第72話 城下街とごはん sideルーシア
※ルーシア視点になります。
よろしくおねがいします。
―――レンガの建物が立ち並ぶ道を通り抜けて、
糸を専門に取扱う手芸店はすこし奥まった目立たない場所にあった。
「ここみたいだな」
「アイザックさん、ありがとうございます」
「いや、いいっていいって」
ぺこりとおじぎしてお礼をした。
お店探してて迷っているところをわざわざ案内してもらって、とてもたすかった〜。ありがたやありがたや〜。
こんなむずかしい場所、1人ではムリだったかも〜。
……前回の件といい冒険者のアイザックさん。
とてもお世話になってる。
ちょっとこわそうな人だけどとても親切で良い方だなぁ。
「俺もちょっと店入るわ。ここはじめてだし」
「はい〜、じゃあいっしょに」
トントントンッ
じゃらんっ♪ 鐘が音をたてた。
「うわぁっ」
キラキラキラキラキラ〜♪
お店の中はたくさんの手芸の品であふれてる。
糸に布に型紙、リボンにボタン、裁縫道具にハサミや小道具。
完成している手芸品などなど、色とりどりのアイテムすごーい。
「おや? いらっしゃい。なにかお探しかい?」
店の店主がでてきて声をかけた。
「こんにちは〜。はいちょっと欲しい糸があって……」
「うんうん、これなんかどうかね?」
「わぁぁっ〜素敵です〜♪」
花からとれるモノやクモの糸。
特別な植物で染めあげた布もすすめてくれた。
わいわい話しているとアイザックさんが声をかけた。
「店主さん、これ棚にあるやつ全部つくったの?」
「いやぁ委託販売とかいろいろだよ〜」
「へぇ〜、すごいなぁ」
わくわくして商品をみてる。
刺繍がこまかい小物入れや財布、手袋がいろいろならんでる。
「……糸も大事だし……ああ、こっちは護符の模様」
店主さんがわたしとアイザックさんにわかりやすく説明してくれた。
3人でわいわい話しながら雑貨の話に花がさいた。
じゃらんっ♪
お店からまいどあり〜♪して2人で建物をでた。
「いやぁ〜いろいろゲットしたーっ」
「はいっ、いっぱいかっちゃいました……!」
ほくほくして2人で笑顔になる。
あれもコレもよかったなぁ〜。
1個1個、うれしそうに説明してくれて
どの商品もきらきらしてたし……また訪れたいお店だ。
おたがいに買物袋をみてふきだした。
「いい店みつけた〜さんきゅーな?」
「いえいえ〜こちらこそです」
わたしは糸とか材料だけどアイザックさんは商品をいっぱい購入した。
弟にあげるやつ〜♪ こっちは仲間にあげるやつ〜♪
っとうれしそうに選んでた。
ほとんどが弟さんにあげるモノだったけど。
とても仲がいいのかな〜?
「あっそうだ。アイザックさん」
「ん? シアちゃんどした?」
「まだ時間ありますか? もし良かったらこの前のお礼をかねて食事を一緒にどうでしょうか?」
前にギルドで迷ったり今回の件もふくめてお礼がしたい。
「ほー、おさそいか」
「はいっもちろんお代はおまかせください」
回復薬を無事納品できたので、ふところがちょーっとはあたたかいのだ。
どんとまかせてください。
全力でお礼をする気のわたしをみてアイザックさんが笑った。
「くくくっわかった。んじゃあなんか食べにいこか」
「はーい♪」
◇
2人で話しながらささっと移動した。
「ここにしよーぜ?」
かわいいカフェ屋さんにたどりついた。
どうやらアイザックさんはちょっとおなかがすいているらしく、
ごはんも食べれるお店を選んだ。
ティリン♪ 扉をあけて鐘がなった。
ちょうどおやつの前くらい時間だったので、お店がすいていた。
「いらっしゃいませ〜♪」
案内されてまわりをみる。
すごいあかるい店内。南国っぽい花がいっぱいあってなんだかとてもたのしい。
メニューは南国のスイーツ、果物ジュースとワンプレートの料理ものがならんでた。
「わぁっ〜♪」
なにこれっ
どれもおいしそうだよ〜っ
おやつだけ軽めに注文するつもりだったのに。
「はははっどれにするんだー?」
「うん、とてもまよっちゃいますね」
「俺はこのロコモコ丼だなー」
アイザックさんがすすっと料理を指でトンっとした。
なるほど〜。ごはんにハンバーグをのっけた丼もの。
なにか不思議なおもしろいなまえの料理だなぁ。
「しってるか? これどっかの異世界人が大好物だった料理らしい」
「!」
「くわしくはないが、よくたべてたらしいぜ〜?」
えええっ
このごはんにハンバーグをのっけた料理を異世界人が?
