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第85話 魔法使いの弟子⑤ 古時計の秒針

改稿しました。

内容はおおきく変わっていません。

よろしくおねがいします。



 夕食後まったりとした時間を過ごす。



 バシャバシャバシャッ


 ふんふん♪ とキッチンで洗いものを片付け中。

 食器を自動で洗ってくれる魔道具に設置した。



『ふぁ〜。んじゃ、お先に失礼するわ。おやすみぃー』



 連勤&残業続きだったテオドールさん。

 早めに就寝したいと大アクビしながら部屋へともどった。



「んで、こうなるわけ」


「なるほど、なっとくです」


 テーブルではイグニスとリヒトくんが、何やら雑談でムズかしそうな話をしていた。



 時折、笑って手振りしたり指で宙に何かを絵描いている。


 なにか魔法とかの話してるのかな?

 とっても楽しそうでいいねー。


「今日はとても楽しい時間をありがとうございました」


 リヒトくんが、ペコリと会釈しながらイグニスにお礼を言っている。


「うん、俺も楽しかったなぁ〜♪ 今度もなにか土産持って来るから。また一緒に話そうぜ」


 イグニスが、笑顔をむけて笑った。

 リヒトくんがうれしそうにほほ笑んでうなずく。


「はい、ではまた。それではお先に失礼しますね。イグニスさんルーシアさん、おやすみなさい」


「おやすみー」


「リヒトくんおやすみなさい〜」



 キッチンからでて、手をふって見送る。

 食堂に2人。そのままテーブルに座っている、イグニスの前にかけよった。



「ルー姉ぇ、おわった?」


「うんうん〜。おそくまでつきあってくれて、ありがとうね」



 4人で夕食と雑談会。

 お土産もおいしかったし、とても楽しかったな〜♪



「ん、面白かったし大丈夫」



 コッチ コッチ コッチ……。


 2人で妙な間が流れる。

 時計の音がおおきくきこえた。



「ねぇ? イグニス?」


「ん、なに?」


「だいぶおそい時間だけど……城下街の宿屋とかってもどらなくて大丈夫なの? もしかしてそのまま帰っちゃうの?」



 コチコチコチコチ……。



「はぁ?」


「え?」


「ここに泊まるに決まってんだろー?」



 すっごい呆れた顔をしてる。



「え? いあ、そうだったっけ……?」


「お前さぁ……すごくヒドくない?」



 苦々しいモノを噛んだように眉間にしわをよせ顔をしかめる。


 あっそれ、オズお兄さまに似てるね。



「いや、あの、そうじゃなくてっ……!」


「今まで、この宿屋に来て……他んとこ? 泊まったことなんてないんだけどなぁー? あっソレともなんですかぁ? ルーシアおねぇサマ? この姉弟子さまは、寒空の下っオレを追い出して、野宿させるおつもりだったんですねぇ〜……さみしいなー! かなしいなー! んな対応……っぱ、つれぇーわぁ」



 がばっ


 顔に手をあて、大げさにオーイオイオイと嘆き泣く動作をする。


 ゆらめく炎の精霊たちも弱火になりかなしそう。


 昼過ぎに見たやつだ……!!



「いや、いやいや………あのね? ごめん、イグニス……全室満室で、……知ってるかと思って、それで宿ここには泊まらないかとかってに勘違いして……ホントごめん」


 申し訳なくてぺこぺこする。



 ピタリっ


 イグニス泣く動作がとまった。



 おっ?



 ゆっくりと闇から這いだしてきたかのような表情を浮かべながら、顔を上げる。



 うげげっ!?



「ったく……全室満員御礼なんてふつうに知ってるし、わかってるーつぅの!……別に今までみたいに? ルー姉ぇの部屋で、泊まるに決まってんじゃーん?」


「えええっ」


 わ、わたしの部屋でとまるーっ!?


「ちょっと前まで一緒に眠りたい〜♪ とかせがんでたくせに、変な遠慮なんかするなよー?」


「いっ」


 言った、たしかに言った。

 最後に会った時まで言ってたね。


 でも、それって前回から数年前の話でーっ?



 わたしは一気にまくし立てられかたまった。


 豆鉄砲をくらいそのまま動かなくなった鳩。

 すでに立ったまま白目をむいている鳩だ。

 白目をむいたまま微動にしない。


 だが、なんとか喰らった豆の威力から、見事生還復活し、気をとりなおしてとりつくろうと口を開く。



「……あのねっ」


「ちょぉーっと前までは、コッチがいくらイヤがっても、一緒に寝ないとねて勝手にオレのベッドまでもぐり込んだくせによー」


「うわぁっ……!」


 もう一撃喰らった。


 コッチ、コッチ、コッチ……。


 時計の音が鳴り響く。

 のけぞったままのわたしがふるえる。

 はずかしくてだ。


 突然の来訪とはいえ……。


 部屋のコトを確認しなかった《配慮の無さ》


《一緒に眠る》つもりの弟弟子。

 幼い頃の黒歴史とも呼べる《悪行? の数々》


 全部がぜんぶはずかしいぃぃ。


 がばっ



「あああー! んもう、わかったぁー」


「ふぅーん?」


「と、とりあえず、いますぐユリウスの部屋開けるから。今日はそこで休んでね?」



『こんなこともあろうかとっ!』


《臨時のお客様》が来た場合、『竜のあくび亭』3号室。

 冒険者ユリウスの宿泊部屋を使っても良いと了承を得ている。


 私物をまったく置いていない為、宿泊しても全然大丈夫だ。


 ユリウスもイグニスも……。たがいに直接的な面識はない。

 けれど、おたがいに認識はしている仲だし。



「んー、遠慮しとく」


「えええっ」


 うーん……ユリウスの部屋じゃダメ?

 なら、もうのこるは……。


「とにかくルー姉ぇの部屋に泊まるからなー♪」


「えええっ」


 イグニスが楽しそうにニヤリと笑った。


  

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