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第78話 温泉へはいろう

【注意】入浴の描写があります。

よみとばしても本編にまったく影響はありません。

コメディです。

よろしくおねがいします。



 カポーン


 温泉に風呂桶の音がひびいた。


 たくさんの湯気と光の中。

 聖職者リヒト、騎士テオドール、

 冒険者ユリウス、商人ヴォルフ、4人が湯につかる。



 ぱしゃりっ


「ふぁぁ〜気持ちいいですね」


「ンだぁな〜、遊んだあとのひとっ風呂最高だぜ」


 ユリウスが体をほぐしながら背伸びした。

 頭にのせた手ぬぐいにふれながらテオドールが笑う。


 ザバザバザバッ


「ふむ。これが『竜のあくび亭』の露天風呂、温泉か……なかなかおもしろい」


 ヴォルフが掛け流しの湧きでるお湯をみながらつぶやく。


「……。」


 リヒトが無言で湯につかっていた。


「どーした、リヒト? のぼせたのか」


「……いえ、大丈夫です……」


 目線をそらしつつちょっとうつむいてる。

 ちらちらと、うかがうように皆をみた。


「んー、リヒトくん?」


「あのっ皆さんよく鍛えられているようで……」


「もしかしてお前、筋肉が気になるのか?」


「…………は、はい」



「ふふーんどうよこれ? わりと訓練してるからなぁ〜♪」


 騎士テオドールがググッと力こぶをつくる。



「はははっ職業柄どうしても、だねー」


 冒険者ユリウスが首に手をあててあははと笑う。



「ふん……たたかえばおのずと、だな」


 商人ヴォルフが腕を組んでフッと笑った。



「はぁ……すごいですね……」


 聖職者リヒトが3人をみてあっけどられた。



 ◇




「そーいや、筋肉といえば……」


「うん?」


「最近、魔術師ギルドが『いきなり筋肉強化月間』をはじめてよー」


「えええっ?」


「なんだそれは」


 騎士テオドールの言葉に皆が驚く。



「いや、まぁよくわからんが『力こそパワー』をスローガンに訓練してるな。各ギルドで話題とさわぎになってる」


「うーん、なんだかすごい話ですね」



「それで騎士団うちのとこが対抗意識もやしてなーまったくわけがわからんっ」


「……ああっそれは大変そう〜」


 魔術師ギルドに張りあおうとする王立騎士団。

 すでにややこしい感じだ。



「それにしても、さすがは後見人オズワルド殿だな。……魔術師たちの力を底上げしてくるとは」


 商人ヴォルフか関心したように不敵に笑う。


「……この上ない向上心。魔法だけではということなんでしょうね」


 やや伏し目がちに聖職者リヒトが呟く。


「ですねー、俺もまけてられないな〜」


 流し目で笑いながら冒険者ユリウスが腕をまわした。


 あははっと皆で笑った。



「……僕もちょっとだけ……鍛えようかな?」


 ぱしゃりっと音をたてリヒトが腕をさすった。



「おっ?」


「リヒトもいっちょ基礎だけでもやってみるか?」


「ああ〜いいですねぇ」


「えっと?」


 テオドールの声掛けにリヒトが驚きながら戸惑う。


「まずは興味あるなら軽めの筋トレ。朝とか寝る前とかにちょっとだけとかね? まったくかんたんだよ?」


「だな〜、体力もつくし」


「うんうん大丈夫♪ それに聖職者でも……実質、物理職みたいな方々もいるからね〜?」


 聖職者の中には、星球式杖モーニングスターというちょっととげとげした聖なる杖をふりかざし正義を遂行する方々もいる。



「教えてやろう。筋肉は裏切らない」


「はいっ皆さんありがとうございます」


 

