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第3話

「クラスで噂の美少女さんがどうして僕のところに?」

「貴方、新入生総代の挨拶を断ったって本当?」


 静かに帰ろうとしているところに急に話しかけられて思わずぶっきらぼうな話し方になる。

 蓮実のような美人とあまりに不釣り合いな俺が会話をしていると言うことで、同じく帰ろうとしている周りの生徒の視線を一気に集めた。教室のざわざわとした雰囲気と視線が痛い。


「僕に訊かなくても教師に聞けばいいじゃないか。…話すことは何もない。」

「それは本当、ってことね?」

「まあ勘ぐるのは自由だし止めはしないけど…でも少なくともここでする話じゃない。教師たちは新入生総代に蓮実さんを推薦し、その責務を全うした、それでおしまいのはずだ。それじゃ。」

「待って!!!」

「悪いけど、僕もそんなに暇じゃないんだ。」


 面倒臭さを微塵も隠さず僕は教室を後にした。


「もう…なんなのよアイツ…!」


 そんな蓮実の呟きは教室の喧騒にかき消されてしまった。


――――――――――――――――――――――――


「おまちどーさん。」

「うぉっ!相変わらずうまそーなメシ作るなー!」

「味見してないから美味しいかわかんないけどなー…まあ冷める前に食べなよ。」

「やったぁー!いただきまーす!!…んー!!!うまっ!!!」


 午後は暇になってしまったため僕の家でゲームをすることに。

 朝陽とは昔から家でゲームなどをしたり遊ぶついでに僕の家にご飯を食べにきていた。


 今日のメニューは余り物野菜で作ったチャーハンとその野菜をタネにした餃子だ。


「うん…まあ及第点かな。」

「いやいや及第点っていうか満点でしょ!?めっちゃ美味いぞこれ!」

「ありがと。まあそんなに褒めてもゲームは手加減しないぞ?」

「えぇー!!!少しは勝たせてくれよ…

 そんなに勉強してるのにどうしてゲームも上手いのさ!」

「陰キャ舐めんなよー…?ずっと家にいたらゲームくらいしかやることないんだよ。」


 久しく感じていなかった「日常」感に少し安心している反面やはり心の中にどうしても引っかかるものがある。


「なんだよー浮かない顔してんじゃん!悩み事か?」

「面倒な生徒に絡まれてね…」

「それって蓮実さんの話?」

「…まあな。」


 はぁぁ…と大きなため息が出る。僕はああいった可愛い女子と関わるのが心底嫌いだ。目立って仕方がない。


「聞こえちゃったから申し訳ないけど…まあ入試に関してはげんげんなりの事情あるんだろ?俺にはわかんないけど!」

「まあ朝陽は口が固いから言っちゃうけど…

 僕が目立つようなこと率先してやらないのは知ってるだろ?……だから入試も手を抜いて少し点数を下げるように調整したんだよ。」


 そう。進学校でも本当にトップレベルの高校に行こうと思えばいけるが…そうすると僕の()()に割く時間がなくなってしまう。だからこそそれなりの進学校で校風も良いこの清学高校を選んだのだ。まあこれも理由の半分でしかない。


 それを聞いて朝陽は目を丸くする。


「マジかよ…その点数分けて欲しかったよ!俺補欠合格でギリギリだったんだぞ!」

「そこで正規合格に回ってくるのが朝陽の運の良さだよな…」

「それは言えてるな!!!」


 ガハハと朗らかに笑う朝陽を見て先行きの不安に苛まれていた俺の心が少し軽くなる。


 気兼ねなく話せる友人がいるのはいいことだ。蓮実にさえ絡まれなければ隠密生活を徹底できて安心だったのだが…彼女から話しかけられたという事実だけで目立ってしまったのは間違いないだろう。


「ま、俺もいるだけでも目立つんだし、もうこの際諦めようぜ!アオハルしようぜ!!」

「そんな屈託のない笑顔で言われたら靡きそうにもなるが…でも僕はとにかく目立たずにそれなりの高校生活を送れればそれでいいんだよ…」


 これは紛れもない本心だ。友人の誘いを断るのも正直良心の呵責が…

 だが僕自身で決めていることだし、朝陽もそこのところはわかってくれている。女性不信なのは朝陽も殆ど同じだし。


「むー!つれないなぁ!あ!餃子おかわりある?」

「へいへい。ほんとよく食べるなぁ。さすが運動部だ。」

「いつもすいませんねぇ!食べさせてもらって!」

「いやいやぁ、俺の料理の毒味役は欲しいからなぁ…妹に出してキレられたりしたらたまんないしな?」

「ひでぇ!!!」


 朝陽といるとやはり心が少し軽くなる。


――――――――――――――――――――――――


 そんなこんなでゲームをし始め、ひとしきり遊んだところで、朝陽は帰宅した。


 ここからは俺1人の時間だ。

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