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師匠コイツです

「うちは剣闘士ギルドと違って参加者が多いんださっさと捌いていかないといけないのでね! 若いもんに良い恰好見せるには絶好の機会だろうが邪魔してもらっちゃあ困りますぞ!」


「すまない、若いうちからこの訓練に参加するんだ、”ただ剣が振れるだけ”って奴のが少なくてな。粒ぞろいが多いもんだから力が入ってしまったんだ」


 魔導士ギルドギルドマスターシェナスは魔導士ギルドが今、如何に乗りに乗っているかのマウントを取り、お前の所は基礎魔法が出来るから参加したいってって言う有象無象の集まりだろうがと返す剣聖。そして剣聖の横に居たという事で値踏みされシェナスににらまれるというとばっちりを食らうクシル。


「はっ! 邪魔があったが今回の参加者はみな優秀な者ばかりでしてな! うちの訓練を辞退した奴が居るらしいが心折られる前に辞退しておいて正解でしたぞ! 」


 事前に参加者の資料を一通り目にしていた剣聖は複数ギルド所属の参加者と魔導士ギルドの辞退者についてギルド職員に確認を取っており、クシルという名前で同一人物である事を知っていた。

 説明会の質問時に手を上げて魔力をぶつけてきた参加者がクシルであった事は、指名してからもう一方の少年が名前を呼んだことでわかったわけだが、大賢者(エリちゃん)の所の人間であれば魔導士ギルド辞退もうなずける。

 そんな奴がシェナスの言っている辞退者でおそらく魔導士ギルドに属すればとんでもないルーキーとなるだろうとは口には出せず、クシルの顔を見て笑いをこらえるのが精いっぱいだった。


「それよりも! 前に話した件は考えてくれたかね? 剣聖の魔力や魔術は賢者の塔で学んだものという話。 是非、魔導士ギルドで講師をお願いしたくてね!ギルド間で協力も大事ですぞ」


「その件は一度断りを入れただろう? 私の知識なんて賢者の塔に行けば学べる内容だ大したことはないだろう」


 賢者の塔に登れる奴は自分の代でもそう多くは無かったので大した事はあるんじゃないかとクシルは剣聖に心でツッコミを入れる。ギルド間の協力と言いながら剣聖側にメリットが全くなく、体よく賢者の塔攻略の為のヒントが欲しいだけというのが丸わかりだった。


「今や大賢者亡き時代だからこそ、君の知識に価値があるのではないか! だがまぁ無理にとは言わんよ、賢者の塔へはうちの精鋭が向かっておるのでな」


「現大賢者がいらっしゃる、彼女こそが招かれるべき存在だと思うがね。大賢者と知識への敬意は必要だよ」


「あんな若造わしは認めんよ。弟子だと言っても大した事は引き継がれていないだろう! まぁ良い! 気が変わったら言ってくだされ、それとまだしばらく魔力測定があるのだ今後は邪魔せんでもらいたい」


 言いたい事だけ言うとシェナスは魔導士ギルド側の訓練会場に戻っていく。

 きっと”情報収集(データログ)”でこの会話も拾ってるだろうエリに対して気の毒に思っていると、「弟子なら言い換えさんかい!」という声が聞こえた気がしたがクシルは気のせいだという事にした。


「いつも賢者の塔を言い訳にして追い返してたのですか? そんな事するから強引な訪問者達に大賢者が困ってるんですよ……それに魔導士なのに大賢者を認めないとかあんなの放置して良いんです?」


 だがまぁ剣聖になら物申せそうだなとシェナスに言えなかった事を剣聖に伝えるクシル。


「いや問題にはなってるんだがな……今や基礎魔法の広まりに伴い、もともと声が大きい者も魔導士ギルドに所属したりと影響力が大きくなっているのだ。表立っては居ないが面倒事も起きててな……まぁ色々動いているところなのだ。エリちゃんには悪いとは思っている……そうだ! 次に賢者の塔に行くときはエリちゃんの好きなお菓子を持って行こうじゃないか! な! だから許して!」


(なんかエリはうまく買収されそうだな……)


 大賢者の関係者が隣に居るのだ”情報収集”で優先的に話を聞いているだろうと剣聖は見えもしない現代賢者に許しを請う。何かいろいろと厄介事になりそうだが動いてくれているならば後は当事者であるエリが話を聞いてくれればいいとクシルは頭を切り替える。


