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第70話 焼き菓子倶楽部 sideソフィア

道具屋の女将ソフィアさんのお話。

短めですが。

よろしくおねがいします。



 ―――ある日の昼下がり。

 とある屋敷にさまざまなご婦人方が集う。



「じゃあ、さっそくはじめましょうか?」



 『焼き菓子倶楽部がしくらぶ

 薬草やハーブをつかってお菓子つくる集まりだ。

 毎月1回開催されている。



 さいきんは市販の焼き菓子がとても完成度が高く自作する必要もなくなってきたが―――。


 素朴な材料をつかい調理する。そのゆっくりとした時間を楽しむ目的で行われている定例会。そのあつまりの倶楽部くらぶだ。




 いくつかのおおきなテーブル。

 数人にわかれてクッキングをはじめた。



「ルーシアちゃんそこの材料おねがいね」


「はい、ソフィアさん」



 ささっと手を洗い材料をとりわけてるルーシアちゃん。


 てきぱき ざざっ かちゃかちゃ



 あらあら、ずいぶんと手ぎわが良いわね。

 やっぱりはじめた宿屋のおかげかしら〜。



「さいきんはどう〜?」


「おかげさまで……はい、なんとかやってます」


「ふふふっ」

 


 ルーシアちゃんのこたえにおもわずうれしくなってしまうわ。

 勇者であるジゼルさんが旅立っていろいろとてもたいへんだったものね。



「……。」



 まいこんだ縁談も養子の話もすべてはねのけて宿屋をはじめたのはみんなおどろいたけど……。

 さすがは勇者の孫娘といったところかしらね?


 ホントに勇者ジゼルさんによくにてるわ。



 あら? ルーシアちゃんがなにやら真剣に生地の型どりをしてるようね。こんなにいっしょうけんめいどうしたのかしら?



「なぁに? 誰かにおくりもの?」


「えっと、あっそうです」



 ほっぺたをあかくしてとまどっているわね。



「あらあら〜だれに〜? お友だちかしら?」


「はいっ」



 どうやら特別なケーキをいただいて、お礼には手作りの焼き菓子をと希望されたみたい。



「あらあらあら〜♪」


「なかなかやるじゃないの、そのご友人の方?」


「いいわねーっ」


「ははは、はい〜っ」



 みんなあつまってルーシアちゃんのお話に耳をかたむけてるわ。


 まっかになってこまっているけどそんな反応がうれしいのよね〜。ういういしいわ〜。



「じゃあ、気合いれてつくらないとね」


「ルーシアちゃーん? こっちの型もどう? つかってみて〜」


「特別なケーキってもしかして相手は貴族? もちろんそうよね。あっこれは装飾こうがいいわね。試してみて」


 アドバイスをうけながらルーシアちゃんがうなずいてる。



「でも薬草の焼き菓子なんて大丈夫かしら?」


「何言ってるんだい。このていどでひくやつはこっちからねがいさげだねっ」


「わぁ、メーテオさんカゲキだわ〜」



 今回の薬草をもってきたコメットさんが声をあげてるわ。

 でも、みんなうなずいてる。だってそうだものね。



「皆さま方。あ、ありがとうございます」


 ルーシアちゃんがおずおずとお礼をしてるわ。


 それぞれがやさしい目で見守ってる。


 みんなルーシアちゃんが大好きだし、なんなら娘に引き取りたいってねがいでた方々だもの。もちろん私もそう。


 

「さあっ焼き上げましょうね」



 予熱でじゅうぶんにあたためた魔法具のオーブンに型どった生地をいれる。


 紅茶を嗜みながら、かわるがわる火をみてはとりだしてまた投入していく。



 香ばしい焼き菓子の甘いにおいが部屋をみたした。



「わぁぁっ♪」



 ふふふっ、ルーシアちゃんがおもわず声をあげてるわ。


 ひさしぶりにこの部屋にきこえた村娘のうれしそうな声。

 みなさんもとても楽しそうにほほ笑んでる。



 あら、どうやらとってもじょうずにできたみたいね。


 よかった。


 

 


 読んでいただきありがとうございました。





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