第84話 魔法使いの弟子+ 手土産のドーナツ
「そろそろアレ食べよーぜ?」
「うんうん〜♪」
――――食堂には。
聖職者リヒトくんと騎士テオドールさん。
来客の魔術師イグニス、そしてわたしの4人。
やった♪ やった焼き菓子だ♪
わいわい雑談しながらの夕食後。
イグニスからのお土産ドーナツをおだしすることになった。
ふっふっふー♪
このための早めの夕食、そして量もかなりひかえたもんね。
まさに計画通りとはこのことだよ!
ガサゴソッ どさっ
「うわぁぁ!」
ぱあああああぁぁっ
紙袋からドーナツをだすと光かがいていた。
「「「!?」」」
ふんわりとやわらかそうなドーナツだ。
金色の光を放ってる。
こ、これって……!
先日、自称騎士レオンハルトが持参した
『3つのケーキ』みたいにものすごくキラキラしてる。
最近は、光らすのが流行りなの?
騎士テオドールさんがおもわず声をあげた。
「おい、なにかコレ光ってないか……?」
「まぁーレアリティの高い料理だから。よくあることだなーっなにかしら光る、輝くコレ基本だね」
「……。」
ケタケタとうれしそうに笑うイグニス。
聖職者リヒトくんが驚きながら焼き菓子をみてる。
「ルー姉ぇ《食材研究友の会》のエルフって知ってる?」
「え? う、うん」
「これ頼んで作ってもらったんだー♪」
《食材研究友の会》のエルフさん。
たしか『竜のあくび亭』に食材を届けてくれるドウゾさんの取引相手。何度も美味しい食材を紹介してもらって卸してもらってお世話なっている方々だ。
その方たちが作った焼き菓子なのー?
「ドーナツの材料に、トウフがはいってんの。これヘルシーだゾ〜?」
「トウフ……?」
たしか遠くにある東方の地。豆を使った料理。
《異世界人》も大好きだという噂のトウフを?
ガタッ
イグニスが立ちあがった。
「……まず、『大地の妖精ノーム』の祝福の元、厳選した大豆を《ドワーフ製の石臼挽き》で『オーガ』たちが丹念にすり潰すだろー? んで、豆腐に使用する塩水は選ばれし精霊の集う海底で人魚『マーメイド』に歌ってもらい、魚人族の『マーマン』が採取。んで、《トウフ》を作るんだよオッケー?」
「えっあっ? うん、オッケー?」
……いや、ぜんぜんオッケーじゃないけど。
とりあえずうなずいた。
説明がこまかすぎて意味がよくわからない〜。
うーん?
まず、トウフの製造工程から……。
何かがオカシイ気がするんだけど……。
それって。
本気の重ねがけで、全力を出しすぎではないでしょうか?
バッ イグニスが両手をひろげてかかげた。
「《エルフ印の野菜配合の小麦粉》に、各種材料と豆腐を練り込んで、揚げずにドーナツの型に流し込む。んで、じっくりと焼き上げ、《極上ナッツ》を散らしたら完成だ。もちろんドーナツの型も『伝説の職人ドワーフ製!』 しかも《オリハルコン》だ! 火力には“火竜のドラゴンブレス! ” どうだ? すごいだろぉぉー!?」
ぱぱぱぱーん☆
ひゅ〜ドバババーン☆
火花を打ち鳴らして食堂の中が花火大会。
やりたい放題だ。
「あははっうんうん、すごーい」
よくわからないけど。
とりあえずなんかすごそうなのはわかった。
キラキラした瞳で、
楽しそうに一気にまくしたてながら説明をするイグニス。
あ、これ魔法について話す時の感じだ。
すごーくうれしそう。
つられていっしょに笑顔になる楽しいなー。
それにしても『伝説の職人ドワーフさん』かぁ。
すごいモノを作ったんだ。
でも《オリハルコン》って。よくわからないけど……。
ドーナツの型とかに気軽に使ってイイ素材じゃない気がするような……イイのかな?