 リヒトがうれしそうに笑った。



 ◇



 ぽかぽか温泉でのんびりとあたたまる。



「ではでは、そろそろあがりますか〜」


 ざばっ


「はい。じゅうぶんあたたまりましたね」


「ふぃ〜おつかれさ〜んとね♪」


「うむ。最高であったな」


 ざばさばっざば〜っ



 温泉からあがり、ザバッとかけ流し。

 それぞれが脱衣所へとむかう。



「ん? なんだありゃ」



 腰にタオルを巻いたテオドールが声あげた。


 ドドーンッ



「「「!?」」」



 4つの牛乳瓶。



 キラキラキラキラキラ〜♪


 脱衣所のテーブルのうえにおかれていた。

 色とりどりのミルクにびっくりする。



「ん? これはメモ書き?」


「リヒトくん、なにそれ」


 ぱらりっ


「えっと、あっこれドウゾさんからの進呈品みたいです」


「な、なんだってー!?」


「……ん〜、ドウゾさんか……」


「あの狸ジジイからの贈り物だとっ」


 テオドールが喜んで叫び、ユリウスが半眼になり、ヴォルフが驚愕した。


 いきなり《商人ドウゾ》からの進呈品。



「どうやらルーシアさんが準備したものみたいですね」



 おそらく今回のゲーム集会のために用意サプライズされたアイテムだ。



「あー、そういえばジイさんが湯あがりの一杯は格別とか言っていたような……」


《湯あがりの一杯》

 銭湯や温泉で入浴等で大事な水分補給。元気になる。



「とくに施設内でのドリンクは重要だと」


「《異世界人》の作法というわけか」


 それぞれがおかれた牛乳瓶をみる。



「どれにします?」


「んじゃあ、俺はこのフルーツ牛乳を選ぶぜ♪」


「僕はいちご豆乳をいただきます」


「んー、ふつうの牛乳もらうね」


「このコーヒー牛乳というやつだな」


 それぞれが瓶ごとキンキンに冷えた牛乳を手にした。



「すげぇーひんやりしてるな」


「つめたくて気持ちいいですね〜」


「あっちなみに首からタオルかけて、腰にこう……手をあててですね……やや上を見ながら飲むのが――基本の作法スタイルみたいですよ?」


 ユリウスがお手本でのむふりをする。

 3人がまじめな顔になる。


「へぇ〜! そんなんあるんだな?」


「ふむぅ。《異世界》は奥深い……」


「ですね……天を仰ぐのもなにか意味があるのかもしれません」




 キュポッ


 手っ取り早く蓋をあけた。

 それぞれがならんで牛乳瓶にわくわくする。



 「「「いっただきまーす♪」」」


 ごきゅごきゅごきゅ〜っ



「ぷはぁぁ〜くぅぅっフルーツうめぇなぁ!」


「ん、……いちご豆乳おいしいです」


「うん、うんうん。これはいいね」


「コーヒー牛乳……か。わるくない味だな」



 キラキラキラキラ〜♪


 それぞれがキラキラしてうなずいた。

 今度、注文しておこうかなと全員がおもった。



 バタンッ どさどさっどさっ


「えっ?」


 4人がいっせいに音のした入り口をみる。

 まっかになりながら、妖精のような少女が

 目を見ひらいてぷるぷるしてる。


「えっとルーシアさん……?」


「あれ? もしかして作業室にいた?」


 ユリウスが腰タオルのままかけよって落ちたモノを拾い上げる。

 ぱんぱんとはらった。


「ちょうど温泉からあがったとこだよ? 牛乳もありがとう。冷えててとっても美味しかった♪……ん?」


「……。」


 かたまってるルーシアの顔をユリウスがのぞきこむ。



「ルーシア、大丈夫?」


「……まっかになったまま動かねーな」


「ほほう、まるで茹でタコの妖精のようだ」



 村娘の前で大丈夫かと手をふったり、

 笑いながら観察したり、ジッとみたりしてる。



「えっと……みなさん?」


 聖職者リヒトが見かねて3人に声をかけた。



「あーっそういやたしか、筋肉好きだったよな?」


「「「!?」」」


 突然のテオドールの叫びに皆が驚いた。



「しょうがないな? 特別サービスだぜっ?」


 むきゃきゃっ ドドーンッ 


 テオドールが筋肉を見せつけるポーズをとった。



「……なに? そうなのか!? ふんっ……ならば遠慮はいらぬとくと見るがいい」


 すざっ ババーンッ


 ヴォルフが後ろをむいて筋肉をもりあがらせた。



「……えっと流れ的に俺も? だよね?」


 がしっ ズガガーンッ


 ユリウスがはりきって横を向きつつポーズをとった。


「……。」


「……。」


「……。」


 ――――立ちはだかる3つの美男子の彫像。




 スッと少女の目から光がきえた。 


「……。」


 ペコリッ


 スタスタスタスタッ バタンッ



「……あれ、ルーシア?」


 ユリウスがあ然として見送る。


「ふむ。どうやら満足し立ち去ったようだ」


 うなずいたヴォルフ。


「いえ、どちらかというと《無かった》ことにした目では……」


 とまどいながらリヒトがつぶやく。


「はははっおもしれぇな〜♪」


 テオドールは妖精のジトっとした目に満足し笑った。



 ◇



 浴衣の寝間着にそれぞれが着替えた。

 温泉に満足した彼らは、食堂でさっそく集い雑談に花を咲かせる。



「わぁぁっ! ち、近づかないでくださいっ」


 茹でタコの妖精が叫んだ。



「ルーシアごめんね? びっくりさせちゃった」


「なんならもう1回やるかー?」


「遠慮はいらぬぞっ」



「うわぁぁぁああああっ」



「あのっ……みなさん?」


 逃げまどう妖精をつかまえて皆でとりかこむ。

 ちゃんとゆるすまでごめんなさいもした。




 わいわいっ わいわいっ


 夜空に星がきらめく。


 『竜のあくび亭』ひとつ屋根の下、笑い声がともった。





 読んでいただきありがとうございました。



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