78番【愚者】
4月30日
今日は3年前の大雪の日に自殺した母の、誕生日だった。
俺はプライベートはウェットな人間だ。
仕事は限りなくスーパードライだが。
とはいえ、今は何かをするつもりも気力も湧かなかった。
墓参りとかも、何もしたくない。
ただ、選べるのであれば、このままいなくなってしまいたいとは思った。「死」とは「恐怖」であり「甘美」だ。
でも、そうはいかない。
退職届提出は5月10日提出で話が済んでいる。
それまでにいろいろと片付けをしないとならない。
やるべきことはやらないといけない。
迷惑をかける人数を考えると「自殺」含めて、自分勝手なことは、あまりできなかった。
後片付けとして、まずは10年連れ添った相手と離婚した。
これは相手からの申し出であり、初めに言われたときは、この仕事やら昇進昇格試験で忙しい時期に邪魔するな!としか、正直に思わなかった。
だからこそ、離婚を申し出られたのだろう。
間違いなく足を引っ張るタイミングとしては最適解だったと賞賛する。本当にクソッタレな、ジャストなタイミングだった。
今でも、恨み節が腹にある程度には邪魔するのには素晴らしかった。いい交渉人になれそうだな。クソが。
とはいえ「知るか」で終わらせたかったが、そうはいかない。ただ、裁判所にでもいけ、俺に面倒かけるな、が俺の偽らざる本音であった。
しかし、長年別居していたとはいえ、一応の礼と情はある。家族だという意識はあった。
そこで、とりあえず相手の家に移動して離婚届にサインした。何故か、青ボールペンで。
なんとなく、これでこの人と赤の他人か、と思うと寂しさと、自由だと思う気持ちが内混ぜになった。
それくらいでしか元配偶者に対する熱量がなかったといえばなかった。
俺が欲しいものは、仕事であり、俺自身の存在意義だから。
そう、少なくとも今の俺の居場所とは成り得なかった。




