第92話 流浪の占い師② 若草と金貨袋
「なるほど、お昼ごはんですか〜」
「はい、どれもよさそうで迷っていて……」
橋のちかくにあった木製ベンチ。
立ち話もなんですからと、いっしょにすわった。
占い師のテトラさんがうなずいている。
――『星詠みの占い師』テトラ。
暗黒竜をやっつけた勇者御一行たち。
世界を救う旅の道中、彼らを導いた。
勇者たちが大変お世話になった方らしい。
「……。」
どうやら勇者の孫娘もお世話になってます。
ごはんの相談でですけど……。
うううっはずかしい。
どこか遠くから訪れたんだよね?
わたしが迷うと星を詠んでわざわざここに……。
あああっ
なにかとてつもなく申し訳ないです。
「ふむぅ? 野菜たっぷりも良いですし、魚や肉も捨てがたい……けれども、いつもとは違った料理もいただきたい。……たしかにとても迷ってしまいますね〜」
「は、はい〜。せっかく街に来たので……」
わぁぁっなにこれ恥ずかしすぎるよー
そして申し訳なさすぎるー
ひさびさにあってこの会話とかー
「ルキナ、わたくしめにおまかせくださいませ」
「えっ?」
幼い頃から、かってに命名? して。
わたしをルキナと呼ぶテトラさんが立ちあがった。
スッと身をかがめてわたしの手をとる。
「オススメの店に案内いたしましょう?」
くるりとふり返り、4色の髪がなびいた。
◇
占い師のテトラさんと。
綺麗な街並みの石畳をいっしょにあるく。
草で編んだサンダルをペタペタしながら案内された。
あれ?
このあたりギルド街からはなれているのに……。
なんだかすごい街並みだ。
「あの、テトラさん」
「どうかしましたかルキナ?」
「このあたりって、そのぉ……」
お値段以上。
いっぱい支払わないといけないような。
高級専門店が建ち並んでいるのですが?
そんなわたしの様子をみるやいなや。
「ああ、ご心配なく。すべておまかせくださいませ」
「いえっ……でもっなんといいますか……」
けっこうお高いような感じがしますよー?
テトラさん、かなり浮世離れしているお方だ。
もしかしたらマネー的なことに、ちょっとうとい……よくわからないー? なのかもしれない。
でも、せっかく案内してもらってるし。
おじいちゃんの古くからの御友人だ。
大変お世話になったお方だし。
――いざとなればお支払いはこっちで。うんうん。
むむっと思い悩んでいると、テトラさんがペタリッと足をとめた。
ふり返りながらくすくすと笑う。
「大丈夫ですよ。これで足りますとも」
「?」
ガサゴソ ガサゴソ〜
んん? 懐から革袋をとりだしてる。
しゅるっと紐解いて、笑顔であふれる金貨をみせた。
「わぁぁ、テトラさんんんっ!?」
ガバッとおもわず抱きついた。
あわてて革袋を見えないようにササッと隠す。
いきなり金貨袋!
な、何をなさるのですかこのお方ーっ
こんな道の真ん中で金貨を見せるなんて。
あぶなすぎるよー。
「ふふふっルキナ〜♪」
とつぜん抱きつかれて喜ぶテトラさん。
ぎゅ〜っとされて、うれしそうに笑っている。
「いや、いやいや。ちがいますからね?」
にこにこ笑顔の占い師にとりあえず誤解を解こうとする。
わーい♪ 金貨大好き〜♪
という理由で、とびついたんじゃないですよ?
もちろんマネー的なモノは大好きですけど……。
しあわせそうにうなずいてる。
「これはですねぇ。悩みの解決に必要なモノです」
「……え?」
「――星詠みの中、月にてらされ風に吹かれる、いっぽんの若草を手に入れました。草から、ぶんぶん蜂、果実、商人に花、傭兵、そしてロバへとなり、最後はこの金貨袋へとなったのです」
「えええっ」
テトラさんの話にびっくりする。
いや、星詠みに草でロバが金貨袋?
いろいろとぶっ飛んでてよくわからない。
「物々交換とか、そんな感じのお話ですか?」
「ええ、そうです」
スッと革袋をしまいこんだので、自ずと身をはなした。
「――長い旅路。ここへ辿り着くまでに星を詠みながら、さまざまな場所を旅して人々へ助言を授けて参りました。――ルキナの手助けにと……わたくしめ、ひたすらにがんばったのでございます」
くるりと廻って一礼する。
「お昼ごはんのために、いろいろと大変だったのですね」
「はい、さようでございます」
物々交換で旅をしながら。
ついでとばかりに世界中の方々を救ったと。
うううっ
あまりの世界観の大きさに涙がでそう。
申し訳なさに、頭を抱えたくなるけど。
でも、とてもありがたいです。
「テトラさんありがとうございます」
「いえいえルキナ?」
テトラさんがうれしそうにほほ笑んでる。
ハッと気づくと遠くに人影がちらほら。
道の真ん中で抱きついたり雑談したり。
目立つのはよくないよ。立ち話はあとにして移動しなきゃ。
「ここはひとまず、お店へとむかいましょう」
「ええ、わかりました」
占い師といっしょにそそくさと歩きだす。
スタスタッ ペタペタッ
靴音と草で編んだサンダルの足音が重なり合った。
「と、とにかくですねテトラさん。財布を人前や道ばたでひろげるのはよくないですから、くれぐれも充分にお気をつけくださいませ」
とりあえず、話を本題にもどしつつ
あせりながら祈るようにおねがいした。
予言の占い師は空を見上げる。
「……ふむぅ。わかりました」
すこし首をかしげて不思議そうな顔をしているテトラさん。
うなずいているけど、あまりわかってなさそう。




