第4話
1人の時間でやること。僕は毎日やっているルーティンがある。
それは…ダーツだ。
中学の頃、ネットサーフィンをしている時に偶然ダーツの動画を目にし、部屋の中で、1人でも十分楽しめそうだ、と感じたことが理由である。
小遣いを貯めていたものの使い道がなかった僕は家の中にダーツを投げられる環境を整え、ひたすら投げ込んだ。
「まあ今日はこんなところか。」
練習を終えて休もうとしたところで、
「お兄ー?お腹減った!今日のご飯は何ー?」
二階の自室へ、階段越しに妹の声が届く。
僕の2つ年下の妹の依音利は女性不信の僕の唯一救いと言っても過言じゃない。性格は本当に僕と正反対。明朗快活、運動も大好き。勉学は僕が教えなければ赤点スレスレと言う感じだ。やればできる子なのだから少しは頑張ればいいのに…と言うとパンチが飛んでくるので言うのはやめておこう。
「お兄が言ってた食材は買ってきておいたよー!早く作ってー!!」
「あーー…わかったわかった。今作るから待ってな。」
面倒臭そうに答えるが内心そんなことは一切思ってはいない。僕は自他共に認める重度のシスコンだ。
両親は夜遅くまで帰ってこない。父親に至っては仕事先で泊まることもある。
物心ついた時から妹と2人で分担して料理と買い物をし、2人で食事を摂ることが当たり前になっていた。
「今日お兄いつも以上に元気なさそうだけどどうかした?」
「それ朝陽にも同じこと言われたよ…まあ高校で色々あってさ…」
「??」
小首を傾げる依音利。尊い。
「入試テキトーに受けたのバレた、とかまあそんなところでしょ?」
「なぜわかった…!!!?」
「まあこれでもアンタの妹なんだし、全部お見通しよ?勉強だけは頼りにしてるからね?高校ではあんまり波風立てないようにしないと、大学の推薦ももらえなくなるよ?」
「だけ、ってなぁ…!てか依音利は僕のオカンか?まあ心配してくれるのは嬉しいけど、今のところは大丈夫なはずだよ。」
一瞬オカンと言ったことで依音利の額にピキッと青筋が走ったようなので素早く話を変える。
「それよりも厄介な人に絡まれてることの方が気がかりなんだよな…」
「お、早速ヤンキーに1発かまされそうなの?やっつけてあげよっか!シュッ…シュッ!」
そう言ってシャドーボクシングをする依音利は空手と総合格闘技を習っている、大の格闘技好きだ。
だがいきなり生徒の妹が高校に殴り込みに行くなんて前代未聞だ。その上うちの可愛い妹をあまり多くの人の目に晒したくは無い。
「流石にそこは考えて生活してるから心配ないよ。」
「お、だったら厄介なのは女の子かな??お兄はモテるからねぇ…お兄のこと実は好きだったって女の子結構知ってるよ?」
本当にこの妹は他人のテリトリーに土足で踏み込んでくるなぁ…可愛い妹だからなんでも許すけど!!!
「嘘つけ。僕なんか相手にする女子がどこにいる。」
「ここにいるじゃん!」
「それは妹だからだろ?」
「むーーー!つれないなぁ!!!」
むくれる依音利も本当に可愛い。
朝陽とゲームをしこたまやり込み、そしてこの妹との食事でなんとか気持ちをリセットできた。
なんとか明日からも頑張れそうだ。