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師匠って……だぁれ?

「ね! 私クシル君に聞きたい事があったのだけど……クシル君には師匠が居るんでしょう?」


 フレイ達が噂話で一通り盛り上がった後、ベーヌとクシルは薬学談義に花を咲かせていた。

 特に話題に上がったのは薬学ギルドでの所属試験時に起きた手違い、試験官が間違って提示した水薬、”魔力回復薬(マナポーション)”。

 その”魔力回復薬”に良い葉の見分け方や採取場所についてをベーヌはクシルに聞き。逆に6年の間の薬学事情についてを目新しい研究があったかどうかなどをベーヌに質問し互いに情報交換に勤しんでいた。


 気が付けばフレイは寝息を立てて座席に沈んでおり、口を挟む相手も居なくなったベーヌの勢いは止まらず意を決して胸の内にためていた想いをクシルに投げかける。


「その年で、こんなに薬学について話せるなんてとってもいい師匠に出会えたのでしょう? 魔力回復薬って素材採取は簡単なのに作り方が特殊じゃない? だから君のお師匠さんがなんでその()()()()()()()()()()()()知りたくて……ね」


 今までのような相手を尊重した質問の仕方ではなく、必ず答えて欲しいという意志を感じる質問の仕方に内職の手が止まり少し引いてしまったクシル。


「えーっと……育ての親が師匠代わりだったけど? ベーヌが聞いても名前も知らないと思うナァ……」


 クシルの大賢者時代の師匠、つまり現大賢者(エリ)から見て先々代の大賢者が魔法の師匠であり薬の師匠でもあったのだから間違いは言ってない。言葉を濁して伝えたにも関わらず、ベーヌは諦めない。


「いいえ、私優秀な薬学者は覚えてるわ、もし知らないお方だとしても今後お話しが聞ける機会があるかもしれないし是非!!」


(えぇ……近い近い……)


 大賢者、弟子で師匠のエリは機嫌が言葉に出るし場合によっては拳にも出る。それはエリが長年の師匠と弟子の関係から言葉や拳が出ないと伝わらないと学習したからだ。

 だがエリとは違い、言葉や拳には出ないが空気の読めないクシルにもわかる程のベーヌの圧と顔面距離になぜ師匠にそこまで注目するのか悩むクシル。


 そもそもクシルの師匠という事は300年前くらいの人物ですでに居ない訳で……と回答を悩んでいると引率のギルド職員が立ち上がった。


「それではみなさん、訓練場に着きました! 事前に配布した通り宿舎に荷物を置いて今日のグループの人は昼の鐘には宿舎前の演習場に集合してくださいね」


 回答に悩んでいる間に到着していたようで前の座席の方から順番に席を立つ参加者達。寝息を立てていたフレイも目を覚まし寝足りないのか大きなあくびの後に伸びをする。


「おーし! 魔船って奴はホント静かで助かるよな、馬車とかじゃこうはいかない! ホレ! ベーヌ行くぞ。じゃぁクシル後でな~」


 そこからの行動は早い物でフレイは二人分の荷物を持ち座席を立つ。


「ちょ! ちょっとフレイ! 待ってよ……まだ……!」


 遠ざかるフレイと、クシルの顔を往復しながら自身も席を立つ準備をするベーヌ。


「本当は薬学ギルドでまた会えるかなと思ってたんだけど、ここで会えてよかったよ! じゃぁクシル君また話そうね!」


 ()()……そうなのだ、今から基礎訓練が始まる。日程としてはしばらくの間スキルの訓練や実際に討伐依頼に挑む演習があったりと一緒になる機会があるのだ。


(怖ッ……出来れば近づきたくないが……とりあえず彼女に対しての情報を整理して回答考えるか)


 そんな事を考えながらクシルも内職の成果を転移魔法でしまい席を立つ。


 -------------------------------------------------------


 訓練場には大きな演習場と共に複数ギルドで運営する宿舎があった。宿としても運営しており、ギルド職員やギルド所属の冒険者達が採取の前に利用するのだ。

 生産ギルドも一枚かんでおり、宿の中には雑貨屋や出店などがある。こちらは年若い店員の多くが新人研修として参加しているとの事だった。


 例年では部屋が半分埋まる規模だったが、ここ最近、魔導士ギルドの所属前訓練という事情もあり今年に至ってはほとんど満室に近かい。


 コンコン


 クシルに与えられた部屋は2人部屋。先客がすでに居る可能性もありノックをして入る。部屋に入ると目に入ったのはワードローブとベットが2セットそれぞれが部屋の端に置かれており真ん中にパーテーションがあった。2人部屋だが一応のプライベートは守られているようだ。


「はいどーぞ」


 やはり先客が居たようで扉の向こうから声が聞こえる。

 入り口のドアから先客をみるとベーヌやフレイより年上の大人びた少女がベットの上に座っていた。眼鏡をかけた真っ黒な髪の少女はクシルに手を振る。10歳より上に見える彼女はおそらく魔導士ギルドの所属前訓練を受けに来たのだろう。



「君みたいな少年が同室とは……世話役を頼まれたって事かな……? 私はポワンシー同室だから何でも聞いてね!」


「どうも、僕はクシルよろしくお願いしますね」


 自己紹介を済ませ荷物をベットの上に放り投げる。演習場に集まるのは昼の鐘の前、部屋にある時計を見ると昼食を取る時間はある。あるにはあるがフレイとベーヌもおそらく食堂に居るだろう事を考え、今はまだ情報も整理していない……後めんどくさい……と内職道具と保存食として携帯していたパン取り出す。


 服飾ギルド用の納品物は大量に製作できた、次は細工師ギルド用に矢の作製に取り掛かる。矢じりや矢羽根など各パーツはすでに作成済みで後は組み立てるだけだ。

 糸巻きと同じように魔法で制御するには細かい作業が多く手作業がメインだが器用に素材を中に浮かせ作業を進めていく。



「クシル君って今日のグループだっけ? だとしたらそろそろ時間じゃないかしら? 私は先行っちゃうね」


「あ……あっ!?」



 同室のポワンシーから声がかかるまで集中して作業しすぎた。せっかく出したパンも食べるのを忘れ、慌てて口にくわえて準備し演習場に向かうも、着いたのは昼の鐘と同時だった。

活動報告にも書きましたが、可能であれば毎日更新を目指しつつ、とりあえず月水金の週3更新で行きたいなと思ってます。

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