ってしまった一言。それは、何の予兆もなかった。
あの子は「かの人」に言った。
「貴方も信じられない」。
まあ、有体に言えば、白うさぎは使えないチームリーダーと言われても仕方ないと、正直思う。
俺から見ても、神輿以外の意味はないな、とは思ったが、ネズミに会いに、遠路はるばる来るわけで、神輿の重要性は理解していた。
カリスマ性というのだろうか。少なくとも、俺にはない。
だから、我慢できた。
まあ、根本的に言葉が足りないし、誤解されても構わないというスタンスなチームリーダーだ。リーダーの力量という点では、人選ミスと言われても仕方ないだろう。
相手の思考を汲み取るタイプのサブリーダーをつけるなどをすればよかったんだろうが、あいにく、誰もいない。東京は相変わらず観て見ぬふりしかしない。
ただ、あの子のそのセリフの根源は、完全な「かの人」への誤解と、単なる行き違いだった。
俺は、第三者だから、それがわかっていた。
だから、あの子にそれは言った。しかし、無駄だった。俺は、心の風邪を甘く見ていた。あの子の中では、
何か、ずっとわだかまりがあったのだろう。俺に対しても。
これが、あの子が長期休みに入る3日前の出来事。俺は傍で見ていたにもかかわらず、止められなかった事件。
だが、あの子の長期休み前の最終出社日の前日の夜「次長」に呼び出された部屋で「かの人」は泣いていた。
不謹慎だが。
目が真っ赤で、本当に「白うさぎ」に見えた。
それは、庇護欲、だったのか。
何かに駆られた俺は、だから、あの子が誤解していることを教えた。余計なお世話だとはわかりきっていたのに。
俺は無駄が大嫌いだ。
いわゆる、効率厨である。
だが、これ以上「かの人」が泣くのも、悲しむのも、見続けることは、それは、俺のプライド以上に嫌だった。
長期休暇直前の当日。
「かの人」と、あの子が何を話したのかはわからない。
ただ、昼休みに喫煙所にいるであろうと当たりをつけ「かの人」に会いに行った。そして、あの子がいる場所を伝えた。あとは知らない。
今、思えば、その一回しか俺は屋上の喫煙所には行かなかったな。タバコ吸わないし。
ただ、就業時間後に2人で笑っていたことから、誤解は解けたと思っている。
それは、今から2年前。
くだらないお節介を焼いたことは、後悔していない。
ただ、くだらなすぎる、不思議な気分だった。




