第98話 神々の古代遊戯Ⅱ 白と黒
それぞれが席へとついた。
ふかふかだけど弾力あるソファーが気持ちいい♪
「では、さっそくはじめるぞっ」
商人ヴォルフガングが箱を引き寄せる。
ガタッ しゅるりっ
細かく編まれた紐を解き放ち、
ガラスのような透明な板をとりだした。
「これはなんでしょうか?」
「今回の遊戯で使用するボードだ」
テーブルの中心に透きとおる板。
白と黒。
それぞれの石をならべた。
「《異世界人》の遊戯『リバーシ』というモノを知っているか?」
『リバーシ』
ゲーム好きの《異世界人》が伝えたとされる卓上遊戯。マス目状の板。白と黒の石を使って遊ぶ陣どりゲームだ。
「あー、見張り砦でたまーにやってるなぁ」
「そうなんですか?」
「まぁ、休憩とかにな。暇つぶしにいろいろとゲームはそろっているんだ」
騎士テオドールがフフッと笑ってる。
たしかに、砦のまわりは何もないし娯楽系は大事だ。
「俺も酒場とかでそんな感じですね〜」
「まぁ、嗜みの1つとして」
冒険者ユリウスと
騎士レオンハルトがたがいにうなずきあう。
「すみません。……僕、ぜんぜんわからなくて。教えていただけると助かります」
「いや、知らなくても問題などない。――ただアレとルールが似ているとつたえたかっただけだ。ムズかしくなどないぞ?」
商人ヴォルフがフォローして説明する。
ホッと息をついてリヒトくんが安心したようだ。
折りたたまれた透明な板をひろげる。
「これは、ガラスにうっすらと数字や記号さまざまな模様が描かれていますね」
「ふふーん? このマス目みたいなものは『リバーシ』といっしょか〜」
タテと横に線がマス目状になっている。
「とりあえず皆、ゲームの参加資格はあるようだ」
「ああ〜たしか、そういうのありましたね」
「うむ。古代の遊戯はそこが気難しい」
ユリウスの問いかけにヴォルフがうなずく。
「話には聞いていたが、難儀だな」
「致し方ない。この古代の遊戯は気に入られたモノしか遊ぶことを許さぬゆえ」
レオンハルトの言葉に皮肉げに笑った。
「うーん、でも大丈夫みたいだしよかったね?」
「ああ、皆で遊べそうで安心した」
そっと息をついて安堵している。
なんだかんだと気づかうヴォルフ。
まぁ、わかりずらいんだけど。
「描かれているこの数字や記号は……なんですか?」
「それぞれが神々のようだ。力や概念をさし示すらしい」
スッ スッ スッ
商人ヴォルフが指をさしながら、説明した。
それぞれが皆、興味深そうに話をきいてる。
古代のゲームって不思議だねー。
ふむぅ、意外と奥深いんだ。
ヴォルフが好きな理由がすこしだけわかった気がする。
「……いろいろとすごいですね」
「興味があるならば、調べた資料をお渡ししよう。学者たちにまとめさせたモノがある」
「はい、ぜひおねがいします」
うれしそうなリヒトくんに、ヴォルフガングが笑った。
「あっ俺もいいですか?……遺跡や迷宮でいくつか気になるモノがあって」
「知識としてぜひとも学びたい」
ユリウスとレオンハルトの申しでにヴォルフがうなずいた。
「学ぶこころざしって、すげーよな」
「そ、そうですねー」
なんとなくテオドールさんと視線をかわしつつ、
古代人の文明? にもりあがる4人を見守った。
◇
「グループを2組にわける」
テーブルを中心にそれぞれが席についている。
大きめのソファーにわたしとリヒトくん。
もう一つには、ユリウスとテオドールさんだ。
レオンとヴォルフは一人用のソファーだ。
【白の石】
騎士レオンハルト
村娘ルーシア
聖職者リヒトくん
【黒の石】
商人ヴォルフガング
冒険者ユリウス、
騎士テオドールさん
2つのグループにわかれた。
「ああ、先に言っておくが……。
この遊戯で……私は1度もルーシアに勝ったことがない」
「「「!?」」」
商人ヴォルフガングの発言に皆がいっせいに驚いた。
えっ? そうだったっけ?
