ラング渾身の舞
「ほれお主、童のせいだという腕を出して見ろ」
「俺か?」と突然言われ戸惑うギルティス。
「そうじゃ。今でも痛むのじゃろ?このケットシーの回復魔法はなかなかのものじゃ。お主の腕も治るやもしれぬ」
「ずいぶん古い傷だぞ。医者に見せても難しい顔しかされず、もう諦めているんだが」
「まぁ、ものは試しじゃ。諦めているなら駄目だったとしても問題なかろう」
「・・・・そうだなぁ。今まで思うように動かなかった腕だ。可能性があるなら賭けてみるか」
「任せるにゃ。と言いたいけど、上手くいかなかったら申し訳ないにゃ」
「いいさ、いいさ。どーんとぶつかってくる感じで頼む」と開きなおったかのようなギルティス。
「上手く治せたら美味しいごはんが食べたいにゃ」とちゃっかりリクエストするラングに、
「あぁ、肉でもなんでも美味いもん食わせてやるさ」と約束をする。
「じゃあ行くにゃよ。今回はかなり気合を入れていくにゃ」と腕まくりするラング。(あれっ?ラングの服は半そでじゃぁ・・・)
『すぅっ』と息を吸ってゆっくり歌い出す。横で聞いていても気持ちが穏やかになるような心地よい歌だ。
歌に集中しているラングの周りに光が集まる。ゆっくりと舞始め、まるで雲の上を歩いているかのように軽やかに舞う。ラングがクルリクルリと舞う毎に光が尾を引きながらギルティスの腕に集まって行く。神秘的とも言える現象に当のギルティスも驚いた様子で自分の腕を見つめている。
美しい光に目を奪われ、時間が経つのも忘れ見入ってしまう。次第に舞がゆっくりになりギルティスの腕を包む光も腕に吸い込まれるように消えていった。
『ふぅ』と息をつき床に座り込むラング。
「どうかにゃ。おいらの渾身の舞にゃ。ここまでできるのはケットシーの中でもあんまりいないにゃ」とへにゃりと笑う。
皆の注目がギルティスに集まる。
「・・・・・・・」光が消えた腕を見て、力の入り具合を確かめるかのようにギュッと拳を握る。
握りしめた拳を見つめるギルティス。おもむろに剣を手にする。いつも使っている左ではなく右手で剣を抜く。
そのまま壁に向かい『シュッ』と振る。
(あれ?今、剣を振ったよね?でも、もう鞘に戻ってる?あれ?)
僕の頭に???が浮かんでいる時、『ガタン』と壁の前にあった像が倒れた。何事かと見るとすっぱり綺麗に割れていた。
「ケットシーに礼を上乗せしなきゃならんな。昔に戻ったどころか軽くなったぞ」とご満悦のギルティスがいた。
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