花火をみて驚いたテオドールさんが呆れた目になった。
イグニスのことがわかってきたみたいだ。
「んんん、とにかく凄え手土産つーのは理解したぜ。……あとエルフってやつはよー? ……ホントやべぇ奴らなんだな」
「……すごいです。素敵です」
キラキラキラキラ〜♪
リヒトくんがとても感動して、キラキラかがやいている。
すぐさま手を組み、神に祈りを捧げた。
「まぁ、食べてみなってすげぇから」
イグニスが笑ってウィンクした。
「うん、わかったー」
「ほーい、んじゃ遠慮なくいただくとするわ」
「イグニスさん、ありがとうございます」
それぞれが魔術師イグニスにペコリとした。
わたしは期待値があがりまくったドーナツをみる。
とてもおいしそう〜っ
ではでは、さっそくたべてみよーっと♪
「「「いただきまーす♪」」」
あーん、もぐもぐっ
きらきらひかるドーナツにかぶりつく。
ふわりとドーナツがくちの中にひろがった。
「……っ!?」
やわらかい食感とほのかな甘さ。
自然とゆっくりとしたもぐもぐをうながす。
トウフの濃厚さで生地にしっかりとした弾力とはごたえをあたえてる。
パキッパキリ
表面にのったナッツが、遊び的かみごたえで楽しい♪
――ここはドーナツがまわり踊る花畑……。
「ん、これはおいしいです」
「うんめぇぇー! もぐもぐっこりゃすげぇなっ」
「はふぅ、おいしいねぇ……」
もぐもぐもぐもぐ〜♪
ほこほこ笑顔になり、ドーナツを味わうだけの生き物と化す。
淹れた茶ともすごくあってる〜♪
お菓子の作成に携わった異種族の職人さんの方々様。
大変ありがとうございました。
しあわせ、わたしのもとへ無事届きました。
「こいつ、いつもこーだよな?」
「ふふふっそうですね」
イグニスとリヒトくんがほほ笑みあってる。
テオドールさんもうなずいて、ばくばくドーナツ食べながら果実水を流しこんでる。とても大好評のようだ。
ぷにぷにっむにょにょ〜
イグニスが横で笑って
もぐもぐしているわたしのほっぺたを、
むにむにとつついたりのばして遊んでる。
「どうだ!? ルー姉ぇ、うまいか?」
「うん〜♪ イグニス、いいこいいこ♪」
ほうっと目をほそめながら光をみつめるように、
トウフドーナツをもくもくと食べる。
これは良いモノだ。いくらでもはいるモノだー。
頰づえをつきながらむにむにしてるイグニス。
「おまえがいろいろと気にしてるってきいたからさぁ?」
「ん?」
「ヘルシーなドーナツ頼んだんだー♪」
ピクリッ
わたしのうごきがとまった。
……えっ? 今、なにを……言って?
「こんなに食うくせに、一応気にしてたんだなっあははっ」
「……えっとぉ、誰から何をきいたの……かな?」
ギギギと引きつりながら顔をむけた。
「オズ兄ぃが言ってたぞ〜? 土産を気づかってやれってさっ」
「……っ!?」
えっ? 魔術師のオズワルドさんに?
いつどこで!? ……気にしてるのバレた?
「うー」
おもわずお腹のあたりさっとおさえる。
「ドラゴンステーキとかに喜んでかぶりつくやつが、今さらかよ〜?」
「そ、それとコレとはちがうのーっ」
ハハッ! と大笑いした。
「わるかったって、すねるなよ〜?」
がばっ
イグニスがすぐさま隣の席につく。
にやにや笑いながらあやまった。
あのー、笑われてとてもはずかしいのですが……?
あいかわらずイタズラそうにして、まったく反省していなさそう。ムムっときて顔をそむけたわたしにイグニスがうれしそうにドーナツをさしだす。
「ほら、ルー姉ぇあーん?」
「……っ」
お、お菓子できげんとるつもりなのかな?
なにかおかしくないですか……?
「ルーシアお姉サマのためにがんばってつくったんだよ〜?」
こてり。
甘えるような仕草で首をかしげる。
困ったように、でも笑いながらイグニスがさしだしてる。
うううっ……た、たしかに。
わたしのために用意してくれたお菓子みたいだし……。
つくるのがたいへんだったんだよね。
「……。」
ええいっもうっ
ばくっ
かぶりついてドーナツをたべた。
「もぐもぐ〜、んんっ!?」
はわぁ〜……とってもおいしいなぁー♪
すぐに花畑。花がさいて満開だ。
「あははっルーシアさん」
「んー、こりゃ完全に食い気だな」
うれしそうにリヒトくんがほほ笑んで、
テオドールさんが呆れつつも笑ってる。
「くくくっホント変わらねぇな♪」
楽しそうに笑いながら、
イグニスがドーナツの半分をぺろりと食べた。