子どもの頃に遊んだゲーム?
ぜんぜんおぼえてないよー。
でも、な、なぜ今ここでその発言を……?
「なるほど、さすがだなルーシア?」
「すごいですね」
キラキラキラキラ〜♪
騎士レオンハルトと、聖職者リヒトくん
左右からキラキラしながら笑顔でほめてくれてる。
光属性っぽい2人、めっちゃ光ってる。
「いや、えっと……実力じゃないよ〜?」
うううっ
いきなり褒められてもこまりますーっ
しかも、ぜんぜんおぼえてないーっ、
子どもの頃のは、たまたまじゃないかなー?
「なるほど〜、ルーシアは無敗なんだー」
「ふーん? そりゃすげぇな」
冒険者ユリウスが感心したようにうなずいて、
騎士テオドールが焼き菓子にかじりついた。
「なので、御二方の活躍に期待している」
「ん?」
商人ヴォルフガングが不敵にニヤリと笑う。
「――――私は、負けるのは好きじゃないんだ」
「……ああ、それわかります」
冒険者ユリウスが困ったように笑った。
「まったくもってそうだな」
騎士テオドールが焼き菓子を口に放り込んで、陽気に声をあげた。
スゴゴゴゴゴゴッ
うわぁっなんだろう……?
黒組の3人組。
筋肉チームがすごーくやる気だしていませんか?
笑ってるけど、なぜかこわいよー。
んん?
よくよく考えたら黒組3人組。
『リバーシ』をふだんから遊んでる2人。
……そしてヴォルフはこのゲームを熟知してる。
こちらの白組の3人組。
『リバーシ』初心者のリヒトくん。
『神々の古代遊戯』初心者のレオンハルト。
そして、わたしはゲームをほとんどおぼえてない。
わぁっなにかそれとなく不利なのではー?
「ねぇねぇ、ヴォルフー?」
「フン……今さらもう遅いぞ」
「!?」
片目をつぶって、ニヤリと笑う。
目論みや謀事が上手くいったみたいな表情だ。
やはり……この商人、ぐうぜんではないのか?
な、なんてことなのっ
テーブルの席につく前から……。
すでに遊戯は、はじまっていた……?
勝利したい商人のヴォルフガング
負けずぎらいの冒険者ユリウス
たきつけられた騎士テオドール
黒組の筋肉トリオ。
うわぁ、まさに勝てる気がしないよー。
笑う3人を見ながらあ然とする。
ふいにキラキラとした光が舞いこんだ。
「いかがなさいましたか? ルーシアさん」
不思議そうにリヒトくんが首をかしげる。
いつのまにか天使がそばにいた。
「ふむ、もしや彼らが有利な状況……といったところか?」
レオンハルトが会話のやりとりをみて察したようだ。
「えっと……まぁ、そんな感じです」
「ふむ。ルーシアはこのゲームを遊んだコトがあるようだが。なにかアドバイスなどがあれば言ってほしい」
やさしく笑い花びらが舞う。
一人用のソファーのまわりはすでに薔薇園だ。
うーんっそれなんだけど。
ぜんぜんっおぼえてないよー。
ただ、おぼろげに楽しかったな〜♪、くらい?
そもそも勝ち負けとか考えてなかったような……?
リヒトくんが興味深そうに白い石の模様をみてる。
それだけでとっても楽しそう。
ぐるぐるかんがえすぎたけど……。
「まぁ、楽しく遊べれば大丈夫だよ〜♪」
レオンハルトとリヒトくんが驚いた。
だけど、すぐにくすくすと笑いはじめる。
「ふふっはい、ルーシアさん。わかりました」
「そうだな。楽しむことが1番だな」
キラキラしながら2人が笑ってる。
うわぁっまぶしぃっ さらに光がましてるよー。
皆で遊びたい聖職者のリヒトくん
集まりをよろこぶ絵本の王子様レオンハルト
宿がにぎわいのが嬉しい村娘ルーシア
楽しむ気持ちだけはじゅうぶんだと思う。