異世界の料理たべたい。
「わたしもこれでおねがいします」
迷いなく注文した。
◇
「おまたせしました〜♪」
アイザックさんと話していると料理が運ばれた。
「わぁっおいしそう」
「うん、うまそうだなっ」
ハンバーグに目玉焼きサラダとプチトマト。ソースがかかっててごはんのうえにそれぞれがのってる。
サイドメニューでシェアできるチキンやくだものもいっしょにならんでる。
あとトロピカルジュースもおもしろい。
さて、異世界人のつたえたロコモコ丼たべてみよー。
「いただきまーす♪」
ごはんに感謝の言葉と祈りと捧げさっそくロコモコ丼をたべた。
「あーん、もぐもぐ」
!?
あああっおいしい〜♪
ハンバーグの肉汁とソースがくちにひろがって目玉焼きと相性ばつぐんだし、サラダもパリパリでおいしいなー♪
んぐんぐ、トロピカルジュースもいい〜。
ああ、ここは南国の花畑……。
「あははっ、シアちゃんそんなにうまいのか?」
「ワタシハ……イマ異世界人……」
「はーはははははっおもしれーっ」
気分はそう異世界人。
でも、異世界人じゃなくたってこれはとてもおいしいよ〜。
花畑のなかでごはんをたべてしあわせだ。
アイザックさんと笑いながらいっしょにたべた。
◇
「ごちそーさん♪」
「はい、おいしかったですー♪」
とってもおいしいかったから2人で笑顔でほこほこになる。
「あのっアイザックさんありがとうございました」
「いえいえ〜どーいたしまして」
笑いまくったアイザックさん。
花畑にいるあいだにすかさず食事代を支払われた。
『いやぁ〜、すっげぇおもしろかったし。あの手芸店もいいとこおしえてもらったしー。土産いっぱい手に入れたし、そのお礼だな』
笑いながらうれしそうにいっきに語った。
でも、こちらのお礼を逆にお礼されるなんて……。
なんだかふにおちないなぁ。
そのかわり次、何かおごってーで話がついた。
「……?」
ん?
でも、なにかおかしいような……?
っと考えているとアイザックさんが声をあげた。
「おっ、おおお!?」
「!?」
「ちょうどあそこにうまそうなスイーツの屋台はっけーんっ」
「えっ」
どこどこどこどこー?
きょろきょろと探しまわる。あっあれかな?
「めっちゃたべたいなぁー……シアちゃ〜ん、おごって?」
「!」
アイザックさんが笑ってる。
そうだっお礼っ。今度はわたしがごちそうするって約束。
スイーツ屋さんをみてうなずいた。
「はいっわかりました。すぐにむかいましょう〜!
なにがいいですか? それと好きなだけたのんでいいですからねっ」
おねがいのポーズをとっていたアイザックさん。
ちょっとびっくりしたあと、買物袋をかかえながらほほ笑んだ。
「あははっ」
とてもうれしそう。
いっしょに街をあるきだした。
読んでいただきありがとうございました。