フォレストヴァイパー
遅くなってすみません。
護衛達がリューとココを見て「何だ!」「新手の魔物が来たぞ!」「隊列を崩すな!」と慌てる。
「すみません、すみません。僕の従魔たちです!」と僕も慌てて声をかける。
「ドラゴンの従魔だと?」「こっちの魔物も見た目は狐だが、この大きさは・・・」と戸惑う声があちこちで上がる。そんな中、護衛のリーダーらしき厳つい男が近づいて来た。
「噂でドラゴンと妖狐を従魔にする冒険者がいると聞いたことがある。お前がそうか?」と聞いてくる。
(「妖狐じゃと!童はそんなただの妖ではないわ!」)と僕にだけ聞こえるように「ウゥ」と唸るココ。
(「僕はちゃんと分かってるからな。噛みつくなよ」)と僕もココにだけ聞こえるように言う。
「ふん。加勢してやろうかと思ったがつまらん。リューやってしまえ」と無責任に言い放つココ。
「ちょっと待って。やってしまえって・・・・」と僕が止める間もなく、
「分かったー。思いっきりやるー」と元気100倍のリュー。任せろと言わんばかりにガッツポーズをする。
「ちょっとーーーーーー」と僕が言うのと同時に、
『エアカッター!』とリューが唱え空気が震える。
『ブウン』と音が聞こえたような気がして思わずフォレストヴァイパーを見ると、魔物は僕たちの方を見て固まっている。
(あれ?リュー失敗?)と思っていると、
『ズ ズ ズズ・・・』とヴァイパーの首が横にずれていき『ズウン』と地に落ちる。
『ズウン』と倒れたヴァイパーの見開かれた目がこっちを見ているような気がして自然に「ひぃっ」と後ずさる。
首を落とされた胴体はしばらくバタバタ動いた後、『ドオン』と地響きを立てて倒れていく。
時間にしたらあっという間だったと思うがあまりに突然の事で僕も冒険者たちも「・・・・・・・・・」と固まってしまう。
そんな中、例のごとく空気を全く読まないリューが「どう?すごいー?」と僕の所に飛んでくる。
べしッと久しぶりに顔に張り付いて来たリューを引きはがして「すごい、すごい」と頭をなでる。
なでられたリューは満足気な顔でヘラヘラ笑う。
そんな僕たちのやり取りを遠目で見ながら「お、おお、お前の従魔のおかげで助、助かった」とリーダー。
ドン引きの護衛達の様子を見て「えーっと、皆さんがご無事で良かったです」と頬を搔きながら答える。
同じように商人も固まっていたが、さすが商人。立ち直りが早く、「いやぁ、皆さんのおかげで助かりました。こんな護衛を雇うくらいなら先に皆さんにお会いしたかったですよ。はははは」と護衛を振り返り「まったく役に立たない護衛ども。報酬を払う気にもなりませんな」と鼻を鳴らす。
そんな商人の話を聞いて「ちょっと待ってくれ。俺達だってこんなところでフォレストヴァイパーが出るなんて聞いてない。無事に町に着いたらちゃんと報酬は払ってもらうぞ。ギルドとの取り決めで決まってるはずだ」とリーダーも慌てて言う。
「ふん。そんなのは分かっているが、支払うのには値しないと言っておるのだ。次の町まであと少し、しっかり働いてもらうぞ」と商人。
「こっちも仕事だ。依頼分はきっちり護衛させてもらう」とリーダー。
強気のリーダーが気に食わないのか「フン」と周りを見て馬車に戻る商人。
「すみません。僕たちが余計なことをしてしまって・・・」とリーダーに声をかける。
「気にするな。さっきも言ったがフォレストヴァイパーが出るなんて聞いてなかった。お前たちの助けがなかったら仲間が数人やられていただろう。助太刀してくれて助かったんだ。遅くなってしまったが礼を言うぞ」とリーダー。
(厳ついけど意外に良い人かも・・・・)
「お前たちはどこまで行くんだ?」と聞かれ「リケサまで行く予定です」と答える。
「そうか。それなら俺達と同じだな。うーん、頼むわけじゃないがこのまま一緒に行かないか」と誘われる。
「一緒にですか?・・・・」と僕が返事に困っていると、「無理にとは言わん。世話になったんでリケサに着いたら飯でもどうかと思ってな」とリーダー。
「飯じゃと!」「ごはん?」に反応する2人。キラーンと目が輝いて『ウンウン』頷いている。
そんな二人を見ながら「そうですねぇ・・・。せっかくなんで一緒に行きます」と半分苦笑いで答える。
直ぐにでも馬車が進みそうだったので「あっ、そうだ。このヴァイパーって売れますかね?」と聞いてみる。
「ヴァイパーは皮・牙・肝・肉と余す所なく買い取ってくれるぞ」と教えてくれる。
「じゃぁ、持っていきましょう」とマジックバッグに入れていく。
顔と胴体合わせて小山くらいの大きさの物が『スルッ』と入ったのを見て「マジックバッグか!」と驚く護衛達。
(しまった・・・・)と固まる僕の顔を見て、
「まぁ、見なかったことにしておいてやるか・・・・。なぁお前ら」「へい!」と護衛達。
「ありがとうございます」と言いながら(もう少し気を付けなきゃな・・・・)と肝に銘じる。
☆☆☆☆☆に
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頑張って書きます!




