第65話 妖精と魔法使いの少年
2章side話。
読み飛ばしても本編に影響はありません。
よろしくおねがいします。
………どうして忘れていたんだろう。
「……。」
オズワルドは逆さまにつられたまま思った。
『いいかい? オズ、よくおきき。妖精には善や悪などないよ、あるのは純粋な心だけ。そのうえいたずらが大好きで気まぐれな存在だ。……じゅうぶん気をつけるんだよ』
大魔女様がささくように言った言葉。
ずっとまえに師匠があたまをなでながら、
魔法使いみならいの僕によくいいきかせてくれた。
――はじめて訪れた『竜のあくび亭』
ふわふわと光る精霊たちにみちびかれた。
さそわれるままに庭へとたどりつく。
すごい。おおきな木のしたで、精霊がいっぱい……こんなにもたくさんいる。
妖精がうたって踊っているの? なんだろうこれは。
大樹をおうちにして精霊や妖精がいっぱいいるんだ。
ぼくはよろこんだ。
ああ、なんて色こくマナが存在しているんだろう。あの庭先の岩も妖精?
ううん、あれはもしかして本で読んだゴーレムかも?
おだやかな日ざしの中、妖精たちのわらい声とおどる精霊たち。とても楽しい。笑うことはとくいじゃないけど……しぜんと笑みがあふれた。
楽しくすごすうちに、ふいにべつの事がうかんだ。
こんなすごいところ……。
魔法を使ってみたらどうなるんだろう?
いつもより、とってもつよい魔法とかとなえたりできるのかな……?
「……あれ……?」
なんだろう? 考えごとをしていたら、
まわりにいた妖精や精霊がいなくなってる……。
みんなどこにいっちゃったの?
「……どうし……て?」
しゅるしゅるしゅる……。
「……っ!?」
ツタがのびてきて僕の足首にまきついてる。
えっ? なにこれっ
次の瞬間、僕はさけんだ。
「うわああああぁぁっ」
ずるずるずるずるずるずる〜。
植物のツタが足にからんでひきずりまわされる。
どぼーん 泉につきおとされた。
ずるずるずるずるずるずる〜。
ガシガシッ ガシガシッ
「……っ……!……!?」
たくさんのびる植物やなにかにつかまれた。
泣きながら泥をたくさんたべさせられた。
「……。」
泣きさけぶ気力のなくなった頃、用事をおえた師匠がもどってきた。
大樹に逆さまに吊られた僕を見てため息をつく。
「おやおや、ずいぶんと遊ばれたねぇ」
「……し、しょぉ……」
ぼろぼろの僕をみて師匠がこまった顔で笑った。
「だから言ったろう? 気をつけなって……ずいぶんとボロボロだが、何とか……命は大丈夫だったみたいだね」
「かはっ……!」
体中にふれて、胸に手をあてられる。
泥を吐きだしながら師匠に手当された。
「……ごめ…んなざ…い……」
「いいんだよ。オズ……これが妖精なのさ」
つい魔がさして、魔法のことに気をとられた。
……妖精たちは僕がよくない態度、ふきげんになったとかんちがいしたらしい。
――――なら遊ぼうか?
泣き叫ぶ僕と遊んで妖精たちはとても大満足の様だった。
◇
妖精たちが庭で楽しそうにあそんでる。
「……っ」
からだがふるえた。
あれ以来、ぼくの体はすっかり妖精が苦手になってしまった。
みたりちかずくだけで足がすくんでふるえてしまう。
「おまえは、こりないねぇ」
遠くから妖精たちの遊ぶ姿を見てる。
……ヒドい目にあったけど、僕は妖精が大好きだ。




