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第74話 とある少年の話②



 俺は晴天の空をあおいだ。


「はぁ……。」


 やはり《いつもの状況》になってしまった……。


 待ち合わせまでは順調で。


 『ルーシア』のところへ《むかおう》と、

 2人で歩き出したとたん、こんなだ。


 ……いや、エレナにとっては、

 やはり幸運な出来事イベントが起こっただけにすぎない。


「……。」


 目を閉じて、辿り着けない日々を思いかえす。


 ああ、いろんなことがあったなぁ〜。

 あれやこれやホントにたいへんだった。



 今日は序盤スタートからエレナの《強制離脱きょうせいりだつイベント》

 戦況は圧倒的不利な状況で思わしくない。

 

 ―――さて……どうするか?

 


「開始早々ってかなりヤバい。もう帰りたい」


 まだむかってないのに足がすくみそうになる。


 せっかくの休日だ。

 今日はあきめてさっさと家に帰って、布団をかぶって惰眠を貪り、焼き菓子をかじりながら茶を飲んで、物語でも読みふけりたい気分だ。


 ぎゅううっ


 思わず胸に抱えた一つにまとめられた本の束を抱きしめた。


 ……ん?


 今まで不幸つづきだったけど……?


 そうだ今日は本束コレがある。


「……。」


 チラリと胸の中にある本を見た。


 そういえば……たしかにエレナにかんしては、ルーシアに会いに行こうとすると幸運な目にあっている。

 結局は出会えてないけれど……。


 不運よけアイテムとして……これ使えるんじゃないか?


「……っ」


 スッ ぱぁぁぁっ


 挫けそうになる気持ちに一筋の光が指す。


 それに……本好きなルーシアには絶対に届けたいしな。


 『竜のあくび亭』にいて、なかなか城下街にも来れないから。

 この新刊の束はきっと大喜びするはずだ。


「……。」


 ―――あたまのなかに、

 光かがやいて……まるで天使のような……。

 可憐なルーシアの笑顔。


 ドラゴンのステーキにうれしそうにかぶりつき笑う。

 エレナのやれやれ顔もすかさずうかんで、クスッと笑いがこぼれた。



 すうう〜 はぁぁ〜



 俺はおおきく深呼吸して、気合をいれた。



「よしっ! ルーシア待ってろよ」



 今日こそは何としてでもルーシアに会いに行く。


 俺は決意し街道を歩きだした。



 ◇



 とりあえず馬車へ乗ろうとむかった。


 ガヤガヤガヤ……。


 待合送り馬車停留所で、人々が集まりなにやら騒いでいる。



 んん?



 いつもは少人数しかいないのにどうしたんだろう?


 俺はさっそく不安な気持ちになった。



「あのー、すみません」


「お、馬車利用かい? ちょっと乗るには時間かかるかもねぇ〜」


 えええっ?


 待合室の雑務をしていた受付の男が答える。


「…………何かあったんですか?」


「ん〜馬車の街道で、《最後ラスト巨大迷宮ワールドダンジョン》から来たモンスターが出たみたいでなぁ……」


「……っ!?」


「それで森の動物たちが逃げだしてパニックになってー? さらに驚いた馬が逃げて荷馬車の丸太が全部落ちて転がったみたいでよぉ!?」


「……。」



 ヤバい! さっそくヤバい!

 しかも今回は最初からクライマックス感あふれる


 最終章ラストステージ状態だっ!!



「な、なるほど」



 ……ぐうぜんかもしれないけど……。

 いきなり全部盛りのいきおいできた事態にかなり引いた。



「祭で使う木だったみたいで、かなり大きいみたいよ〜? 大丈夫かしらね?」


 横にいる布を頭に巻いたご婦人が、会話に参加してきた。


「モンスターはあれだろ? 冒険者ギルドと魔術師ギルドが討伐にむかってるって話だよ。騎士団と職業ギルドで撤去作業で出動してるからすぐ片付くと思うんだけどね〜」


 仕事道具を片手にした痩せた男が言った。



「商人ギルドも加勢してるみたいだし、大丈夫じゃないか?」


「いや〜この状況だと流石になぁ……」


「……ほぼ全ギルド無条件参加だろう? どうなることかねぇ」


「あーこりゃ今日は仕事にならんなー」



 いつの間にか俺を中心として、色々な人が雑談している。


 あれ? 身動きがとりにくいな。



「あんたはどこに行く予定だったんだい?」


「えっと、村に友人に会いに……」



 皆さま方がびみょーな顔になる。



「わりぃことは言わん、やめときなって」


「いや、でも今日はぜったいに会いにって」


 行くって、決めたんだ。

 そう、さっき決意したばかりで……。


「友人だろう? こんな状況だよ〜。各ギルドも出動しているし、騒ぎが落ち着けばいつだって会えるだろう?」


 俺は息をのんだ。



『今日のところは家に帰ったらどうだい?』



「……。」


 かたまったまま返事をしない俺に、

 まわりはいつの間にか別々のグループになって雑談をつづけた。


「まぁ、どうしても行くってんならここで待ちなよ。運が良けりゃ昼過ぎ……まぁ夕方までには、街道の封鎖も解除されるだろう?」


 痩せた男が去り際に声をかけた。


「まぁ、歩いていくにも距離があるしな、じゃあな坊主?」



 俺はギュっと胸の中の本を抱きしめた。


 

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