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第93話 星詠の占い師③ 高級レストランにて



 いっしょにトコトコと歩く。

 商店街のその先に建物はあった。

 重厚な数階建てのレストランへとたどりついた。


「ルキナ、どうやらここのようですね」


「うわぁ〜」


 すごい建物。

 正面玄関にはビシッとした制服に身を包んだ

 体格の良いドアマンが立っている。


 お客様をお迎えする方だ。



 やっぱり高級施設ってすごーい。

 でも『竜のあくび亭』にも出迎えてくれる妖精さんたちがいるからね。

 とてもありがたいな。



「こ、こんな格好で大丈夫ですか?」


「ふふっ心配ありませんよ」



 おもわず赤いワンピースにふれた。


 あやしげな占い師と村娘の赤ずきんだ。

 たしか、ちゃんとした格好。正礼装ドレスコートとか必要じゃないのかな?



「こんにちは、占い師テトラと申します」


 テトラさんがドアマンへと近づく。

 とつぜん挨拶された門番がすこし驚いて警戒をしている。



 ローブに身を包んだ4色の髪の占い師。

 背後には赤ずきん。

 とてもびっくりすると思う。


「……すみません、中で食事をとりたいのですが」


 スッと布をまくり腕輪ブレスレットをみせた。

 いろいろと模様が刻まれたそれをみたドアマンさんがあわてて建物の方に取り次ぎした。


「これは身分証みたいなものですね。国境を渡るためにはどうしても必要でして」


「な、なるほど〜」



 シャラシャララ♪

 扉の鐘が鳴り店内へと案内された。


「わああっ♪」


 白を基調とした床に大きな観葉植物。花であふれている。

 突き抜けるように高い天井。

 絵画が描かれ神殿や貴族さま向けのようで素敵だ。


「あっ異種族の方々もいますね。それに音楽、吟遊詩人の方々も……すごーい」


 にぎわいをみせる活気あふれるレストラン。

 それぞれが笑顔で食事を楽しんでいる。


 ジャンジャカ ジャンジャカ〜♪


 陽気な民族音楽。

 専属の演奏者なのかな……。す、すごい。


 ついついくらべてみてしまう。

 

 でも、『竜のあくび亭』には音楽を奏でる魔道具もあるし、

 おねがいしたら2階から召喚される? 吟遊詩人もいるからね。



 ちょうど空いていた素敵な席へと案内された。



「おおっこれはこれは! ようこそお越しくださいました」


 支配人さんが笑顔でかけつけた。

 とってもうれしそうにしている。



「こちらがメニューとなっております」


「はい♪ありがとうございます」


 パララッ


「……っ!?」


 あれ、コレって……値段が書かれていない。

 たくさんの料理がならんでいるのに。


 ああっ本でみたことがある。

 高級なお店メニュー。

 招待した方を気遣わせないよう表記しないことがあるって。


 コレがそうなの?


 うわぁぁっ『お値段以上』じゃなかった。

 それどころか《数字すら存在していなかった》とは。


「あははっ……どれにするか迷ってしまいますね」


「ええ、そうですね」


 別の意味で迷いますよ〜。


 しあわせそうにご馳走ちそうする気の占い師。

 がんばって人助けをしながら、やってきたらしいし。

 今さら自分でお会計を〜とは言いづらい。


 ああっそうだ。

 せめて予算をおさえる方向でいこう。 

 うんうん。


「お飲みものはいかがいたしましょう」


「はい、お水をいただけますか?」


 お水なら大丈夫だよね?

 高級料理店でも無料の飲みモノを注文してもいいってきいたことがある。

 食事はふつうに注文すればいいと思うし。


 ピタッ


 あれ? どうして……?

 わたしの発言にテトラさんと支配人さんが動きが止まっているの。



「さすがです、ルキナ♪」


「えっ?」


 うれしそうにうなずくテトラさん。

 支配人さんも驚いた。


「これは、たいへんお目が高い。このレストラン期間限定のオススメ。水の神殿より特別にお譲りいただいた、オアシスの《聖なる水》でございます」


「えええっ」


 バッとメニューを確認する。

 あ、あった。わりとトップページにあった。




「……あ、あの、」


「――水の神殿。精霊に祝福されし場所。《水の精霊ウンディーネ》たちの加護を授かることができますよ。『身心健康』『必勝祈願』『成功成就』などなど。世界の中でも指折りの聖水でございます。とても美味なので、ぜひともお召し上がりくださいませ」


「「「おおおっ〜」」」


 とつぜんはじまった占い師の演説。

 まわりのお客様の方々が声をあげて驚嘆している。


 わぁぁっ

 ふつうのお水を注文しただけなのに。

 なにかすごいことになってる。



 高級料理店だけれど冒険者の気さくな方が多いのかもしれない。


「ほほう。噂にはきいていたがそんな効能が」


「では、わたしも1杯いただこう」


「迷宮深部を目指す景気づけにいくか」



 それぞれの席で呼び鈴が鳴る。

 まって、値段を書いていない商品ですよ。


「ありがとうございます――この1杯でたくさんの木が植えられ砂漠の緑化活動の援助、支援をおこなわせていただいております」


 ――さり気なく追加情報がきた。

 その値段、計り知れない。



「あわわっ」


 よくわからないけれど。

 なぜかこのお店で1番高そうなモノを注文してしまった感がある。

 ――――これは確信だ。


 あわててメニューをパラパラとめくる。

 食事で挽回ばんかいしないとだっ

 とにかく身の丈にあった1番リーズナブルなごはんをっどれかなー?



「大丈夫ですよ、ルキナ」


「えっ?」


 メニューに迷い悩むわたしに、

 テトラさんがすうっと息をのむ。


 透きとおるようなうつくしい声でささやいた。



「すべて、わたくしめにおまかせくださいませ?」


 目を閉じたままのテトラさんがうなずいている。

 ああっ迷ったら手助けをすると。

 そう約束をしたから。



「――彼女はすべて(・・・)を望んでいます。肉料理、魚料理、野菜に果物――その意味がわかりますか?」


「かしこまりました、テトラさま」


 支配人さんがうやうやしく頭をさげた。



 わぁぁっ

 なにか今トンデモナイ注文の仕方をしませんでしたか?



『どれを食べようかなー♪』


 た、たしかに解決した。

 でも、それってぜんぶもりってことでは?



「……あのぉーテトラさん?」


「ルキナ、大丈夫でございますよー? とても良いお店です。

 きっとおいしい料理を提供していただけると思います♪」


 

 とてもうれしそうに笑う占い師。


 いえ、そういう意味で声をかけたわけではなく……。

 注文の仕方に驚いただけなのですけれど。


   

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