夢・願い
列を離れ国境を行きかう人を見ながらしばらく待つ。商人風の人だったり、家族連れだったり、一人だったり、ドワーフ、獣人、ハーフリングにエルフまでいた。
「こんなにゆっくり人を観察したことってないなー」と座って頬杖をつきながら言う。
「いろんな人が行きかうのが国境にゃ。みんないろんな思いを持って国を超えるにゃ」と珍しくラングがしんみりと言う。
「何かあったのか?」
「おいらの幼馴染も夢をかなえるのに旅に出たにゃ。スロームでは風の噂も耳にしなかったので、きっと国を出たんだにゃ。みんな若い時には夢や願いを叶えたくてどんどん前に進んで行くにゃ」
「そっかぁ、そうだよね。僕の『おじいちゃんに会いたい』っていうのも叶えたい願いだもんね。ここを通ってる人の中にはそういう思いを持った人がいるんだろうな」
(ラングの言う「若い時」っていうのがどれくらい昔なのかが気になる・・けど聞かない方がいいよね)
もうしばらくボーっと待っていると、
「待たせてすまぬな」とギルドカードを見せた門兵がやってきた。
「待たせた上にすまぬが、こちらに来てもらおう」と詰め所を示す。
(えっこれ、捕まっちゃう感じ?何も悪い事してないよね?え?)と頭の上に見えない『?』を浮かべて戸惑っていると、門兵もそれを汲み取ったのか
「連行ではない。ちと聞きたいことがあるだけだ。話を聞いたら解放できるだろう」と話す。
ここでしぶると怪しまれそうなので、しかたなく付いて行く。
「(ココ、絶対大人しくしてろよ)」と小声でつつく。
「ふん、何か文句があるならそれ相応の・・」と鼻息も荒く言う。
「それが困るの!」とつい声をあげてしまった。
僕の声に、「何かあったか?」と門兵。(しまった)
「お主の方が我慢できていないではないか、ククッ」と笑うココを横目で睨みながら歩いていく。
(何かあっても絶対助けてやらないからな!)と心の中で独り言ちる。
詰め所の扉をノックすると「入れ」と声が。
中に入ると、案内の門兵とは明らかに装備が違う兵士がいた。
「総司令。連れてきました」と門兵。
「うむ、ごくろう。職務に戻れ」と兵士。
(総司令!?めっちゃ偉い人っぽいぞ)と背中に冷たい汗が流れていく。
「まぁ、そう緊張するな。ちと聞きたいことがあるだけじゃ」と総司令が話し出した。
ラングにも夢や願いがあったんだろうな・・・。
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