さぁ、行くぞ
「おい、お前たちが従魔を攫った犯人だな。魔物とはいえ大切な仲間を攫われた冒険者たちから捜索の依頼と懸賞金が出ている。どういった処分になるかはこれからだが、二度と世間には出られないと覚悟しておけ」
「役人に突き出すのか?」と天狐。
「あぁ、ギルドで終わらせられる問題じゃないからな」
「こっちの商人らしき風体の奴が『役人』という言葉に反応しよった。役人とつるんでるやもしれぬ。突き出しても良いが、軽い罪で終わるのは納得がいかん」
「役人との癒着か・・・。どうりで今まで捕まらなかったはずだな。・・・・よしわかった、ギルド長の権限で宰相殿にかけあってみよう」
「ふむ。お主が良しとするなら任せよう」と幾重に重なった尻尾をパサリと振る。
すると・・・・・・『カチャリ』と檻の鍵が開いた。
「連れていくがよい」
天狐のセリフに苦笑いしながら檻の奥に入っていくギルティス。
「おい、行くぞ。立て」と頭と商人に言う。「『俺一人だから逃げられる』と思うなよ。ギルドマスターの名は伊達じゃないからな。その首と体が離れ離れになってもいいなら逃げてみろ」と魔法具を出して繋ぎ、連れ出す。
「お前。コータと言ったな。こいつらを捕まえた懸賞金が出るから後でギルドに来いよ。いろいろ話も聞きたいしな」と僕の方を見る。
盗人たちへの睨みを効かせたまま振り返ってきたので、思わず僕も姿勢を正して「はい!」と答えてしまった。
そんな僕の姿を見て「すまん、すまん」とギルティス。
次に天狐の方を見て「で、お前はどうするんだ?」と聞く。
「そうさなぁ。あの宿の飯と風呂が良かったのでもう少しこの街にいるかのぉ。こ奴らのことも気に入ったしの」と隣で聞いてるこっちが『ギョッ』とするようなことを言う。
「お前なぁ。人間たちには関わらないんじゃなかったのか」
「そう考えていたのじゃが、面白いものを見つけたのでちょっと付き合ってみようかと思っての。ふぉっふぉっ」
と何やら含んだように笑う。
「まったく天狐っていう生き物は勝手だな。お前が一度暴れると国が亡びるのだけは覚えとけよ。俺は二度と忘れないからな」と天狐をじっと見て盗人たちを連れていくギルティス。
その背中に向かって「お主も心配症じゃのぉ。童に任せておれ」と言葉をかける天狐。
振り返る事もせず、『チッ』と舌打ちをして去って行った。
そんなギルティスの様子に「ふぉっふぉっ」と再び笑う天狐。
ひとしきり笑った後、「さぁ、行くぞ」と僕の方に向き直る。
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