100%を求めて
「じゃぁ100%目指してみる?」
ふいに返された返答に目を白黒させる大賢者は質問の意図を理解しようと頭を巡らせていた。
「20%でさえ突破した人はほとんどいないからね、それに死んでまで知りたいと言ってくれるだなんてこんな前途有望な死人は他に見たことがありません! 20%突破特典という事でチャンスをあげようかなと……!」
死んでいるのに前途有望……? 理解しようとしていたが畳みかけるような星の声に半ば考えるのをあきらめつつあった。
「申し訳ないですが……チャンスとはどういう事でしょうか……?」
あきらめつつあったが何とか頭を切り替える大賢者はまずは目の前の疑問から……すでに死んでいるにも関わらず一体自分に何が起ころうとしているのか、大賢者の知識を持ってしても理解が追い付かない質問の答えを求めた。
「そうだね~私もアチーブメントを設定しておきながらコンプリートされないのは悲しいな……と常々そう思っていたのです!」
大賢者の問いかけに答える星の声は少し弾んだ声だった。
「まぁ、そういうものだとあきらめてはいたのだけれど……貴方なら100%もいけるかもしれないですしコンプリート目指せるように――もう一度生きてみませんか?」
やってきた回答はさらなる疑問を引き連れてきた。
もう一度生を与える?
大賢者が"情報収集"のスキルで集めてきた知識の中にはもう一度生を受ける、つまり”復活”や”転生”という事実は確認できていなかった。
しかし噂やおとぎ話などではそういった類の話は伝承されていたし、先代の賢者からも過去にそうとしか思えないログの残り方があったという事は聞いていた。
死を目前にして”復活"や”転生”について本気で取り組んでみた事もあった。だが研究結果は”魂が肉体から離れると魂と肉体どちらも死滅へと向かう”と言う事。
新たな器に魂を定着させようとしても元の身体から離れた魂はすぐに霧散していく。なんとか強引に定着させたとしても目覚めた新たな器の意識は混濁、しばらくしないうちに魂は剥がれ落ち二度と目覚める事はなかった。
これらの事から大賢者は魂と肉体の結びつきは想像している以上に強固だという事を学んだ。
新たな器への定着実験の結果は転生を研究していたグループが行っていた離魂の魔術を使った人体実験の結果であった。情報収集で目星をつけていた研究グループの実験をリアルタイムで追っていたのだ。
自分同様に死が目前に迫ったグループのリーダ、権力も財力も持った人物がデータも不揃いなまま離魂を行いそのまま最期を迎えた。結果、リーダーが持っていた発言力、そして財布をも無くしてしまったグループは研究結果を破棄。離魂の魔術も禁術となり解散となった。
その後は、個人的に研究を進めて肉体と魂のつながりを変化させるような出来事がないかと思案した。だが人や動物それに魔獣たちにも死は平等に訪れ死んだ後の魂の流れは全て同じであった。
結局”転生はできない”と理解した大賢者はそれ以降その研究を進める事はなかったわけだが。
「転生できるという事ですか?」
やっとの思いで今までの回答をかみ砕き思案し自分の考えが正しいのか? 大賢者は回答を求めた。
「まぁそういう事だね! 肉体から離れた魂は私の管轄でね、普段はきびしーく管理しているのだけど……今回は大目に見よう!」
星の声は一段と弾んで聞こえた。相当自分が設定した内容を悔やんでいるようで挑戦者が現れただけで喜びの色が漏れている。そして自分の考えが裏付けられた事でやっと頭が冴えてきた大賢者。
「新しい肉体に君の魂を今のまま組み込む事でもう一度生を与える事が出来るよ。でもアチーブメントの取得状況は肉体に刻み込まれていてね! 転生できたとしてもアチーブメント0%から取得になるけど、どうやってみる?」
なるほど、今回の転生は強引にはがされた魂ではなく、死んだ事で魂だけの存在となった自分、そして魂を管理する星あってこその裏技なのだろう。星の声から提案された内容は何ら問題なかった。
「大丈夫です! 今までどうやって取得したかわかっていない訳ですから0からスタートして何をするべきか考えていこうと思います!」
「そこまで言ってくれるとは……じゃー転生祝いにこのスキルも贈ろうね! そうと決まれば早速~」
「おお! 主よ全ての理を習得して本当の意味での星の代行者として今一度お目にかかる事をお約束します!」
今まで星の代行者として恥じないようにと生きてきたが、死の後に星の理を聞く事が出来、大賢者は今度こそと決意を新たに自身が仕えていた存在に頭を下げた。
一時停止していた走馬灯は再開し本来であれば意識も霧散するであろう最期の最後まで進む。だが大賢者を包んだのはまばゆい光で、その光に生前の感覚で目を閉じた大賢者の意識はそこで途絶える
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途絶えた意識が覚醒したのはすぐ。だが、身体を起こし辺りを見回すと覚醒する前よりも目線の位置が下がっており、身体の構造に違和感を感じる。四肢は、五指はある、ただ筋力や俊敏などのフィジカル的なステータスが下がっているように感じたのだ。
周りを見渡すと見た事がない部屋であったが、物の配置は覚えているようで迷わず姿見の前に立つ大賢者。
だがそこには黒髪の短髪で色の白い、6歳の少年の姿があった。