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 その後、剣聖のスタイル”剣魔”についていくつかアドバイスをもらった所で初日の訓練の終了時間となった。剣聖は視察の結果報告で打ち合わせに向かうとのことでそこで別れた。


「また会う機会もあるだろう。その時はよろしく頼む」




 不穏な一言を残していった剣聖と別れ、まずは強引に付き合わせたフレイの見舞いに行くことにしクシルは治療所に足を運ぶ。

 治療所の扉をくぐるとすでに目を覚まし自室へと帰る準備をしている所のフレイと目が合った。瞬間、フレイは無言でクシルに近づき頭にゲンコツを落とす。


「お…ま…え!!! なーんて事に付き合わせるんだホント死ぬかと思ったんだぞ! それに作戦があるなら事前に説明しろよ!」


「アハハ」


 転生してからなぜだか魔石を投げられたりゲンコツ落とされたりするなと上の空のクシル。「年のせいで殴れなかっただけだ!」という幻聴が聞こえた。

 しばらく無理やり付き合わされた鬱憤を晴らすかのようにフレイはクシルに文句をぶつけるのだが鬱憤が晴れていくと嬉しい声も聞こえてくる。


「でも……良かった! 楽しかったよ! お前が背中押してくれて、程よい緊張で挑めてさ! 剣と自分の身体が一体化した感じ……? 説明が難しいけどたぶん生きてる中で最高の実力を発揮できたと思う!」


「ソレハヨカッタ」


 それも僕の魔法のせいです…とは言えずに黙るクシル。剣聖の剣がクシルの目的ではあったが直近の指標となる同年代の実力も見る事ができた。

 手合わせの際の動きを振り返りながらどうしてああ動いたのか? フレイの狙いを聞き情報を補完しながら食堂へと向かった。


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「なるほどな、急に回避動作が増えたと思ったらクシルが魔法で牽制入れていたのか! というかお前”剣魔”スタイルなのか! 生産職の片手間だと思ってたら戦闘もガッツリなのな!」


「まあね、これからは何事も極めるって決めたんだ」


「おーい二人とも! こっちこっち~」



 食堂に入る二人を見つけたベーヌは先に食堂に来て席を取っていたようで二人に声をかける。森林ギルドの初回組説明も終わり食堂で二人を待っていた。無事に合流し三人は夕食の品をカウンターから受け取って席に着く。


「急に剣聖と手合わせする事になってるんだもんびっくりしたよ! 軽くあしらわれるかと思ったら最終的に斬られてたし……斬られてたよね……? お薬いる?」


 目の前で剣聖に剣で斬られるシーンを目撃したベーヌ、手合わせ後は自分の事もあり一緒に付いては居られず心配だったが、食堂でやっと二人の顔を見る事ができて安堵したようだった。ベタベタとフレイの顔を触って確かめ「ええい生きてるよ!」とフレイに手をどけられていた。




「ともかくベーヌの模擬戦が終わり次第このパーティで活動して依頼を達成しないとだな」


 食も進み次の訓練について計画を話し合っているとフレイがパーティ活動について話をしてきた。クシルは不思議に思い聞き返す。


「あれ……?このパーティってどのパーティ?」


「なに言ってんだよ、俺、お前(クシル)、ベーヌの3人だろうが! もう一人くらい居た方がバランスよさそうだけだな~」


 いつの間にパーティが結成されているのか考え込むクシルを見てフレイががっくしと肩を落とす。コイツわかってないなという顔でクシルを見た。


「お前……わかってんのか? あんだけ派手に剣聖とやりあって初日に要注意人物だって認識されてるのに普通にパーティ組んでくれると思ってるの?」


「え……この興味と奇異の目に気が付かないの……? まぁいいわ、私達と一緒に試験に挑みましょうクシル君、私まだ君とお話ししたりないし!」


「あぁなるほど……シマッタ……」


「まぁ俺も一緒の状況だしな三人でパーティ組めば問題ないだろ」とフォローを入れてくれていたが頭によぎるのは、午前中の船内でのベーヌとのやり取り。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 クシルの頭の中はベーヌ対策の事でいっぱいになった。

これでこの章の登場人物がだいたい出たそろったかなと…

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