びっくりの味だったにゃん
まだ夕飯には早い時間の為か、食堂はそれ程混んでいなかった。駆け出しの冒険者が泊るには少し高い宿代。宿泊者らしい冒険者は、なんとなくだがある程度余裕がありそうな人ばかりだった。そんな中、ドラゴンとケットシーを連れている子どもの僕はかなり目立っていた。周りから視線が気になってきた頃、
「お待ちどうさまー」と料理が来た。
「えっと、ガッツリメニューという事だったので、『オーク肉と玉ねぎの生姜焼き』『コケッコの唐揚げ』『ジャイアントフロッグのカツと山盛りの千切りキャベツ』『梅おにぎりとみそ汁』『白ご飯』をお持ちしました」と大皿をどんどん机に置いていく。
「これで全部ですね。そちらの従魔も一緒に食べますよね?お皿はどういうのがいいですか?深いと食べにくいとかありますか?」と聞かれ、リューとラングに聞くと、ガツガツ食べたいので大きめの平皿がいいということだった。
それを伝えると、「わかりましたー」と厨房へ戻る女の子。すぐに戻ってきてあまり深くない大皿を二つ持ってきてくれた。
一応リューとラングにどれを食べたいか聞くが、「肉ならなんでもー」の2人。それぞれを均等に次ぎ分けて千切りキャベツと白ご飯も盛り付ける。美味しそうなワンプレートご飯ができあがった。僕も小皿にそれぞれを取り分けて「いただきまーす」と食べる。
まず、熱々ジューシーな唐揚げを一口。パクッと食べた瞬間に『うまい!』と驚いた。外はカリっとしていて、肉はジューシーで程よい噛み応え。しっかり下味もついていてとても美味しい。(父さんだったら『これでエールを飲んだら』って言うんだろうな)とニヤニヤしながら残りをほおばる。
隣で食べている2人を見ると、わき目もふらずに食べている。どうやらリューは唐揚げ、ラングは生姜焼きがお気に召したらしい。
「久しぶりのおにぎりだ」とノリに包まれているおにぎりを手に取る。このノリって言うのが時々嚙み切りにくかったりするが、ご飯が手につかずに食べられるし、この香りがご飯と合うんだろうなと思わせる組み合わせだ。
梅干しに到達すると口の中にじゅわっとよだれがあふれる。「うーっ!」と思わず言葉が出るが、嫌ではない。この酸っぱさが旅の疲れを癒してくれるような気もする。
僕が「すっぱい」と言いながらも美味しそうに食べているのを見てラングが、「それは何にゃ?」と聞く。
「これはねぇ、僕もおじいちゃんも好きなんだ。久しぶりに食べたくて頼んじゃった」
「にゃんと、料理が上手だというあのおじいちゃんにゃ。おいらもちょっと食べたいにゃ」と僕に顔を近づけてくる。
「これは好きな人も多いけど、苦手な人もいるからなぁ。ちょっとだけ食べてみる?」とラングのお皿にご飯と少しの梅干しを分けてあげる。
「食べてみるにゃ」とつまんでパクッと食べるラング。(どうかな)と様子を見ていると、
「にゃんだこれは?」と後ろに飛び退るラング。毛を逆立てて『フーッ』と威嚇している。
「だから言っただろう、苦手な人もいるって。これがね、『すっぱい』っていう味だよ」
よっぽどびっくりしたのか、まだ遠目で皿を見ている。僕が食べてしまうのを見て戻ってきた。
「これはびっくりの味だったにゃん・・・・」
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