パイパイナップル
「お味の方はいかがかしら。お口に合いましたか?」と微笑みながら話しかけてくる。
「とっても美味しいです。食べてるとなんだかほっこり温かくなります。家で食べてるような感じでのんびりできます」と答えると、
「喜んでいただけて良かったです。でも、あんまり褒められると照れてしまいますね。うちの孫とそんなに変わらないのにずいぶんしっかりなさってるのね」
「僕コータって言います。こっちはココで、あとラングとリュー。みんな『美味しかった』って言ってます」
「ありがとう。私はヒグレの母親で『セレーノ』よ。ヒグレと孫たちが本当にお世話になったみたいでありがとうございました。久しぶりに顔が見られて主人と2人大喜びだったんですよ」とコロコロと笑う。
「僕たちもこの国に来るのが目的だったので、ちょうどいいタイミングでした」と僕も答える。
僕とセレーノが話し込んでるのを見て、ヒグレが「母さん・・・」とやってきた。
「あら、ごめんなさい。つい話し込んじゃったわ。焼いてるお肉が何の肉かって事だったわよね?」
「いえ、こちらこそ無理を言ってすみません」
「いいのよ。美味しいものは皆で分け合うものよ」と僕を見て片目をパチッと閉じる。
「この肉はね。別にすごくいいお肉ってわけじゃなくて、おすそ分けで貰った『ワイルドベア』のお肉なのよ」
「え、ワイルドベア?とっても柔らかくて臭みも無かったですよ?」とびっくりして言うと、
「ふふふっ。それにはねぇ、とっておきの秘密があるのよ」と意味深に言うセレーノ。
「ここワルムンドはドワーフの鍛冶屋が多くて、どんな季節でも火が焚かれてるの。暑くなりすぎてどうしようもない時もあるけど、その熱を利用してハウスの中で果物をいろいろ育ててるのよ。その中でも『パイパイナップル』っていうのがあってね。その実を潰した果汁に肉を漬けておくと不思議なことに柔らかくなるし、臭みも取れちゃうの。塊肉をそのまま漬けてもいいし、薄く切ってから漬けてもどちらでもほぼ同じくらいかしら。あなたが同じように作るなら、塊肉をじっくり中まで火を通すのが難しいから、漬けてから焼くときに好きな厚さに切ってから焼くといいかもしれないわね」と教えてくれた。
「ありがとうございます。肉が大好きな仲間たちなので、ぜひ試してみたいと思います」とお礼を言う。
「自分で作るなんてねぇ・・・」と僕をまじまじと見る。「・・・ちょっと待っててくださいね」と何かを思い出したように厨房に行って、すぐ戻ってきた。
「ずいぶん完熟してるから早めに使わないといけないんですけど、おすそ分けです。どうぞ」とトゲトゲした物を渡される。
「?」と受け取りながら(何だろう?)とクルクル回しながら見ていると、
クスクス笑いながら「それがパイパイナップルですよ」とセレーノ。
「これがぁ?」ともう一度クルクル回しながら見てみる。確かに甘いいい匂いがする。
クンクン匂いを嗅いでると、
「もちろん、そのまま切って食べても美味しいですよ。食べてみますか?」
「いいのかにゃ?」と甘い物好きのラングが食いついて来た。
完熟のパイナップルはとっても美味しいらしいです。
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