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目覚める前に

 昼を過ぎ夕暮れに近づくにつれて早い所では店じまいの準備がちらほら見える。クシルはギルド巡りの最後の目的地でギルドカードを受け取る。ログに残っているのは生産ギルドを訪れた後に獲得したアチーブメント。


[クシルはアチーブメント”剣闘士の訓練生”を達成しました。]


[クシルはアチーブメント”駆け出しの航海士”を達成しました。]


[クシルはアチーブメント”森林警備隊の志願者”を達成しました。]


[クシルはアチーブメント”魔科学の学生”を達成しました。]


 それぞれ剣闘士ギルド、海洋ギルド、森林ギルド、魔科学ギルドで取得したアチーブメントだ。


 生産ギルドは納品や開発をメインの活動としているが、戦闘ギルドは採取活動や魔物狩り、護衛任務等の戦闘技術を売り活動を行っている。戦闘ギルドとひとくくりにしているがそれぞれに特色があり依頼される任務や得物も違う。


 ”剣闘士ギルド”はコロシアムで活躍していたグラディエーター達が集まってできたギルドで剣や徒手格闘をメインにしたメンバーで構成されている。

 その特色は“如何に自らの力を高める事ができるか”。他のギルドに比べ実力主義が強く、最後に立っていた者が勝者として扱われていたグラディエーター時代の名残だろう。


 ”海洋ギルド”は海洋を渡る際の護衛に当たっていたヴァイキングやドラゴンライダーがまとまってできたギルドで斧や槍といった武器をメインにしたメンバーで構成されている。

 護衛や輸送といった交易にかかわる仕事が多く“如何に人を守れる事ができるか”を問われる。


 ”森林ギルド”は弓術に長けた者や生い茂る自然の中を自由に行き来できる軽業師達が大いなる恵みを運んでくれる森林を守護するため組織されたギルドで弓や短剣、双剣といった武器をメインにしたメンバーで構成されている。

 入り組んだ地形や道に迷ってしまう樹海の中で森林を守護するには人の影響を排除するため”如何に速く行動する事ができるか“を問われる事になる。


 ”魔科学ギルド”はここ何年かで興ったギルドで元はたった一人の研究者とその弟子たちで構成されている。魔力を含めた自然のエネルギーを研究するギルドであるが、その過程で創られた蒸気や火薬を使った技術を応用し戦闘を行う。

 戦闘ギルドに見られない事が多いが“如何に自然のエネルギーを人の力にする事ができるか”を研究しておりその力を試す為に積極的に魔物を狩る等好戦的なメンバーも多い。


 これらのギルドに所属する事でギルドに依頼された採取依頼や討伐依頼、護衛任務等実力にあった依頼を受ける事ができその報酬をギルドと受注者が受け取る。

 仲介だけではなくそれぞれの武器や技術のエキスパートが所属しているため各武器のスキルや技を磨く場としても一役買っている。




 これでアチーブメントが取得できるギルドを全て訪れ所属する事になったクシルは一息ついて次に取得できるアチーブメントを確認しているとギルドカードの手続きを進めてくれていた魔科学ギルドのギルド員が声をかけてくれた。


「このギルドカードを見るとすでに知っているとは思うが、10歳以下のギルド員は基礎訓練を受けてもらう事になっているんだ。まぁある種の依頼(クエスト)だと思ってもらえばいいよ」


「期間は基礎技術を覚えるまで、報酬自体が基礎技術の取得と言った感じか。すでに習得済みであればその日に帰れるし、そうでなくても完了までの期間は宿舎で泊まり込みもできる。ま……今後の活動に必要な簡単な心得や技術といったものでそんな気を負う必要もないけどね」


 すでに訪れた三つのギルドでも同様の説明があったが、噛み砕いてメリットまで説明してくれるギルドはなかった為クシルは説明に耳を傾ける。

 話を聞くに生産ギルドでの試験や同様ギルド員たるものある程度の技術を身に着けておいてもらおうという事だろう。


「それにしても驚きだ。ここが最後なのだろう?全てのギルドの基礎訓練を受けるなんて子供は初めて見たよ。まぁ武器の得手不得手があるだろうしこのまま全てのギルドに居続ける訳ではないだろうがどうなるのか気になる所だよ」


 ギルド員はクシルをいろんな角度から見て回り、実験前の状況確認のように色々と推測を立て思案していた。先の見えない事に関して推測を立てるのは研究員の気質なのだろうか…。

 ただ、少し疑問の残る…会話だった。


「あの確認したいのだけど……全てのギルド……?」


「あれ間違ってた? 君今日4つのギルドに所属しただろ? それとホラここ。基礎訓練を受けるリストに君の名前があるのさ」


 そういって見せてもらった用紙には確かに自分の名前が載っていた。

 訓練の開催場所は全ギルド共通の場所で行っており、必要な資材や宿舎の枠の関係で誰が基礎訓練を受けるのかギルド間で共有しているそうだ。


 しかし通常の手紙や書類などでの情報共有は早くても明日か2~3日かかるもの。今日所属したギルドはもちろん名前が載るはずもないのだが。それでも見せてもらったリストにはクシルの名前が載っていたのだ。



 魔導士ギルドの枠で



「君は全てのギルドに所属するつもりなんでしょ? 良く魔導士ギルドの基礎訓練枠取れたね。あそこは今人気で10歳とかの縛り関係なく基礎訓練を受けないといけないんだよね……しかも才能ある人間しか魔導士ギルドに入れないとかで基礎訓練後に正式所属とか…ホント人気の所は違うよね……」


 ギルド員は少し呆れた声で魔導士ギルドの現状について教えてくれた。


 すでにアチーブメントは取得しているので魔導士ギルドに所属する必要が無く服飾ギルドでも特に質問しなかったがそんな事になっているらしい。そして良く良く思い出せば確かに基礎訓練を受けようとしていたのだ。


 大賢者として目覚める前の自分自身(クシル)が。

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