右腕の傷
「コータの話を疑ってた訳じゃないが、本当だったんだな・・・・。なんでこんなところに居やがる」と天狐を睨むように見るギルティス。
「まぁ、そう警戒するな。童もこんなことに巻き込まれるとは思っておらんかったわい。風の噂で『良い風呂と旨い飯がある』と聞いてのぉ。久しぶりにのんびりするのも良いかと思うて来てみたのじゃ。確かに旨い飯じゃった。飯を食うて風呂に入り油断してこの有様じゃ」と楽し気にコロコロと笑う。
「何がのんびりだ。貴様が一度事を起こすと国が亡びる。辺境の地で大人しくしておればよいのだ。あの時のことを忘れたとは言わせないぞ」と感情が抑えられず息せき切って話す。
「お主はまだ根に持っているのか・・・・。あの時は童も気持ちが舞い上がってしまいよく覚えておらん。お主にはすまん事をしてしまったようじゃが・・・」
「この右腕の傷を忘れた日はない。まだまだ上を目指していた俺はこの傷のおかげで、引退を余儀なくされた。今となってはギルドマスターの職も悪かねぇが、もう少し現役でいられたらどうだったのか・・・と考えちまう」
「すまんことをしたのぉ」と今更ながらに反省している天狐。
盗人達を前にして沈み込む2人。
「・・・でもまぁなんだ、今回はこいつらが世話になっちまったようだな」と話を替えて、コータ達の方を振り返るギルティス。
「実を言うと童もこのケットシーには世話になった。こ奴らに付けられた傷を癒してもろうたのじゃ」
「天狐のお前を傷つけたのか?こいつら」と『ギョッ』とした顔で盗人たちを見る。
「いやぁ、何。忌々しい術をかけられて動けなくなったのじゃが、こ奴らが強かったのではなく童が油断してしもうたのじゃ」と苦虫を嚙み潰したような顔の天狐。
「油断だと?」
「噂の風呂は本当に良い風呂じゃった。のんびり湯につかり極楽を味おうとる時に、ふと湯船の縁に置いてある酒が目に入ってのぉ。ちょっと飲んでみればとても旨い酒で、ついつい飲みすぎてしもうた。で、気が付いたらこの有様よ」酒の旨さを思い出したのか、天を仰いで満足げな顔の天狐。
話を聞いていた僕は「リューも風呂で酔っぱらったのが原因なんです」と待てずに話をする。
「そういや、そんな事を言ってたな。ふん・・・」と考え込むギルティス。「気にはなるが、風呂の調査は後回しだ。とりあえず、こいつらの処分が先だな」と檻の奥の盗人たちを見る。
ギルティスと天狐のやり取りを見ていた頭と商人は、自分たちに視線が集まり「ひぃっ」と声を上げる。
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